クオリファイング・オファーの仕組みを確認しよう
2017.11.6 12:50 Monday
昨オフに合意された新労使協定により複雑化したクオリファイング・オファー制度。すでにレイズがアレックス・カッブにクオリファイング・オファー(QO)を提示する方針を固めたとの報道もあり、いよいよ動きが本格化しつつある。ここでは制度を簡単に確認してみる。
球団がQOを提示したFA選手が他球団へ流出した場合のみ、球団はドラフトでの補償指名権を手に入れることができる。QOの年俸は年俸上位125選手の平均額と定められており、昨オフは1720万ドル、今オフは1740万ドルとなっている。球団は1年1740万ドルの契約をFA選手に提示し、FA選手側はQOを受け入れるか否かを判断。QOを拒否した選手が他球団と契約すると元所属球団に補償指名権が与えられるという仕組みだ。
ただし、すべてのFA選手にQOを提示できるわけではなく、過去にQOを提示された経験のある選手に対してQOを提示することはできない。また、シーズン全体を1つの球団のみで過ごした選手が対象となり、ダルビッシュ有やJ.D.マルティネスのようにシーズン途中で移籍した選手はQOの対象とはならない。QOを受け入れた選手は年俸1740万ドルの1年契約で残留することになるため、球団側は慎重な判断を迫られる。
そして、FA選手が流出した側の球団に与えられる補償指名権に関する制度が新労使協定により複雑化した。従来は1巡目の直後に補償指名権が与えられていたが、これが大幅に変更されたのだ。収益分配金を受け取っている球団はFA選手が総額5000万ドル以上の契約で他球団へ流出した場合、1巡目と戦力均衡ラウンドAの間に補償指名権を得ることができる。総額5000万ドル未満の場合は戦力均衡ラウンドBのあとに補償指名権を得ることになる。なお、収益分配金を受け取っている球団はオリオールズ、レイズ、インディアンス、ロイヤルズ、ツインズ、アストロズ、アスレチックス、マリナーズ、ブレーブス、マーリンズ、レッズ、ブリュワーズ、パイレーツ、ダイヤモンドバックス、ロッキーズ、パドレスの16球団である。
それ以外の14球団についてはぜいたく税の上限を超過しているかどうかが判断基準となり、流出した選手の契約規模は影響しない。ぜいたく税の上限を超過していない場合は戦力均衡ラウンドBのあと、超過している場合は4巡目のあとに補償指名権が与えられる。
また、QOを拒否したFA選手を獲得したチームはドラフトでの指名権を失うことになる。新労使協定により該当チームが持つ最上位の1巡目指名権はペナルティの対象外となった(以前は全体10位までのみが対象外)。ぜいたく税の上限を超過しているチームは2番目と5番目に高い順位の指名権を失い、インターナショナル・ボーナス・プールを100万ドル減額される。収益分配金を受け取っている球団は3番目に高い順位の指名権を失う。それ以外のチームは2番目に高い順位の指名権を失い、インターナショナル・ボーナス・プールを50万ドル減額される。
以上のように複雑化したクオリファイング・オファー制度。この制度変更がFA市場にどのような影響を与えるのか。新労使協定のもとで初めてとなるオフシーズンの動向を見守りたい。