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オフはスーパー店員の捕手センガー メッツの開幕ロスター入り狙う

2025.3.16 11:56 Sunday

 スプリングトレーニングも終盤に差し掛かり、有望株やマイナー契約の選手によるロスター争いは佳境に入っている。メッツの27歳ヘイデン・センガーも、スプリングトレーニングで激しいロスター争いを繰り広げている選手の1人だ。これまで一度もメジャーに上がったことはなく、マイナーで6年間プレーしてきたセンガーは、オフシーズンの間はスーパーの店員として働いている。米公式サイト「MLB.com」のメッツ番記者アンソニー・ディコモは「この捕手がメッツのロスター入りしたら、ホールフーズでの仕事を辞めるだろうか?」と題した記事で、センガーについて特集した。

 かつては後に有名になるような選手であっても、オフシーズンに副業を行うことは普通のことだった。しかし、“ハンバーガー・リーグ”とも呼ばれ、薄給で過酷なイメージが付きまとうマイナーリーグだが、近年は給与水準が向上。3年前は年俸が4800ドル(約72万円)だったのが、組合の交渉の結果、AAAの最低年俸は35800ドル(約532万円)に上がった。これにより、マイナーリーガーでもオフシーズンの間はトレーニングに全力を注げるようになったという選手も少なくない。

 それでもセンガーは2年前からアメリカの大型スーパー「ホールフーズ」でオフシーズンの間は働いている。スーパーで働く理由についてセンガーは「お金が必要だったから」と肩をすくめる。センガーは週4日、朝5時に起床し、6時からシフトに入る。そして正午までカートを使って品出しの作業に従事する。重さ18キロの水を運ぶこともあり、品出しの仕事はかなりハードだ。センガーは「アップルウォッチを見ると、毎日10時までにカロリー目標を達成できているよ」と語る。

 その店の店長であるTJ・サンフィリッポ氏は「彼は間違いなく私が今まで雇った中で最高の従業員の一人です」と“店員”センガーを絶賛する。「彼は来て、挨拶をし、そしてただ仕事に取り掛かります。私は何も言う必要がありません。彼がそこにいる6時間だけで、食料品店に大きな貢献を与えるのがわかります。彼の仕事の成果を見ると、まるで1日10時間働いているかのようです」と、センガーへの称賛は止むことがない。

 センガーは午前中に副業を終えると、午後から野球のトレーニングに励む。副業としてスーパーを選ぶ理由はそのスケジュールを気に入っているからだ。他の選手は少年野球のコーチなどを引き受けることが多いが、夜に家族と過ごす時間を確保するため、きつくてもスーパーの仕事を選んでいる。

 そして今、2018年にドラフト24巡目で入団してからメッツ一筋のセンガーは、彼のキャリアで最大の昇格のチャンスを手にしている。メッツは正捕手フランシスコ・アルバレスを故障で失い、急遽控え捕手が必要になったのだ。候補となるのはセンガーを含めて、同じマイナー契約の捕手3人。この中にはメジャー経験もあるジャクソン・リーツ、打力の評価が高いクリス・ウィリアムズも含まれ、開幕ロスターへの道は決して容易くない。

 控え捕手を狙うセンガーのアピールポイントはその抜群の守備力だ。打撃は苦手で、今季のオープン戦でも打率は.167に過ぎない。しかし、平均を大幅に上回る評価を受けるフレーミング、盗塁阻止力を兼ね備え、長年のメッツ傘下の在籍から球団・投手陣からの信頼も篤い。

 念願のメジャー昇格を手にすれば、もうスーパーで働く必要はないだろう。ただ、メジャーに長い期間いれば副業を辞めるか?と聞かれたセンガーは、その返答をためらった。サンフィリッポ店長は、スプリングトレーニングに向かうセンガーに「いつでもホールフーズに戻ってきて」と言って送り出したという。ひょっとすると、センガーがこのオフにメジャーリーガーとしてホールフーズに凱旋する姿も見られるかもしれない。

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