パドレスは明日“負けるが勝ち” アライズら主力欠場が合理的か?
2024.9.29 16:18 Sunday
日本時間9月29日、ナ・リーグのワイルドカード残り2枠を巡って、ブレーブス、メッツ、ダイヤモンドバックスによる三つ巴の争いが繰り広げられている。ここで鍵を握る要素のひとつが、メッツとブレーブスは他の28球団が162試合を消化し終えた翌日、10月1日にダブルヘッダーが組まれているという点だ。1ゲーム差に3チームがひしめく混戦の最中、各チームのプレーオフ進出条件は複雑なものになっている。既にワイルドカード1位を決め、大谷翔平(ドジャース)と首位打者を争うルイス・アライズを擁するパドレスは、明日の最終戦で負けた方が有利な状況を作れるかもしれない。
事の発端は9月26-27日のメッツ対ブレーブスの直接対決がハリケーンによって中止になったことだ。シーズン最終盤、しかもプレーオフ争いの真っ只中にいる2球団の対戦は、レギュラーシーズンとプレーオフの中日にあたる10月1日のダブルヘッダーへとリスケジュールされた。レギュラーシーズンが終わった翌日にワイルドカード枠をかけて同地区ライバルがダブルヘッダーを行う、というシナリオはエキサイティングだったが、ダブルヘッダー実現の可能性がここにきて低くなってきている。メッツとブレーブスのライバルであるダイヤモンドバックスが急失速しているためだ。
ダイヤモンドバックスは直近6試合で5敗の失速に喘ぎ、ワイルドカード4位に転落。その影響もあってブレーブスとメッツは、ダブルヘッダーを前にした明日の結果でプレーオフ進出を決められるかもしれない位置に来ている。もし、明日でプレーオフ進出チームが決まり、ダブルヘッダーで決まるのが単なるシード順に限る場合、ダブルヘッダーはコミッショナーによってキャンセルされる可能性がある。
仮にダブルヘッダーがキャンセルされれば、不公平な立場に立たされるのは、ワイルドカードシリーズから登場する中地区覇者のブリュワーズとワイルドカード1位のパドレスだ。この2球団は162試合を消化してプレーオフに臨むにもかかわらず、シーズンで160試合しか消化しておらず、直近1週間で4試合を消化しただけで休養十分のメッツとブレーブスと対戦する羽目になる。
『ジ・アスレチック』のケン・ローゼンタールはこの状況を懸念している。そもそも26日に予定されていたメッツ対ブレーブス戦は、4月11日に延期された一戦の補填だった。同メディアはその延期のリスケジュールのプロセスについても「利己的」と批判している。また、ローゼンタールによれば、匿名を条件に取材を受けたブリュワーズの球団関係者は「公平ではない。最後の試合を棄権し、162試合目に(ブリュワーズは)投手を使わないようにすべきだ」とこの状況について率直に語っているという。
この状況下では、明日ダイヤモンドバックスとの対戦を控えるパドレスは“負けるが勝ち”となるかもしれない。なぜなら、明日少なくともダイヤモンドバックスが勝ちさえすれば、メッツとブレーブスのダブルヘッダーは確実に開催されるからだ(あるいはダイヤモンドバックスが負けても、メッツも負ければダブルヘッダーは開催される)。
ただ、不公平感が募るのは、パドレスやブリュワーズだけではないだろう。渦中のダイヤモンドバックスは、ダブルヘッダーにプレーオフ進出が委ねられる場合、メッツあるいはどちらかの球団がダブルヘッダーで連敗することが条件となる。しかし、どちらかのチームが1試合目にプレーオフ進出を決めた場合、2試合目は翌日から始まるワイルドカードシリーズの負担を考えても、控え選手中心の起用になるに違いない。仕方ないとはいえ、そうなればダイヤモンドバックスにとって不運な結末は避けられないだろう。
また、メッツとブレーブスへの負担も甚大だ。ダブルヘッダーを決行しなければいけない場合、メッツとブレーブスは最大7日間で8試合を消化しなければならない。特にメッツは、明日ミルウォーキーでのシーズン160試合目が終わってすぐにアトランタへ移動、そこでダブルヘッダーを戦い、再びミルウォーキーへトンボ返り、あるいは西端サンディエゴまで移動する可能性すらある。
結局のところ、ダブルヘッダーが回避され、ブリュワーズとパドレスが痛み分けというのが、最も球界全体にとっては丸く収まるシナリオかもしれない。ただ、ワイルドカードを争う3球団はもっと勝ってさえいれば、不利を被ることもなかったにもかかわらず、ブリュワーズとパドレスは紛れもない実力でアドバンテージを手にしている。この2球団のアドバンテージが弱まるのはかわいそうだという見方もある。
パドレスは大谷翔平と首位打者を争うルイス・アライズを含む、多くの主力を今日の試合では休ませた(結果的に5対0で勝利)。大谷の逆転三冠王への期待から注目を集めたアライズの欠場だが、明日の試合への出場を監督が明言した。しかし、パドレスとしてはアライズらを休ませる(そして願わくばダイヤモンドバックスに勝利してもらう)のが、ある意味で“合理的な”選択かもしれない。