カブスの新星PCA 新データが明らかにする打力向上の秘密
2025.3.18 11:45 Tuesday
NPBとの壮行試合も経て、日本でも既に注目を浴びているカブスの“PCA”ことピート・クロウ=アームストロング。絶品の中堅守備と脚力を武器とするクロウ=アームストロングだが、実は昨季の後半戦にかけて大きく打撃成績を改善させている。その打力改善の秘密をMLBのデータ分析システム「スタットキャスト」の新データによって、「MLB.com」のマイク・ペトリエロ記者が紐解いた。
昨季、まだ1年目だったクロウ=アームストロングは前半戦に大きく躓いた。しかし、後半戦になって打力はかなり改善。前半戦のOPS.548から188ポイント改善させ、後半戦はOPS.735とまで上がった。エリート級の守備・走塁貢献を誇るクロウ=アームストロングにとっては、それだけ打てれば球界屈指の中堅手になれる数値だ。
このクロウ=アームストロングの打撃の成長には、様々な要因が考えられる。本人は足の上げ方やバットの微調整を認め、また単にMLBの投手に慣れたのも一因だろう。
ペトリエロ記者が指摘するのは、クロウ=アームストロングの打席での立ち位置の変更だ。「スタットキャスト」には新たに打者の打席での立ち位置、ミートポイントなどが分かるデータが追加された。それによると、クロウ=アームストロングはシーズン中に約33センチ(13インチ)後ろに下がり、そして約10センチ(4インチ)ホームベースに近づいているという。
これにより、クロウ=アームストロングは、後ろ足が打席の後ろの線を半分踏み越すほど後ろに構えるようになった。他の打者と比較すると、6月の打席の立ち位置は全体の打者より6%後ろだっただけなのに対し、9月になる頃には全体の打者の95%より後ろに立っていた。
クロウ=アームストロングは打席の立ち位置の変更を意図的だったと認めている。「正直に一番馬鹿げた説明をすると、試合の7回裏にでもなると、ボックスの後ろにめちゃくちゃデカい穴が空いてるんだ。ほとんどの選手がそこに立つから」とこれまでは多くの打者によって作られた穴を避けるため、前に立っていたという。しかし、「できるだけ長くボールを見られるチャンスを自分に与える」ため、7月末に打席の立ち位置を後ろに変更した。
その変化は如実に現れた。打席の立ち位置を変えた8月を境に、変化球のボール球スイング率を比較すると、8月以前は57%に対し、8月以降は45%にまで改善。45%も依然として平均以下の数値だが、ボールの見極めが最大の課題であるクロウ=アームストロングにとっては長足の進歩と言って良い。
そして、ボールの見極めのみならず、様々な部分が8月以降に良くなっていった。投球を呼び込んで、より体に近いミートポイントで捉えられるようになったのだ。8月以前のミートポイントはホームベースの先端から約33センチも前にあったのが、8月以降はホームベースの先端より約5センチ後ろに移った。同時期に打撃コーチと取り組んでいた軸足に体重を乗せるフォーム変更も相まって、クロウ=アームストロングは無理な引っ張りが減り、打力が大きく改善された。
ただ、本人にとってはこれまで気にしていた打席の穴は気になるところだろう。クロウ=アームストロングは「7番打者に残されるのはそういうもの(大きな穴)だ」と笑う。しかし、クロウ=アームストロングが打力を引き続き成長させれば、上位打線の打者として穴が小さい状況で打席に立てるようになるはずだ。