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ジャッジはなぜオープンスタンスをやめたのか? 活躍の秘密

2025.4.27 05:50 Sunday

 ヤンキースのアーロン・ジャッジの打棒は、今季もとどまるところを知らない。今季は26試合(日本時間26日時点)の出場で、打率.408、出塁率.508、OPS1.222(全てMLB1位)をマークし、総合指標fWARは脅威の16.4ペース。このまま歴代最高のシーズンfWARの更新に期待するのは酷だが、ジャッジは今季も歴史的な活躍を見せるだろう。米公式サイト「MLB.com」のデービッド・アドラー記者は、ジャッジの活躍の秘訣をバッティングスタンスに見出し、これを分析。オープンスタンスがトレードマークだったジャッジは今、ほぼスクエアスタンスで打席に立っている。スタンス変更の理由は何なのだろうか?

 大柄な体をオープンに開いたスタンス、そしてそこから繰り出される強烈なスイングが、アーロン・ジャッジのトレードマークと言っても良かった。ジャッジはそのオープンスタンスの打法によって、2017年に新人本塁打記録を塗り替える52本塁打を、2022年にはア・リーグシーズン本塁打記録の62本塁打を放ってきた。

 しかし、ジャッジは昨季5月から徐々にオープンスタンスをやめ、今やスクエアスタンスで打っている。MLBのデータシステム「スタットキャスト」では今春から打者のスタンスやミートポイントに関するデータが加わり、ジャッジのスタンスの変化も数字から見て取れるようになった。

◆アーロン・ジャッジのスタンスの変化

2023年7月:26度オープン
2023年8月:20度オープン
2023年9月:19度オープン
2024年4月:20度オープン
2024年5月:9度オープン(変化が始まる)
2024年6月:2度オープン
2024年7月:2度オープン
2024年8月:5度オープン
2024年9月:2度オープン
2024ポストシーズン:6度オープン
2025年4月:5度オープン

 ジャッジが最初にオープンスタンスの足を開き幅を狭めよう、と動いたのは2024年5月のこと。ジャッジは2024年4月は打率.220、OPS.811と、ジャッジ水準では調子が鈍っていた。そこでジャッジはややスタンスを狭めたところ「とにかく良い感覚だった。バランスが取れている、コントロールできているという感覚があった。だから、それを貫いたんだ」と、大胆にフォームを変更。その結果、2024年5月はOPS1.397、月間14本塁打を放ち、“本調子”を取り戻した。

 このスタンスの変化を見ると、毎月スクエアスタンスへと近づいているのではなく、月によってオープンスタンス寄りに戻ったり、スクエアスタンスに近づいたり、ブレがあるのが特徴的だ。これについてジャッジは「もしある日、オープンで良い感覚があれば、もっとオープンになるだろう。クローズドでもそうだ」と、感覚を重視していることを明かした。

 とはいえども、今後ジャッジは基本的にスクエアスタンスを続けていきそうだ。元々、ジャッジはオープンスタンスから半円を描くような特徴的なレッグキックを行い、スイングを開始していた。ただ、「前足が着地したら(スタンスは)スクエアに戻したい」と、スイングを開始すれば結局、スタンスはオープンではなくスクエアに近づいていく。ジャッジは「特に体格が大きいから、ゲームの中で一番シンプルな動作を身につけなきゃいけない」と、最初からスタンスをスクエアにすることで、スイングを簡略化しようと試みた。

 その効果は如実に現れている。ジャッジは「特に外角の球に対して、少し長くボールを捉え続ける助けになった気がする。それに、ツーシームやチェンジアップなど、内角の球に対しても、まだ強い姿勢で対応できていると感じている」と、スクエアスタンスの効果を実感。それまではパワーの代償として三振を喫することも多かったが、今季の三振率は20.4%とキャリア最低ペースだ。開幕1ヶ月ではあるが、打率も4割台を超え、今まで以上に穴がないコンプリートヒッターに成長している。

 今季のMLBの一大トレンドとなった「トルピード(魚雷)バット」の生みの球団・ヤンキースにあって、ジャッジは新型バットを使っていないことでも話題を呼んだ。データ分析によるフォーム調整が当たり前の現代にあっても、ジャッジは“感覚”を重んじることを忘れていない。「自分の動きをするために良いポジションを確保できるかどうかが大事だ。それがすべてだ。すべては感覚なんだ。それが野球の何たるかだよ」とジャッジは語っている。


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