English Español 韓国語

パドレスがRソックスのオールスター外野手の獲得に興味 報道を解説

2025.6.3 15:02 Tuesday

 日本時間6月3日、レッドソックスのオールスター外野手ジャレン・デュランの獲得にパドレスが興味を示していると、米メディア「ジ・アスレチック」のパドレス番記者デニス・リンが伝えた。パドレスは選手層が薄く、特に左翼手の不在は大きな穴となっている。レッドソックスは超有望株ロマン・アンソニーがマイナーAAA級に控え、スター外野手・デュランと袂を分かつ可能性もある。

 現在28歳のデュランは、昨季大きく頭角を現したオールラウンダー。昨季は160試合に出場して21本塁打、34盗塁、打率.285、OPS.834の打撃成績を残した。さらに左翼・中堅をカバーする守備力も素晴らしく、総合指標fWARではメジャー7位の6.7を記録。今季はまだ出足が鈍く、打率.264、OPS.718にとどまっているが、シーズン62試合中61試合で1番打者を務めるなど、依然レッドソックスの最重要人物の1人だ。

 レッドソックスは下馬評こそ高かったが、29勝32敗とやや停滞中。しかし、得失点差はプラスで、ロースターも実力のある選手が揃っている。普通であれば、今のタイミングで主力選手を放出して「売り手」に回るとは考えづらい。

 今回の報道はあくまでパドレス側が獲得に興味を示しているだけとはいえ、スター選手であるデュランのトレードが取り沙汰される理由は何なのだろうか。

 その理由の1つが、マイナーAAA級に控える超有望株ロマン・アンソニーだ。アンソニーは現時点で球界最高の有望株と嘱望される21歳。AAA級では53試合の出場で8本塁打、打率.303、出塁率.430、OPS.922を記録しており、その成熟した打撃技術、正確にバレル性の打球を量産するパワーに高い評価を受けている。アンソニーはもはやマイナーでやり残したことはなく、いつメジャーに昇格させるか、そしてどのスポットを彼に充てがうかが争点だ。

 レッドソックスの現状の外野陣を見ると、デュラン以上に若い面々が並ぶ。中堅の24歳セダン・ラファエラは、抜群の守備力で鳴らしている。右翼の25歳ウィルヤー・アブレイユは、昨季ゴールドグラブを受賞した守備力に加え、今季は打力も成長している。また、その2人はデュランよりも契約の保有可能期間が長い。デュランが今季の残りを含めて3年半なのに対して、アブレイユは4年半、長期契約を結んだラファエラは6年半残る。

 つまり、レッドソックスが超有望株アンソニーをここで抜擢し、外野陣の中では保有期間が短いデュランを放出。デュランで得られる対価でチームの戦力層を強化する、という一連のシナリオは決して突飛なものではない。レッドソックスの外野陣は有望株のアンソニー、さらに故障者の吉田正尚を加えても層が厚く、その余剰戦力をほかに回すのは机上では理に適っている。

 一方、戦力層が薄く、資金力もないパドレスにとっては、デュランは喉から手が出るほど欲しい選手だろう。パドレスの左翼手のOPSはメジャー29位。オフの間に左翼手の補強をロクにできなかった原因である寂しい懐にも、デュランはフィットする。デュランはまだ調停1年目で今季の年俸は375万ドル、来季は800万ドルの球団オプションとなる。デュランほどの実力者の年俸としては格安だ。

 しかし、パドレスはスター選手であるデュランの獲得のため、それ相応の出血を覚悟しなければならないだろう。同記者の記事でも名前が上がる、球界No.3有望株のレオ・デブリーズとNo.29有望株のイーサン・サラスは、間違いなく交渉で名前が上がるはずだ。

 パドレスのAJ・プレラー編成本部長は、昨夏も9人の有望株をトレード放出した一方、デブリースとサラスの両名の放出は頑なに拒んだ。とはいえ、これまでも数々の度肝を抜くビッグディールを成立させてきたのがプレラー率いるパドレスだ。仮にどちらかが放出されたとしても、もはや青天の霹靂ではない。

 トレード・デッドラインはまだ2ヶ月先とはいえ、シーズンは折り返しが近づいている。アンソニーのAAA級での活躍は留まるところを知らず、レッドソックスにとっての決断のときも近づいている。就任以来、トレード市場の主役を張り続けてきた「プレラー劇場」の幕開けが迫っているかもしれない。


spotvnow