【連載コラム】MLB全30球場を制覇 第9話 最古の球団が最先端の街づくり
2023.1.30 18:05 Monday
澄み渡る青空。美しい芝。白球が奏でる音に、歓声が重なり合う。最高峰のプレーに心躍り、熱く盛り上がる場所。今年アメリカ中を飛び回り、MLB全30球場を制覇したスポーツアナウンサー福田太郎が、あなたを「夢のボールパーク」にお連れします。MLBスタジアムの世界へ、ようこそ。
ボールパーク新時代の幕開け
2021年のワールドチャンピオン、アトランタ・ブレーブス。本拠地の「トゥルイスト・パーク」は、2017年にできたばかりの、MLBで二番目に新しいボールパークです。アメリカのプロスポーツ・マーケティングのトレンド「その競技を愛する人はもちろん、興味がない人さえも楽しめる空間作り」を見事に成功させました。象徴とも言えるのが、球団がプロデュースして作った街「ザ・バッテリー・アトランタ」です。野球場を中心に、唯一無二のスポーツ&エンターテインメント体験ができます。
トゥルイスト・パークへ
スタジアムは、ジョージア州アトランタの中心部から北西に約16キロと、郊外に位置しています。車での移動が一般的で、空港からは30分、ダウンタウンからは20分くらいでアクセスできます。
都会のビル群から、木々の豊かな緑へと景色が移ろい、野球場が見えてきました! 駐車場に車を停めて歩いてみると、もうそこはボールパークのなか。レストラン、映画館、ライブハウスが軒を連ね、街ゆくだけで、気分が高まってきます。広々とした芝生でキャッチボールをしたり、寝そべって寛いだりしながら、試合までのひとときを楽しむファンと出会ったら… Truist Park! Nice to meet you!
誰もが楽しめる空間
街の名は「ザ・バッテリー・アトランタ」。野球へのリスペクトを込めて、ピッチャーとキャッチャーのことを表す「バッテリー」から取りました。スタジアムが6万5000平方メートルで、街全体だと24万3000平方メートルもの広さを誇ります。いつでも誰でも楽しめる、5つのポイントが…
「EXPLORE」=洋服や雑貨、ギフト、スポーツ用品店といったショップや、ダイニング、バー、ブルワリーなどの飲食店、映画館やライブハウス、コミュニティスペースなどの探訪を楽しめます。
「EVENTS」=野球の試合はもちろん、OBによるサイン会やトークショー、音楽ライブ、ヨガ教室など、毎日イベントが開かれています。
「LIVE」=アパートなどのレジデンスも多く、この街に住むことを楽しんでいる人もいます。
「WORK」=オフィスビルが建ち並び、職場にもなっています。
「STAY」=敷地内にはいくつもホテルがあり、数日にわたって滞在する場所としても人気です。街には病院や銀行、ジムにヘアサロンなど、暮らしに欠かせない施設も集まっていて、誰しもが安心して過ごせる空間です。試合のチケットを持っていない人もやってきて、パブリック・ビューイングで楽しむのですから驚きです。
Ballparkの楽しみ方
お子さんの思い出になる工夫が凝らされています。まずは、MLBスタジアム最大級のキッズエリア「サンドロット」が魅力的です。ピッチング、バッティング、ベースランニングといった野球にまつわるものに加え、ターザンロープ、クライミング、反射神経チェック、水鉄砲など、体を動かして楽しめる遊具がたくさんあります。
さらに、試合前には、フィールド上に子供だけが入れるエリアが設けられます。練習を終えた選手たちが立ち寄って、サインに応じたり、一緒に写真を撮ったり。大喜びする子供たちの笑顔を見ると、一生の思い出になるんだろうなあ、とほっこりします。
ちなみに、アトランタには、コカ・コーラの本社(世界中のフレーバーが試飲できる!)やオリンピック記念公園、NFLファルコンズ(世界最先端のハイテクスタジアム)もあるので、「ザ・バッテリー・アトランタ」を拠点にしながら、ダウンタウンで楽しむのもおすすめです。
MLB最古の球団の1つ
ナショナル・リーグが創設された1871年に「ボストン・レッドストッキングス」として誕生。1912年から「ブレーブス」の名で愛されてきた、MLBで最も古い球団の1つです。バックネットの裏にある「モニュメント・ガーデン」では、野球殿堂入りした選手たちの功績を讃えています。
歴代2位の通算本塁打数を誇るハンク・アーロンさんが放った本塁打数に合わせ、755本のバットで作ったモニュメントは圧巻です。ほかにも、チャンピオンズ・トロフィーやチャンピオンズ・リングなど、歴史ある強豪チームならではの展示物も目を引きます。試合のターニングポイントでは球場が暗転。伝統の「トマホーク・チョップ」で思い切り斧を振りかざしましょう!
伝説のナックルボーラーを讃えたスタジアムフード「ビッグ・ナックシー」は、食べ応え抜群。コーンブレッドの上に、南アメリカ名物のプルドポークが、これでもか! というほど載っています。
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福田太郎(ふくだ・たろう)/ 1991年生まれ。HTB北海道テレビ放送アナウンサー。プロ野球の実況中継や、朝の情報番組MCを担当した後、2022年2月から11月まで休職。MLB全30球団・ボールパークを訪ね、世界最高峰のスポーツエンターテイメントを学び、12月に復職。写真:福田太郎
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