開幕から10週間 本塁打量産が止まらない
2017.6.12 15:32 Monday
メジャーリーグは日本時間6月12日の全試合を終え、開幕から10週間を消化した。ここまでの延べ1878試合で飛び出した本塁打は2319本。1シーズン(=4860試合)換算で、なんと6001本塁打ペースとなっている。メジャー最多記録が5693本塁打(2000年)なのだから、この数字がいかに異常であるかということはすぐに理解していただけるはずだ。投手のレベルが上がり、平均球速の上昇、変化球の高速化など打者にとって不利な条件が揃う中、本塁打だけが増えているという異常な状況。いったいメジャーリーグでは何が起こっているのだろう。
様々なメディアで盛んに取り上げられているのが「フライボール・レボリューション」という言葉。要するに、意識的にフライを打つ選手が増えているというのである。ジョシュ・ドナルドソン(ブルージェイズ)、J.D.マルティネス(タイガース)、ダニエル・マーフィー(ナショナルズ)、ジャスティン・ターナー(ドジャース)。これらの選手はフライを打つことを意識したことによって成績を向上させた選手の代表例として知られている。フライを打つこと。これが現在のメジャーリーグのトレンドとなっていることは間違いなさそうだ。
今季急激に成績を向上させているヨンダー・アロンゾ(アスレチックス)。彼は春季キャンプ中に打撃フォームの調整に取り組み、フライを打つことを強く意識するようになったことを明言している。昨季はメジャー平均を下回っていた平均打球角度が、今季は2倍近くになり、メジャー平均を大きく上回っているというデータもある。大切なのはやはりフライを打つこと。いくら強いゴロを打っても、ゴロではフェンスは越えられないのである。
ジョーイ・ボットー(レッズ)は以前、「ゴロはダメだ。フライは良い。ライナーもOKだ」と語ったことがある。これを裏付けるデータもあり、昨季の打球タイプ別の成績は以下のようになっている。
ゴロ 打率.246 0本塁打 OPS.512 BABIP.246
フライ 打率.174 3741本塁打 OPS.708 BABIP.074
ライナー 打率.659 1869本塁打 OPS1.701 BABIP.631
ヒットの大半はライナー性の打球、本塁打の大半はフライ性の打球であることが上記のデータから読み取れる。ゴロでない打球(フライとライナー)を「エアーボール」と表現する専門家もいるが、今季絶好調のアレックス・アビラ(タイガース)は昨季と比較して「エアーボール」の割合が急激に上昇していることがわかっている。しかし、「エアーボール」の割合が増えた打者がみな成績を向上させているかというと決してそうではない。フライのBABIP.074という数字からもわかるように、フィールド内に飛んだフライはめったにヒットにならない。当たり前のことだが、フライを打つのであればフェンスを越えるように適切な角度で強い打球を打つことが必要なのだ。今季復活を遂げたライアン・ジマーマン(ナショナルズ)について昨季の平均打球速度などから成績向上を予想する専門家もいたように、大切なのはただ単に「エアーボール」の割合を増やすことではない。「強いエアーボール」の割合を増やすことこそが最も大切なのである。
MLB.comのアナリストであるマイク・ペトリエロ氏は「強いエアーボール」の割合と打者の成績向上の間に正の相関があること、「弱いエアーボール」の割合と打者の成績向上の間に負の相関があることを証明している。「強いエアーボール」を打つことを心掛ける打者が増えたこと。ひょっとすると、これこそが本塁打が急増している理由の答えなのかもしれない。
