【Catch the Moment -2024- #1】ドジャースの行く末を決めた大谷の一打
2024.12.16 17:35 Monday
一投、一打、そして一瞬の出来事が勝負を決める、それが野球の魅力の1つだろう。20年以上にわたってMLB公式フォトグラファーとして活躍する田口有史が、2024年シーズンに捉えた「最高の一瞬(Moment)」を紹介する。
正直なところ、2024年シーズン前にはここまでドジャースの撮影をするとは思っていなかった。ところが、MLBレギュラーシーズン最初の試合、韓国・ソウルでの開幕戦から優勝決定のワールドシリーズ第5戦まで、まさに最初から最後までドジャースを撮影することになった。
それだけ多く撮影したドジャースの試合のなかで、最も印象深い大谷翔平のホームランの1つがこのシーン。NLDS第1戦の2回に放った同点3ランホームランである。
ドジャース対パドレスという、奇しくも開幕戦のソウルシリーズと同一で、しかも今シーズン地区優勝を争ったライバル対決となったこのカード。地区優勝はドジャースが果たしたものの、短期決戦では先発投手の安定性、ブルペンの充実、各ポジションにバランスの取れたラインナップでパドレスが有利ではないかというのが多くの専門家の予想であった。
1回表に先発の山本由伸が3点を失い、その裏の先頭打者の大谷はレフトフライ。2回裏も無死1・2塁からエドマン、ロハスがランナーを進めることなく倒れて、やはり下馬評どおり「パドレスが優位だな」という雰囲気がホームのドジャー・スタジアムにも流れ始めていたところで放った同点3ランホームランだった。
この瞬間、この叫ぶ姿こそ、オクトーバー・ベースボール。大谷が「プレーしたい」と語っていたプレーオフ。そしてこのホームランがなければドジャースはNLDSで敗退していて、当然ワールドシリーズ優勝もなかったと思っている。この写真は今シーズンのドジャースでの大谷を象徴するシーンの1つとして、うまく表現することができた思う。
◆田口 有史(たぐち ゆきひと)
1973年静岡県生まれ、福島県育ち。高校卒業時にスポーツ写真家を志し1993年に渡米。MLBが2チームある街という理由でサンフランシスコ芸術大学へ編入。在学中からフリーランスとして活動を始め、現在は日本に居を構えつつも年間150日ほど渡米し、MLBを中心に様々なスポーツシーンを撮影している。フリーランスとしての撮影活動の傍らMLBおよびWBC公式フォトグラファーも務める。Instagram:@tagucci42