【Catch the Moment -2024- #3】球史に残る大活躍の1日 そして歴史的偉業を達成
2025.1.6 18:16 Monday
一投、一打、そして一瞬の出来事が勝負を決める、それが野球の魅力の1つだろう。20年以上にわたってMLB公式フォトグラファーとして活躍する田口有史が、2024年シーズンに捉えた「最高の一瞬(Moment)」を紹介する。
この日に達成することはないだろうな。そんな予測のもとに迎えたのは9月19日の敵地マイアミで行われたマーリンズ戦。9月11日にドジャー・スタジアムで行われたカブス戦で自己最多の47号ホームラン、48盗塁とした大谷翔平。8月最終週からの好調ぶりから察するに、前人未到の「50-50」はその後のアトランタ、マイアミへの遠征中。特にマーリンズ戦のどこかで達成するだろうという雰囲気だった。しかし、17日のマイアミでの初戦で48号を放つと、18日に盗塁を決めて49盗塁としたものの、翌18日にはホームランが出ず、「50-50」の快挙はホームのドジャー・スタジアムで達成か。そんな空気が試合前のカメラマン席にはあった。
とはいえ、マーリンズ3連戦の最終戦。19日の初回に50盗塁目を成功させ、「50-50」に向けて1つ目の条件をクリア。6回に49号を放つと、カメラマン席はざわつき始めた。今シーズン2度のマルチホームランを記録している大谷。その時点で想定された打席は残り1打席とはいえ、この日すべての打席で出塁しており、2打席連発で快挙達成のチャンスは十分にあると考えられた。
そして迎えた7回。マーリンズがマウンドに送った2人の投手にドジャースが襲いかかると、打席には大谷。一方的に打ちまくる雰囲気のなか、大谷が初球からフルスイングをしてみせると、敵地にもかかわらず、球場内で記録達成への期待が盛り上がる。そして、マイク・バウマンの投じた4球目、外寄りのナックルカーブを逆らわずにレフト方向へ打ち返すと、確信歩きならぬ、確信バット投げからのチームメイトへの雄叫び。
試合前の少し弛緩した雰囲気から、歴史的記録達成の瞬間へ。1試合のなかで目まぐるしく変わったボールパークとカメラマン席の雰囲気が、マイアミらしくて良かったかな。と、その瞬間を無事に写真に収めることができた余裕のある今だからこそ言えるコメントかもしれない。
◆田口 有史(たぐち ゆきひと)
1973年静岡県生まれ、福島県育ち。高校卒業時にスポーツ写真家を志し1993年に渡米。MLBが2チームある街という理由でサンフランシスコ芸術大学へ編入。在学中からフリーランスとして活動を始め、現在は日本に居を構えつつも年間150日ほど渡米し、MLBを中心に様々なスポーツシーンを撮影している。フリーランスとしての撮影活動の傍らMLBおよびWBC公式フォトグラファーも務める。Instagram:@tagucci42