本塁打全盛の時代に埋もれてしまった男・マグリフ
2018.1.23 11:30 Tuesday
殿堂入り投票の結果発表が2日後に迫るなか、今回も殿堂入りを逃すことになりそうな名打者がいる。通算493本塁打を放ったフレッド・マグリフだ。輝かしい実績を誇りながら、殿堂入り投票では得票率25%を超えたことがない。いったいなぜなのか。その理由を探ってみる。
マグリフはブルージェイズ、パドレス、ブレーブス、デビルレイズ(現レイズ)、カブス、ドジャースの6球団で計19年にわたってプレイし、通算2490安打、493本塁打、1550打点、打率.284、OPS.886を記録。本塁打王2度、シルバースラッガー賞3度、オールスター・ゲーム選出5度、1994年オールスター・ゲームMVPなどの実績を誇り、ブレーブス時代の1995年にはワールドシリーズ制覇も経験している名選手である。しかし、殿堂入り投票ではなかなか得票率が伸びない。これには「本塁打全盛の時代にプレイし、存在感が薄れてしまったこと」が影響していると考えられている。
マグリフの通算493本塁打はあのルー・ゲーリッグと同じ本数だ。ひと昔前までは「通算500本塁打」は殿堂入りへの切符と言われており、それに近い数字を残したマグリフは高く評価されてしかるべきだが、メジャーリーグではステロイドの流行などにより1990年代後半から本塁打数が急増。「通算500本塁打」は珍しい記録ではなくなってしまったのだ。40本塁打以上のシーズンが一度もなく、コツコツと数字を積み重ねてきたマグリフは、おのずと存在感が薄れてしまったのである。
また、マグリフは1998年から1994年まで7年連続で30本塁打以上を記録。これはハンク・アーロン、ジミー・フォックス、ゲーリッグ、ラルフ・カイナー、ミッキー・マントル、エディ・マシューズ、ベーブ・ルース、マイク・シュミットに次いで史上9人目となる快挙だった。しかし、1995年以降すでに13人が同記録を達成。マグリフの快挙はあっという間に価値が薄れてしまった。
さらに、同じ年にメジャーデビューを果たしたバリー・ボンズ、マーク・マグワイア、ラファエル・パルメイロの存在も話をややこしくしている。いわゆる「ステロイダー」として知られるこの3人は30歳を過ぎてから345本以上の本塁打を積み上げた。一方のマグリフは231本塁打にとどまり、通算でも500本の大台を超えられず。「ステロイダー」たちの印象的な活躍がマグリフの存在感を薄めてしまったという側面もあるのだ。
9度目のチャレンジとなる今回も得票率は伸びておらず、ラストイヤーとなる次回での殿堂入りも難しいと見られるマグリフ。「ステロイダー」の陰でコツコツと数字を積み上げてきた名打者が報われる日が来ることを祈るばかりである。