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アスレチックスが過去最高の1億ドルまで総年俸増額か その理由は

2024.11.26 19:18 Tuesday

 日本時間11月26日、「USAトゥデイ」のボブ・ナイチンゲール記者はアスレチックスがペイロール(総年俸)を1億ドル規模まで増やす計画だと報じた。来季からサクラメントを本拠とするアスレチックスは低予算球団として知られ、これまでの最高ペイロールは約9200万ドルに過ぎない。徐々に再建脱出に向けてチーム力が改善されているが、優勝争いに加わるには時期尚早にも見えるアスレチックス。いったいなぜこのタイミングでペイロールを上げるのだろうか。

 2021年オフからマット・チャップマン、マット・オルソンといった主力を一斉に放出し、再建期に突入したアスレチックス。2022、23年と100敗以上を喫したが、今季は93敗で地区最下位を免れるなど、徐々に再建脱出の兆しが見え始めたのは事実だ。ただ、それでも来季からすぐに優勝争いに加われる実力があるわけではない。よって、このタイミングで低予算球団のアスレチックスが球団史上最高の1億ドル以上のペイロールを費やすのは、過去の低予算運営からしても大胆な決断に映る。

 もちろん、評判が芳しくないアスレチックスのオーナーであるジョン・フィッシャー氏に、オークランド時代にはなかった勝利への渇望が唐突に芽生えたわけではないだろう。アスレチックスがペイロールを増額する理由は、収益分配にある。

 MLBには、収益分配制度という、収入が少ない球団が不利にならないために導入された戦力均衡システムがある。アスレチックスは長らく収益分配の対象であり、2016年から発効された労使協定で一旦対象外となったものの、2022年からまたその対象に戻っている。その分配金は2022年から徐々に上がり、今季2024年は75%、来季2025年には100%の分配金を受け取ることになる。

 現行の収益分配制度では、分配金を受け取った球団のペイロールが分配金の150%に満たなければ、異議申し立てを受けて収益分配を失うリスクがある。つまり、来季から受け取る分配金が増えるアスレチックスは、それに応じてペイロールを増額しなければいけないわけだ。恐らく分配金の150%という条件をクリアするのが、ナイチンゲール記者が報じた約1億ドルということだろう。

 しかし、いくらアスレチックス側がペイロールを増やしたくとも、選手がアスレチックスに加わる気になってくれなければ意味がない。「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタールはアスレチックスの今オフの苦戦を報じている。

 アスレチックスは来季からサクラメントにあるジャイアンツのAAA球場を間借りするため、FA選手にとって今まで以上に魅力的とは言い難い球団になってしまっている。マイナーの球場でプレーしなくてはならないマイナスは大きく、事実、ドジャースからFAになったウォーカー・ビューラーからはオファーをすげなく断られたとマーク・コッツェイ監督が「NBCロサンゼルス」に漏らしている。

 そのため、FAではなく、トレード補強に注力しようとするが、今度は他球団が欲しがるような選手がアスレチックスには少ないという現実を突きつけられる。現在、MLBでは多くの球団が勝負モードに移行しており、今オフはほとんどの球団がMLBレベルの戦力を補強しようと動いている。つまり、売り手の球団が少ないため、有望株を放出して主力を獲得するようなトレードが起こりにくい。そのため、まだ再建途上でMLBレベルの戦力が少ないアスレチックスは、他球団にとって魅力的なトレードパートナーに映らないのだ。

 2028年からはラスベガスの新球場に移ることが期待されるアスレチックス。こけら落としに向けて戦力を整え、弾みを付けたいところだが、早くも壁に当たっているようだ。

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