ドジャース対ヤンキースのワールドシリーズ展望 打線が鍵に
2024.10.25 20:50 Friday
日本時間10月26日からワールドシリーズが開幕。ナ・リーグの第1シード・ドジャースとア・リーグの第1シード・ヤンキースという東西の名門が激突する。ドジャースとヤンキースのプレーオフにおける対戦は史上最多の12度目。数々の歴史に残るスターによって彩られてきた過去の対戦と同様に、今回も大谷翔平(ドジャース)やアーロン・ジャッジ(ヤンキース)といったスーパースターが揃い踏みする。世界一に輝くのは東の帝国・ヤンキースか、西の帝国・ドジャースか。両チームのここまでの戦いぶりを踏まえて、注目のシリーズを展望していく。
◆先発予定・予想(ヤンキース対ドジャース)
第1戦 ゲリット・コール 対 ジャック・フラハティ
第2戦 カルロス・ロドン 対 山本由伸
移動日
第3戦 クラーク・シュミット 対 ウォーカー・ビューラー
第4戦 ルイス・ヒル 対 ブルペンデー
第5戦 コール 対 フラハティ
移動日
第6戦 ロドン 対 山本
第7戦 シュミット 対 ビューラー or ブルペンデー
◆ドジャースシーズン/プレーオフ成績(順位は30球団中)
OPS.781(1位) / .785
先発防御率4.23(19位) / 6.08
救援防御率3.53(4位) / 3.16
◆ヤンキースシーズン成績(順位は30球団中)
OPS.761(3位) / .759
先発防御率3.85(11位) / 3.89
救援防御率3.62(6位) / 2.56
第1シードとしてプレーオフを迎えたドジャースとヤンキースは、共に強力打線とブルペンの力で勝ち上がってきた。
ドジャースはメッツとのリーグ優勝決定シリーズで、MLBナンバーワンの打線が爆発。大谷、ムーキー・ベッツ、シリーズMVPのトミー・エドマン、出塁能力の高いマックス・マンシーの4人がシリーズ通算OPS1.000を超えた。テオスカー・ヘルナンデス、フレディー・フリーマンの不発は気がかりだが、ベッツと大谷が本調子になったこと、好調のエドマンを上位に抜擢したことで、2人の不調を感じさせない得点力を発揮した。打線の最重要打者であるテオスカーとフリーマン(さらにはウィル・スミス)抜きでもその打棒はすさまじく、今のドジャース打線を止めるのは難しい。
さらにドジャースは投手陣もよく踏ん張った。左の切り札アレックス・ベシアが故障離脱、山本は中日の関係で1先発しかできず、頼みのフラハティも低調。多くのがドジャースにとって裏目に出、懸念材料となっていた中、3番手ビューラーが復調。加えてブレイク・トライネンを中心とするブルペン陣も、ベシアの穴を補うパフォーマンスを見せた。
一方のヤンキースは、リーグ優勝決定シリーズで3本塁打を放ったフアン・ソト、4本塁打のジャンカルロ・スタントンが恐ろしいまでの好調。今季のヤンキースはソトとジャッジ頼みのイメージも強いが、リーグ優勝決定シリーズではOPS.800超えが5人と、満遍なく打てるのはドジャースと同様だ。そして、ヤンキース打線を紐解くキーワードが“選球眼”。ヤンキース打線はレギュラーシーズンにおいて、MLB1位のボール球スイング率24.9%、四球率10.8%を記録した。プレーオフでも出場球団中最高の四球率13.9%を残している。これまで通り、ボール球を振らずに相手投手を疲弊させ、ランナーを貯めて長打で仕留めるパターンに持ち込みたいところだ。
そして投手陣は先発のコール、守護神ルーク・ウィーバーが支えてきた。コールはもはや全盛期の実力はないかもしれないが、プレーオフではこれまでほぼ投げてこなかったシンカーなどを織り交ぜ、老練な投球を展開。守護神のウィーバーも8登板で10.1回を投じ、12三振1四球の安定感を発揮している。ブルペンには他にもセットアップのクレイ・ホームズ、左殺しのティム・ヒルらがおり、ドジャースのブルペンに決して劣らないクオリティを誇る。
両チームにとって勝負の鍵を握るのは何だろうか。
ドジャースにとって最大の鍵は、打線が好調を維持できるか。リーグ優勝決定シリーズでは4勝した試合では平均得点約9点と、打線が大量リードを奪った。その反面、2敗を喫した試合では大敗。接戦を避け、打線の力によって大勝するという勝ちパターンが確立されたシリーズだった。
ドジャースとしては、懸念の投手陣をカバーするために打線が打ち続けなければならない。ドジャースの先発投手はプレーオフで1試合平均4イニング未満しか消化できていない上、防御率も6.08と低調。先発投手が早々に降板し、またブルペンデーにも依存した影響で、ブルペン陣はプレーオフが始まってから既に60.1イニングを投じている(ヤンキースブルペンは38.1イニング)。疲弊したブルペンがいつまで持ちこたえられるかどうかは定かではない。ドジャースとしてはなるべく接戦を避けたい上、シリーズが長くもつれるのも避けたいはずだ。そのためには打線が好調を維持するのは絶対条件だ。
対してヤンキースにとって鍵となるのは、今季のプレーオフ打率が.161のアーロン・ジャッジが復調するか否か。プレーオフにおいてのジャッジは、ストライクゾーンの中心部(“Heart”と分類されるゾーン)への投球割合が低下、逆に変化球を投げられる割合が増えている。投手がジャッジを避けるように消極的なアプローチを取る一方で、ジャッジはレギュラーシーズンにも増して積極的なアプローチを仕掛けてしまっている。スイング率は50.6%(シーズン中は42.0%)、ボール球スイング率は27.2%(シーズン中は18.7%)に増加。しかし、いくらジャッジといえど、ボール球に対しては打率.000(プレーオフ)と打ち気にはやると、良い結果を残せていない。
ワールドシリーズでも、ジャッジは真っ向勝負を避けられ続けるはずだ。ジャッジを歩かせると好調の4番スタントンとの勝負になるが、スタントンはリーグ優勝決定シリーズでは4本塁打を放ったものの、トータルでもその4安打(21打席)のみ。ジャッジを調子に乗せるよりは、一発があっても確率が低いままのスタントンと勝負し続けるほうがいいためだ。結局、リーグ優勝決定シリーズでドジャースに屈したメッツは、2度の完封負けを喫するなど自慢の打線がドジャース投手陣を打ちきれなかった。その二の舞を避けるためにも、ヤンキース打線は本来の実力を発揮しなくてはならない。ヤンキース打線が本調子に戻るためには、やはりジャッジの覚醒が欠かせない。
総合的に見ると、打線とブルペンの実力が拮抗し、先発投手のクオリティに差が付く可能性がある以上、ヤンキースが総合力では上かもしれない。しかし、ドジャースはここまで劣勢を予想されながら勝ち上がってきた。そして、ついにMLB公式サイトの予想ではこのプレーオフで初めて過半数を上回り、54%の記者がドジャースの世界一を予想している。数々の名勝負、番狂わせが起こってきた今季のプレーオフを締めくくる最終決戦。最後に笑うのは東西どちらの名門だろうか。