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元西武・エンスが4年ぶりのメジャー復帰 五回1安打無失点で白星

2025.6.27 08:53 Friday

【タイガース8-0アスレチックス】@デトロイト/コメリカ・パーク、6月26日(日本時間27日)

 ディートリック・エンス(タイガース)が過去にメジャーリーグで先発したのは1試合だけ。2017年8月10日のブリュワーズ戦、エンスは当時ツインズに所属しており、一塁には名打者ジョー・マウアー、相手打線にはライアン・ブラウンやドミンゴ・サンタナがいた。この試合、メジャー初安打を記録したエンスだったが、本業のピッチングでは三回途中5安打2失点(自責点1)で勝敗つかずに終わった。

 エンスは当時のことを振り返り、「打撃練習とか、いろいろやらないといけなかったんだ。直前にヤンキースからトレードされたばかりだったから、チームのこともよくわからなかったし、少し変わった感じだったことを覚えている」と語った。

 また、エンスがメジャーリーグで最後の白星を手にしたのは、2021年9月16日にトロピカーナ・フィールドで行われた試合。当時レイズに所属していたエンスは、ジェイマー・キャンデラリオ、エリック・ハース、ダスティン・ガーノーから三振を奪うなど、四回3安打1失点の好リリーフを見せ、タイガース先発のタイラー・アレクサンダーに投げ勝った。

 エンスは2021年シーズンを最後にメジャーリーグの舞台から姿を消し、2022~23年は日本プロ野球の埼玉西武ライオンズ、2024年は韓国プロ野球のLGツインズでプレーした。そして、昨年12月にタイガースとマイナー契約を結び、米球界へ復帰。前回のメジャー登板から1371日が経過していたが、アスレチックス戦の先発に起用されると、五回1安打無失点の好投を見せ、チームの勝利に貢献した。

 前回の先発登板から2877日が経過しているが、これは「先発間の日数」として今世紀で最も長い記録の一つである。ちなみに、オリオールズのクローザーとして活躍したジム・ジョンソンが2006年7月29日に先発したあと、2018年9月11日に再び先発のマウンドに立ち、この間の日数は4427日だった。「誰が数えているんだろうね」とエンスは笑った。

 海外のリーグでプレーしていたときも、エンスにとってはメジャー復帰が常に目標だったという。たとえどれだけ時間がかかっても、どれだけ遠い場所でプレーしていても、エンスはメジャーの舞台に戻りたいと思っていた。今春のスプリング・トレーニングでタイガースの投手陣から様々なことを学んだのと同じように、エンスは海外でも多くのことを学んだ。

 マウンドに上がると、地元のイリノイ州フランクフォートから車で駆け付けた数十人の友人や家族、大学時代のチームメイトたちがお祭り騒ぎになるなか、エンスは普段通りのルーティーンで感情を抑えようとした。

 弟のダニエルは地元メディアの取材に対して「とても興奮しています。でも、僕たちはここに来ることをずっと待っていたけれど、兄にとってはただの一日に過ぎません。今季が始まってからずっと、(マイナーAAA級の)トレドで頑張っていましたから」とコメントしている。

 タイガースはリース・オルソンの戦列復帰が迫るなか、谷間の先発要員としてエンスを昇格させた。エンスは今季マイナーAAA級で14試合に先発し、防御率2.89、奪三振率10.25、与四球率2.17と安定したピッチングを披露。速球系(4シームやシンカー)とチェンジアップのコンビネーションに加え、カーブも巧みに操り、若手が並ぶアスレチックス打線を相手に見事なピッチングを見せた。アスレチックスのスタメン9人のうち、エンスがデビューした2017年に現役メジャーだったのは4人だけ。タイガースの守備陣にも、エンスが最後にメジャーでプレーした2021年にまだ現役メジャーではなかった選手が4人含まれていた。

 エンスとバッテリーを組んだジェイク・ロジャースは「試合前、彼に『最初から球種を上手くミックスできれば、本当にいい一日になる』と言ったんだ。そして、彼はすべての球種でゾーン内を攻め、僕にリードの主導権を与えてくれた。内角、外角、高め、低め、ストライクゾーンを上手く使いながら、相手打者のバランスを崩していた。すべての球種でストライクを取ることができるから、捕手としても楽だったよ」とエンスのピッチングを称えた。

 チェンジアップはタイガース入団後に改良を加えたものであり、「キックチェンジ」とも呼ばれる。従来のチェンジアップの回転と、スプリッターの動きを組み合わせた球種だ。マイナーAAA級では「キックチェンジ」で空振り率40%を記録しており、今日の試合でも14回のスイングに対して5回の空振りを奪った。このほか、4シームで7回、シンカーでも1回空振りを奪っている。

「スプリング・トレーニングの早い段階で『これを試してみて』と言われたんだ。(ピッチング・ディレクターの)ゲーブ・リバスがこれを提案してきて、僕は取り組みを始めた。すぐにこの球種のことが気に入ったし、自信をもって投げられるようになった。本当に助かっているよ」とエンスは「キックチェンジ」を取り入れた効果を語っている。

 三回先頭のマックス・シューマンが放った内野安打が唯一の被安打。このあと、デンゼル・クラークに四球を与え、ピンチを招いたエンスだったが、ジェイコブ・ウィルソンをライトフライ、ブレント・ルーカーをサードゴロ併殺打に仕留め、ピンチを切り抜けた。外野まで飛ばされたのはウィルソンのライトフライ2本だけ。それ以外はすべての打球を内野にとどめ、平均打球速度は81マイルに過ぎなかった。

 タイガースのA・J・ヒンチ監督は「素晴らしかった。彼にとって良い結果だっただけでなく、チームにとっても、組織にとっても良かった。多くの人々の貢献による結果だが、そのなかでもディートリックは冷静さを保ち、興奮を抑え、本当に必要なときに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」とエンスの好投を絶賛した。

 今回の好投により、エンスはメジャーに残る可能性が出てきた。予定通りにオルソンが復帰した場合、エンスはロングリリーフ要員としてブルペンに回ることになるだろう。

 エンスは「タイガースと契約したとき、こういう可能性があることを想像していた。それが実現して本当に嬉しい」と4年ぶりのメジャー復帰を喜んだ。


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