【Catch the Moment -2024- #2】山本のワールドシリーズデビュー
2024.12.23 18:04 Monday
一投、一打、そして一瞬の出来事が勝負を決める、それが野球の魅力の1つだろう。20年以上にわたってMLB公式フォトグラファーとして活躍する田口有史が、2024年シーズンに捉えた「最高の一瞬(Moment)」を紹介する。
ヤンキースとドジャース。東西の名門チーム同士の対戦で盛り上がった今シーズンのワールドシリーズ。初戦をフリーマンの劇的なウォークオフ(サヨナラ打)で制したドジャースの第2戦の先発は山本由伸。パドレスとのディビジョン・シリーズ第1戦の初回は不安定なスタートだったものの、大谷翔平の同点ホームラン以降は安定したピッチングをしてきた山本は、メジャー移籍1年目にしてワールドシリーズ登板を果たした。
この場面はドジャースが4対1とリードして膠着状態になりつつあった6回。ヤンキースは1番トーレスからの好打順。1勝1敗のタイに持ち込んでホームのヤンキー・スタジアムに戻りたいヤンキースにとっては、流れを持ち込むために簡単に3人では終わりたくない場面だ。
しかし、この日もソトにホームランを打たれた以外は、ヤンキース打線をノーヒットに抑えてきた山本。投球数が100に近づきつつあるなかで力投を続ける。トーレス、ソトを内野ゴロに仕留めたあと、打席にはアーロン・ジャッジ。ドジャースのワールドシリーズ制覇のためにはこのまま眠り続けてほしい打者だ。
初回から気合いの入った雰囲気を見せていた山本は、ここを三振に切って取れば、吠えながらガッツポーズをするのではないか。しかも投げ終わりの体勢そのままにセンター方向を向いたまま。
そんな予想を立てた僕は撮影位置をセンターバックスクリーンに移動。心のなかで「三振・三振」と期待しながらカメラを構えた。
結果、想定通りに見事な三振からの雄叫び。背景には項垂れるジャッジが、さらにその奥には立ち上がるファンが写り込んだ。山本のワールドシリーズ初勝利を象徴するような写真になったと思う。
◆田口 有史(たぐち ゆきひと)
1973年静岡県生まれ、福島県育ち。高校卒業時にスポーツ写真家を志し1993年に渡米。MLBが2チームある街という理由でサンフランシスコ芸術大学へ編入。在学中からフリーランスとして活動を始め、現在は日本に居を構えつつも年間150日ほど渡米し、MLBを中心に様々なスポーツシーンを撮影している。フリーランスとしての撮影活動の傍らMLBおよびWBC公式フォトグラファーも務める。Instagram:@tagucci42