MLBに新しく登場した走塁の新指標を解説 大谷翔平が1位の部門も
2024.12.17 17:47 Tuesday
日本時間12月17日、MLBのデータ分析システム「スタットキャスト」に走塁の新指標が登場した。MLBの公式データサイト「Baseball Savant」にてチェックできるこの新指標を解説する。前人未到の「50-50」を成し遂げた大谷翔平(ドジャース)は盗塁による得点創出を示す“ランナー・スティーリング・ランズ(Runner Stealing Runs)”でMLB1位に輝いた。
ベース拡大、牽制回数制限のルールの導入もあって、直近2年のMLBでは盗塁がより積極的に行われている。大谷の「50-50」をはじめ、盗塁関連の新記録も増え、データ分析全盛の現代野球で見落とされがちだった走塁への注目が高まっている。
この走塁への注目度の高まりもあってか、「スタットキャスト」は新たに盗塁による得点創出の指標を導入。これまでもあった進塁の指標と合わせて、総合的な走塁力を測ることが可能になった。
大谷が1位になった“ランナー・スティーリング・ランズ”の示すところは、大谷が盗塁において最も価値があり、効率的な走者だったということだ。大谷は盗塁数自体では、67盗塁を決めたエリー・デラクルーズ(レッズ)に劣るが、盗塁失敗がわずか4(デラクルーズは16)。成功率は93.7%という高水準だった。
走塁において重要なのは、アウトにならないことだ。実は盗塁を1つ決める価値よりも、1回盗塁を失敗してアウトになることによる損失の方がはるかに大きい。その点、大谷はデラクルーズより失敗が少なく、効率的に先の塁を盗んだことになる。
一方で、同時に導入された、盗塁による純粋な塁獲得数を示す“ネット・ベースズ・ゲインド(Net Bases Gained)”では、デラクルーズが大谷を上回る。積み重ねがモノを言う“ネット・ベースズ・ゲインド”では、大谷より多くの盗塁を決めたデラクルーズに分があるわけだ。
しかし、盗塁と進塁を組み合わせた走塁指標全体のトップは、デラクルーズでも大谷でもなかった。今季の走塁による得点創出を示す“ベースランニング・ランズ(Baserunning Runs)”で1位に輝いたのは、ダイヤモンドバックスのコービン・キャロルだった。
キャロルは昨季54盗塁、今季も35盗塁を記録したMLB屈指の駿馬だ。ただ、キャロルが秀でていたのは、圧倒的な“進塁力”によってだった。盗塁以外の進塁による得点創出を示す“ランズ・ヴィア・エクストラ・ベースズ・テイクン(Runs via Extra Bases Taken”では、キャロルは2位に3ポイント差をつけてダントツ1位の+9を記録。盗塁以外の走塁でアウトになったことによる得点損失(“Thrown Out”)はわずか0、盗塁以外の進塁をためらったことによる得点損失(“Holds”)もわずか-1(1位は0)と、状況判断において積極性と正確性を両立させていた。
この至高の判断力もあって、キャロルの走塁全体による得点創出を示す指標(ベースランニング・ランズ)は2位の大谷に4ポイント差をつけて+12。走塁だけで一人で12点を生み出していると考えると、キャロルが驚異的なランナーであることが分かる。
◆ベースランニング・ランズ(走塁全体による得点創出)
1位 +12 コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)
2位 +8 大谷翔平(ドジャース)
2位 +8 マイケル・ガルシア(ロイヤルズ)
◆ネット・ベースズ・ゲインド(盗塁による純粋な塁獲得数)
1位 40 エリー・デラクルーズ(レッズ)
2位 34 大谷翔平(ドジャース)
3位 31 ブライス・トゥラング(ブリュワーズ)
◆ランナー・スティーリング・ランズ(盗塁による得点創出)
1位 7 大谷翔平(ドジャース)
2位 6 ブライス・トゥラング(ブリュワーズ)
2位 6 ビクター・ロブレス(マリナーズ)