English Español 韓国語

大谷翔平の広角なパワーの秘密 データが示す特異なミートポイント

2025.3.18 07:35 Tuesday

 大谷翔平のパワーの秘密がデータによってまた1つ明らかになった。米公式サイト「MLB.com」のデービッド・アドラー記者は「これが大谷の広角なパワーの秘密か?」と題した記事を更新。MLBのデータ分析システム「スタットキャスト」に新たに追加される「打者の打席での立ち位置」と「ミートポイント」のデータから、大谷のパワーの秘密に迫っている。分析の結果分かったのは、大谷が持つ特異なミートポイントだ。

 現代のMLBのパワーヒッターのモットーは「ボールを前で捉える」ことだ。ボールを自分の体より前、ホームベースより前で捉えることによって、バットスピードが十分に加速した状態でボールを弾き出し、打球を引っ張ることで本塁打を量産する。ムーキー・ベッツ(ドジャース)やホセ・アルトゥーベ(アストロズ)など、小柄でも本塁打を打てる打者の多くはボールを前で捉えている。そして小柄な打者に限らず、ブライス・ハーパー(フィリーズ)やマニー・マチャド(パドレス)といった堂々たる体躯の強打者もボールを前で捉えている。

 一方、「ボールを前で捉える」アプローチを採用せず、「ボールを後ろで捉える」打者も存在する。アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、フレディー・フリーマン(ドジャース)らが「ボールを後ろで捉える」打者の代表格と言える。

 そして、その中でも「MLBで最も後ろでボールを捉える」打者が大谷翔平だ。

 大谷の平均ミートポイントはホームベースの先端から約9.4センチも深い。対してMLBの平均ミートポイントはホームベースの先端から約6.0センチ手前にある。大谷のミートポイントは平均からなんと約15.4センチも後ろなのだ。

 もちろん単に後ろで捉えているだけではない。大谷は「ボールを後ろで捉えたとき」すなわち「ホームベース上でボールを捉えたとき」に最も長打力を発揮できている打者だ。「ホームベース上でボールを捉えたとき」の本塁打数、長打数はメジャートップ(レギュラーシーズンとプレーオフ合算)。24本塁打はジャッジらと並んでトップ、53長打は2位に10本差を付けてトップだった。

 そしてその深いミートポイントこそが、大谷の広角なパワーの秘訣である。大谷は昨季通して放った57本塁打、103長打の内、およそ半分しか引っ張っていない。センターから逆方向への長打が非常に多いのだ。

 しかし、大谷のこの「後ろで捉える」アプローチには、大谷が持つ卓越したバットスピードが欠かせない。確かに「ボールを後ろで捉える」アプローチには、よりボールを長く見極められるという利点がある。一方で「後ろで捉える」ということは、バットが加速しきるための時間が少なく、詰まってしまうリスクも伴う。大谷はメジャー8位の約122.8キロ(76.3マイル)を記録するバットスピードのおかげで、そのジレンマを解消している。

 アドラー記者は、この大谷の深いミートポイントと鋭いバットスピードを利用した打法について「最善の打法だと言っているわけではない」としている。確かに大谷級のスイングスピードを誇る25人の選手(平均バットスピードが75マイル超え)の内でも、ボールを平均ミートポイントがホームベース上にあった打者は、大谷含めて6人しかいなかった。大谷の打法は、模範となる「最善の打法」というよりも、むしろ数少ない選手にしか再現できない打法という方が近いだろう。そして、だからこそ大谷は鋭い本塁打をフィールドの全方向に飛ばせる類稀な打者なのだ。


spotvnow