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カージナルス 打線復活の鍵は昨季2ヶ月で解任の打撃コーチ

2025.3.30 15:43 Sunday

 日本時間3月30日、開幕してから2試合を終え、カージナルスが好調だ。オフシーズンはほぼ補強に動けず、下馬評は低かったが、ここまでア・リーグ中地区優勝候補のツインズに連勝。好調の要因にあるのが、地区内屈指のポテンシャルを秘める打線。そしてそれを引き出しているのは、新打撃コーチであるブラント・ブラウンだという。米公式サイト「MLB.com」のジョン・デントン記者が報じている。昨季はチームの打撃不振を理由に、5月末でマリナーズを途中解任されたブラウンだが、新天地でその手腕を発揮しているようだ。

 30日のツインズ戦では生まれた8本の安打の内、6本が2ストライクから飛び出した。この2ストライクからのアプローチこそ、ブラウン打撃コーチが重視するものだ。「2ストライクの状態で過ごす時間が50%もある」とはブラウンの談。長打を打つことは重要だが、追い込まれたら軽打に切り替えて出塁を狙うこともまた重要だと説いている。加えて「ホームランの確率は平均して3~4%。毎回その賭けに挑もうとすると、それは良くない賭けになる」と語る。

 こういった語り口からも分かる通り、ブラウンはかなりの理論派であり、データの活用に積極的な人材だ。過去にはドジャースやマーリンズでも確固たる実績を築いてきた。しかし、昨季は貧打が長年の課題となっているマリナーズの打撃コーディネーターに就任したが、なんと開幕から2ヶ月足らずで解任されてしまった。

 実績ある指導者であるブラウンがマリナーズで失敗した理由は、ブラウンの打撃理論がマリナーズ内では「極端」なものと見なされ、ブラウンと選手の間に亀裂が生じていたことにある。「シアトル・タイムズ」のアダム・ジュード記者はその内側を報じている。ブラウンは試合前のミーティングで、打者たちに特定のゾーンに来る特定の球種を狙うよう指示していたという。そもそもフロントが重視するデータ主導のアプローチに、ブラウンの細かい戦略が加わったことで、一部の打者はチームプランが複雑すぎて柔軟性に欠けると感じていたようだ。そして、マリナーズの打者たちはブラウンを無視し始め、マリナーズ打線は多くの三振を積み重ねて迷走。ブラウンは5月末に解任された。

 ただ、マリナーズで手痛い失敗を味わった後でもすぐに打撃コーチ職のオファーがあったことが、業界のブラウンへの評価と言えるだろう。そして、カージナルスというチーム自体、ブラウンの指導スタイルにより適合しているかもしれない。そもそもマリナーズはブラウン就任の前年にMLBワースト2位の三振率を喫するなど、三振の多さが最大の課題だった。一方でカージナルスの昨季の三振率はMLB12位。ラーズ・ヌートバーやブレンダン・ドノバンといった野球IQやアプローチの優秀さで知られるタイプの選手も多い。ブラウンの複雑で細かい戦略を実行できる素地のある選手が揃っているチームかもしれない。

 開幕2試合で2回とも「プレイヤー・オブ・ザ・ゲーム」に選ばれている好調のヌートバーも、ブラウンの指導がハマっている選手の1人だ。ヌートバーは「いつでも強打したいけど、良い投手と対戦するときは、利他的になって選べるときに選ぶ“ヒットコレクター”にならないと。今のところ、僕達はそれ(ブラウンの戦略)を本当によくやっていると思う」と述べている。カージナルス躍進のためには、地区内でも屈指の実力を秘める野手陣がチームを牽引することが必要不可欠。ブラウンの指導で強力打線が蘇るだろうか。

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