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【連載】World Baseball Classic あの瞬間をもう一度①

2023.1.30 18:23 Monday

 今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック。第5回となる本大会では、20の国と地域のスター選手が「ベースボールの世界王者」をかけた熱戦を繰り広げる。本シリーズでは2006年の初大会から撮り続けているカメラマン田口有史氏が捉えた、母国を歓喜で打ち震わした歴史的な瞬間を紹介する。写真を振り返りながら、感動で泣け叫んだ瞬間、悔しさでうなりを上げた瞬間を思い出そう。

 今年3月に5回目を迎えるワールド・ベースボール・クラシック。その第1回大会は17年前の2006年に行われた。MLB選手も参加するベースボールの本当の世界一決定戦、という掛け声のもと始まった。

 今回、アメリカ代表が初めてドリームチームを結成したかのように言われるが、実は第1回大会もデレック・ジーター、ケン・グリフィーJr.、ロジャー・クレメンスなど、錚々たるメンバーが揃っていた。しかしながら、果たして真の実力がトーナメント形式の大会で決定できるのかなど、今にして思えば様々な部分において手探りの様子で始まった感じは否めなかった。

 実際のところ、当時マリナーズ所属のイチロー選手は参加したものの、ヤンキースに所属していた松井秀喜選手は参加を見送り。一次ラウンドが行われた東京ドームもチケットの売れ行きという面では出足が遅かった。

 そんな状況のなかで始まった第1回ワールド・ベースボール・クラシックだったが、日本は一次リーグ、二次リーグでアメリカや韓国に敗れるなど、苦しい展開を強いられながらも、イチロー選手の勝利への執念とリーダーシップに導かれて準決勝で韓国にリベンジ。キューバとの決勝戦の頃には日本中の注目を集めるようになった。

 この写真は決勝戦の9回表。5対6と1点差に詰め寄られたあと、タイムリーヒットで川﨑宗則を生還させたのち、福留孝介のレフト前ヒットで生還するイチロー選手。二塁から一気にかけてきて、キャッチャーのタッチをかいくぐり、珍しくヘッドスライデンングをする姿に、イチロー選手の優勝にかける熱い気持ちと野球の確かな技術を見て、感動しながら撮影したのを思い出す。

 見事に優勝を果たした日本代表。この頃は、撮影まわりの仕切りが混乱していたが、喜ぶイチロー選手にトロフィーを抱えながら目線をもらって撮影することができた。

 日本の戦いぶりと優勝による熱狂がワールド・ベースボール・クラシックを成功へと導き、国別対抗の世界一決定戦として、第2回大会以降へと続いていくことになった。

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田口 有史(たぐち ゆきひと)/日系アメリカ人の親戚がいたこともあり、幼少の頃よりMLBに興味を持ち、中学生の頃からよりのめり込む。アスリートになれなかったため写真を始め、MLBを撮りたくてアメリカ留学。そのままフリーランスとして活動をし、30年近くMLBを撮影。全30球団を毎年必ず撮影することを自身に課し、1年の半分近くをアメリカで過ごす。オフィシャル・フォトグラファーとして予備予選なども撮影しているので、おそらく世界で最もWorld Baseball Classicの試合を撮影している。(写真:田口有史)

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