名選手ロフトンはなぜ一発落選だったのか 10人ルールの弊害
2025.1.27 11:48 Monday
アメリカ野球殿堂入りしていない名選手として、ルー・ウィテカー(元タイガース)とともに名前が挙がることが多いのがケニー・ロフトン(元インディアンスなど)だ。走攻守三拍子揃ったリードオフマンとして活躍し、通算2428安打、打率.299、622盗塁、ゴールドグラブ賞4度といった実績を残したロフトンだが、2013年の殿堂入り投票で3.2%しか獲得できず「一発落選」。なぜこれほど評価が低かったのか。これには殿堂入り投票の「10人ルール」が大きく影響しているとみられる。
メジャーの舞台で17年間プレーしたロフトンは、主にインディアンス黄金期のリードオフマンとして活躍。1994年から1999年まで6年連続でオールスター・ゲームに選出された。データサイト「ベースボール・リファレンス」が算出する総合指標WARでは通算68.4を記録しており、ライン・サンドバーグ、アーニー・バンクス、ロベルト・アロマー、クレイグ・ビジオ、アンドレ・ドーソン、デーブ・ウィンフィールド、トッド・ヘルトン、イチローといった殿堂入り選手を上回っている。
しかし、ロフトンは2013年の殿堂入り投票で得票率3.2%に終わり、わずか1年で殿堂入りの資格を失った。なぜこのようなことが起きてしまったのか。これには殿堂入り投票の「10人ルール」が大きく影響している。殿堂入り投票では、各記者が投票できるのは最大10人。殿堂の敷居を高く保つために設けられたルールだが、その年の候補者のなかに殿堂入りに相応しい選手が10人以上いた場合、問題が生じる。殿堂入りに値するキャリアを過ごしたにもかかわらず、ほとんど票を得られないという事態が発生する可能性があるのだ。
ロフトンのケースがまさにそうだった。2013年の殿堂入り投票の候補者を見ると、のちに殿堂入りを果たした選手が10人いる。クレイグ・ビジオ、ジャック・モリス、ジェフ・バグウェル、マイク・ピアッツァ、ティム・レインズ、リー・スミス、エドガー・マルティネス、アラン・トラメル、ラリー・ウォーカー、フレッド・マグリフという顔ぶれだ。さらに、カート・シリング、ロジャー・クレメンス、バリー・ボンズ、マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、ラファエル・パルメイロらも投票用紙に名前が載っていた。結局、この年は各記者の票が大きく分散したため、得票率トップのビジオでも68.2%にとどまり、誰も殿堂入りできなかった。
殿堂入りに値する実績を残した候補者が15人以上いるなかで、ロフトンはその陰に埋もれてしまい、わずか3.2%しか獲得できなかったというわけだ。これを防ぐためには「10人ルール」を撤廃する以外の方法はないだろう。しかし、「10人ルール」を撤廃した場合、殿堂入りのハードルが下がり、殿堂の権威が損なわれてしまう危険性もある。結局、記者投票から漏れた候補者を時代委員会(旧ベテランズ委員会)で救済するという現在のシステムが好ましいのかもしれない。
ちなみに、冒頭で名前を挙げたウィテカーの通算WARは75.1で、ロフトンをさらに上回っている。ウィテカーは2001年の殿堂入り投票で2.9%しか獲得できず「一発落選」となったが、この時代はまだWARという指標が存在しなかった。ウィテカーは2020年の時代委員会の投票でも落選しているが、WARの認知度が高まったことで実績が再評価され、近い将来にロフトンとともに殿堂に迎え入れられる可能性は高いと思われる。