今季まだ三振ゼロ アスレチックスの安打製造機ウィルソンが絶好調
2025.4.6 13:26 Sunday
アスレチックスの新人ジェイコブ・ウィルソンが止まらない。5日のロッキーズ戦では逆転本塁打と延長戦での勝ち越し2点タイムリー、そして今日の試合では逆転のタイムリー二塁打を放ち、2日連続で決勝打を叩き出した。2023年のドラフト1巡目でまだ新人資格を残す23歳は、打率.364、OPS.970と既にメジャーの舞台に適応しているように映る。中でも際立っているのが、その圧倒的なコンタクト力。今季のメジャーリーグでまだ三振を喫していない打者(規定打席)はウィルソンの他にルイス・アライズ(パドレス)しかいない。
23歳のウィルソンは、新進気鋭のアスレチックス打線を牽引する活躍を見せている。開幕から9試合連続安打を放っており、打率.364、出塁率.364、長打率.606、OPS.970のスラッシュラインを記録。安打を放った割合である打率と、塁に出た割合である出塁率が同じ値であることからも察せる通り、ウィルソンはまだ1個の四球も選んでいない。そして、三振も1個もない。前述の通り、今季のメジャーリーグでまだ三振を喫していない打者(規定打席到達)は、ウィルソンの他に首位打者のアライズしかいないのだ。
ウィルソンのプレースタイルの最大の特徴は、その人並み外れたコンタクト力にある。どんな球でもバットに当てられるコンタクト力を持ち、昨季はAAとAAA級で打率.433と異次元の成績をマーク。ドラフトから1年でメジャーに昇格してみせた。そして異常な高打率を叩き出している間にも三振を免れ続け、昨季のマイナーでは三振率わずか6.6%。そしてメジャーデビューした昨季から今季ここまでの55打席連続三振なしは、現行のMLBでは最長だ。
一方で、弱点と捉えられているのが、パワー不足だ。ウィルソンの昨季の平均打球速度は85.4マイル(約137キロ)と、平均より3マイル近く遅かった。平均打球速度が示すような「打球をいかに強く打てるか」は、打撃成績と強い相関を持つことが分かっており、現代のメジャーリーグでは最も重要な要素の1つだ。イチローのような安打製造機が時代と共に減っていき、驚異的なコンタクト力で安打を積み重ねるアライズやウィルソンのような存在は、今や希少種となってしまった。
5日の勝ち越し打を放ったウィルソンは「大学時代から同じアプローチを取っている。全ての球をどこにでも打てるようになりたいんだ」と「MLB.com」の取材に語っている。データ分析の発展によって四球を選ぶことの価値が広く認識され、多少の三振や空振りを許容してでもパワーヒッティングを優先する傾向が強まっているが、時代の流れもなんのその。時代遅れと思われた安打製造機が今季のア・リーグの新人王レースに旋風を巻き起こすかもしれない。