【戦評】グレインキーがリーグトップタイの7勝目
2017.6.2 18:10 Friday

ドジャース時代の2015年に32先発で19勝3敗、防御率1.66という歴史的なシーズンを過ごし、6年2億650万ドルという大型契約でダイヤモンドバックスへ迎え入れられたメジャー屈指の右腕、ザック・グレインキー。大型契約1年目の昨季は3年ぶりに故障者リスト入りして規定投球回にすら届かず、26先発で13勝7敗、防御率4.37と期待を大きく裏切ったものの、今季は以前の安定した投球を取り戻し、大型契約に相応しいピッチングを続けている。
勝てば約1ヶ月ぶりの首位浮上となる敵地マーリンズ・パークでのマーリンズ4連戦の初戦。ダイヤモンドバックスはグレインキーを今季12度目となる先発のマウンドへ送り込んだ。対するマーリンズは左肩腱炎で開幕から故障者リスト入りしていた新戦力ジェフ・ロックが今季初先発。両投手の好投により、終盤まで試合の行方がわからない好ゲームとなった。
先手を取ったのはマーリンズ。3回裏、一死から8番J.T.リドルがライトへのツーベースを放ってチャンスを作ると、二死後に1番ディー・ゴードンが四球を選んで一、二塁。ここで打席には5月23日から2番打者として起用され、復調のきっかけを掴んでいるジャンカルロ・スタントン。グレインキーが真ん中低めに投じた初球のツーシームをライト前に弾き返し、クリス・オーウィングスの後逸も重なって一塁から俊足ゴードンが長駆ホームイン。マーリンズが2点を先制した。
一方のダイヤモンドバックスは5回までロックにほぼ完璧に封じ込まれ、安打は4回表にニック・アーメッドが放った三塁打の1本だけ。しかし、6回表一死から2013年シルバースラッガー受賞者のグレインキーがヒットで出塁すると、二死後にアーメッドがこの日2本目のヒットを放って二死一、二塁のチャンスを作る。ここでマーリンズは好投を続けていたロックに代えてデービッド・フェルプスをマウンドへ送ったが、主砲ポール・ゴールドシュミットがフルカウントからの6球目をライト前に弾き返し、1-2と1点差に詰め寄った。
グレインキーは4回以降、完全に立ち直り、最終的に7回を投げて打たれたヒットは僅か4本。「今日は大部分が良かった。失点したイニングにも良いボールはたくさんあった。スタントンには失投してしまったけど、あれ以降は良くなったと思うよ」と本人が語るように、8奪三振2四球2失点(自責点1)の安定した投球で先発の役割をしっかりと果たした。エースの力投に応えたい打線は8回表、先頭の代打クリス・ハーマンが四球で出塁すると、続くダニエル・デズカルソの打席で今季初盗塁を決め、無死二塁のチャンスを作る。デズカルソも四球で続き、マーリンズは慌てて投手をカイル・ベアクロウからブラッド・ジーグラーへとスイッチしたものの、レイ・フエンテスがしっかり送りバントを決めてチャンス拡大。そして、ここまで2安打のアーメッドがジーグラーのシンカーをライト方向へ弾き返し、この日3本目のヒットはグレインキーに勝利投手の権利をもたらす逆転2点タイムリーとなった。
ダイヤモンドバックスはその後、8回裏をアンドリュー・チェイフィンとアーチー・ブラッドリー、9回裏を守護神フェルナンド・ロドニーが無失点に抑えて試合終了。緊迫した1点差ゲームを見事に制し、グレインキーの古巣ドジャースを抜いて、ロッキーズと同率で約1ヶ月ぶりの地区首位へと浮上した。グレインキーは元同僚クレイトン・カーショウ(ドジャース)、同地区ライバルの新人アントニオ・センザテラ(ロッキーズ)と並んでリーグトップタイの7勝目(3敗)。平均球速の低下が騒がれているものの、フォーシームの被打率は.208と昨季から劇的に改善されている。また、K/BB5.75はキャリアハイの2015年(5.00)を上回る数字をマークしており、球界きっての好投手が健在であることを自身のピッチングでしっかり証明。失意の2016年を経て、地区優勝争いを繰り広げるチームを牽引するグレインキーのピッチングに今後も注目したい。
