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カージナルスがアレナド放出に失敗した背景 移籍拒否のワケ

2025.2.22 16:52 Saturday

 今オフの間、しきりにトレードが噂されていたベテラン三塁手ノーラン・アレナドは、結局カージナルスの選手として開幕を迎えることになりそうだ。一時はトレード成立まで「1ヤードライン」に迫っていたアレナドの放出はなぜ失敗したのか。米メディア「ジ・アスレチック」のケイティ・ウー記者が背景を報じている。

 ゴールドグラブ10度、シルバースラッガー5度を誇る名三塁手のアレナドも、近年はその実力に衰えが見え始めていた。アレナドと歩調を合わせるようにカージナルスも直近2年連続でプレーオフ進出を逃し、今オフはロスターの「リセット」を掲げた。総年俸を抑え、若手にチャンスを回すことを目的とするその「リセット」の第一歩が、アレナドの放出と考えられていた。アレナドもワールドシリーズ優勝を狙える球団でのプレーを望み、昨季閉幕間際に告げられたトレードの可能性について前向きだったという。

 しかし、最大の障壁となったのがアレナドが持つ全球団に対するトレード拒否権だった。アレナドは世界一を現在ないし近い将来に世界一を狙える球団でのプレーを望んだ。そのため、当初アレナド獲得に興味を示したタイガース、ロイヤルズ、エンゼルスとは実質的な交渉すら実現しなかったという。

 アレナドは球団の移籍先探しを助けるべく、トレード拒否権破棄を検討する5球団のリストを渡したという。同記者によれば、その5球団はドジャース、レッドソックス、ヤンキース、パドレス、アストロズだった。

 そしてそのリストに載っていたアストロズが実際にアレナドのトレードを打診。アストロズはアレックス・ブレグマン、カイル・タッカーという2人のスター選手を失い、獲得に金銭的負担も有望株の放出も必要ないアレナドは理想的な補強候補だった。カージナルスにとっても、リストの5球団の中で最も実現性が高いアストロズへのトレードの目処が付いたことは大きかった。あとはアレナドがトレード拒否権を破棄するだけという状況になったが、ここでアレナドは躊躇を見せる。

 アレナドはアストロズへの移籍に納得しきれていなかった。アストロズを移籍先として完全に除外するつもりはなかったものの、自身の獲得を目指す球団の動静、そしてそれに影響を及ぼすFA市場のスター三塁手アレックス・ブレグマンの市場動静を注視する時間を欲していたという。

 同記者によれば、アレナドはレッドソックスを最適な選択肢として見なしていたという。そして、レッドソックスはアレナドの獲得に動いていたのと同時に、ブレグマンのFA戦線にも加わっていた。つまり、レッドソックスがブレグマンとの契約に失敗した際に自身の獲得にシフトすることを視野に入れ、アレナドがアストロズへの移籍を保留した可能性もある。ただ、アストロズは悠長にアレナドの決断を待つことはせず、一塁手クリスチャン・ウォーカーと契約することでアレナドから完全に撤退した。

 そして、レッドソックス側も当初はブレグマンではなく、アレナドを本命と見なしていたという。なぜなら、レッドソックスはブレグマン側が求めている長期契約を提示しておらず、ブレグマン獲得への自信は到底大きなものではなかったためだ。ただ、アレナド獲得のライバルがいなかったこともあってか、レッドソックスはブレグマンの契約が決まるまでアレナド獲得を保留。そして、再び事態が急変する。

 レッドソックスが3年1億2000万ドル(年2000万ドルの後払い)にオファーを増額すると、ブレグマン側は方針を転換し、レッドソックスと合意に至ったのだ。こうして、レッドソックスもアレナド獲得の必要性がもはやなくなり、アレナドの放出先は完全になくなってしまった。

 カージナルスは「オフシーズンの優先順位の1位であり、2位であり、3位」とまでジョン・モゼラック編成本部長が評していたアレナドの放出に失敗した。まだトレードの可能性は残されているというが、それも憶測の域を出ない。「リセット」ボタンを押し損ねたカージナルスの次の一手が注目される。

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