話題の“魚雷バット”の生みの親は何者か? MITで博士号取得の秀才
2025.4.5 16:51 Saturday
ヤンキース打線の大活躍によって、一躍話題の的となっている“トルピード(魚雷)・バット”。このバットを生み出した人物は、マサチューセッツ工科大学で物理学の博士号を取得した秀才アーロン・リーンハートという。現在はヤンキースを離れ、マーリンズのフィールド・コーディネーターを務めるリーンハートとは、そもそも何者なのか?米公式サイト「MLB.com」のクリスティーナ・デ・ニコラ記者が伝えている。
現在48歳のリーンハートはミシガン大学で電気工学の学士号、マサチューセッツ工科大学(MIT)で物理学の博士号を取得。MIT在学中、同氏はNASAの資金援助を受けた研究に参加し、ナトリウムガスを史上最低温度まで冷却した経験もある。同氏はその後、ミシガン大学で物理学の教授を務めた (2007-14)。
一見すると、リーンハートの経歴は、野球とは何も思えない物理学の秀才のそれだ。現に彼はミシガン大時代、同大の強豪野球部のセレクションを受けたというが、不合格に。しかし、彼は「楽しかったから」と野球との繋がりを保ち続けた。2017年から大学、そして大学の野球リーグのチームのアシスタントコーチに就任すると、2018年にも大学のサマーリーグのボランティアアシスタントコーチを経験。そして、2018年の後半からヤンキースに雇われ、マイナーリーグの打撃コーチからメジャーリーグのアナリストまで幅広い役職を歴任した。
リーンハートのヤンキースでの仕事は、定量的なデータをフィールドでのパフォーマンスや練習と統合し、分析部門とコーチ陣のパイプ役を務めることにあった。そしてマイナーでアシスタント打撃コーディネーターを務めていた2022-23年に、リーンハートは“トルピード・バット”のコンセプトを思いつく。「本当にひらめいた瞬間は、選手たちがボールを打とうとしている場所がバットの一番太い部分ではないことに気づいた時だったと思う」と、従来の野球バットは芯の部分が太くないことに気付かされた。
こうして芯の部分が太く作られる“トルピード・バット”を思いついたはいいものの、成功への道のりは平坦ではなかった。選手たちはデザインについて意見を出し、リーンハートは設計図を作成し直し続けた。彼は、2023-24年に最初のバットのデモに協力してくれた「患者第一号」たちのおかげで、今日の画期的なモデルが生まれたと評価している。
芯の部分に当てようとバットを振るのではなく、そもそも芯の部分を太くしてしまえばいい。この逆転の発想に、球界は今日に至るまで辿り着かなかった。リーンハートは「僕自身も含めて、おそらく誰もこのことについて真剣に考えたことはなかった。毎日試合に出て、与えられたグローブをはめ、与えられたバットを振り、与えられたスパイクをはめて、できる限りベストを尽くして一日を過ごす」と語る。「そして時々、自分がやっていることに疑問を持つには少し時間がかかる。そして数年前、何人かの打者が自分たちのやっていることに疑問を持ち始めた。私はただ彼らの疑問に答えただけだ」。