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カージナルス・グレイ 89球&11Kの無四球完封で「マダックス」達成

2025.6.28 14:57 Saturday

【ガーディアンズ0-5カージナルス】@クリーブランド/プログレッシブ・フィールド、6月27日(日本時間28日)

 ソニー・グレイ(カージナルス)は初球を投げる前に、マウンドのプレートの後ろに立ち、ガーディアンズのダグアウトに目をやった。ガーディアンズのスティーブン・ボート監督は、グレイにとってマイナーAAA級でバッテリーを組んだ間柄であり、一緒にメジャーのオールスター・ゲームに出場した関係性でもあり、そして球界において、家族ぐるみの付き合いをしている最も親しい友人の一人でもある。

 グレイは頷き、ボート監督も意味ありげに頷き返した。そしてグレイはピッチングを開始し、息をのむほど圧倒的なパフォーマンスを披露。10年前に彼らがまだチームメイトだったとき、ボートがクリーブランドのプログレッシブ・フィールドで目にしたような、素晴らしいピッチングだった。

 試合が始まってからの9イニングのうち、グレイは最初の4回2/3をパーフェクトに抑えた。わずか89球で9イニングを投げ抜き、打たれたヒットは五回の単打1本だけ。今季最多の11三振を奪い、カージナルスはボート監督が率いるガーディアンズを5-0で破った。

 グレイは効率的かつ支配的なピッチングを展開し、「マダックス」を達成。「マダックス」とは100球未満での完封勝利を意味するが、グレイが投じた球数は90球にすら満たなかった。グレイはかつてバッテリーを組んだボート監督の存在が自身のピッチングに好影響を及ぼしたことを否定しない。

「初回のウォーミングアップを終えたあと、スティーブン・クワンが打席に入り、少しだけ時間があったから、ボートが立っている場所を見つめたんだ。すると、彼もこちらを見ていて、お互いに少し見つめ合った」とグレイ。両者は家族ぐるみの付き合いがあり、お互いの子供が一緒に育ってきたというほどの間柄。「彼のことを尊敬しているから、軽く頷いたんだよ」と投球前の動作の意味を明かした。

「このゲーム(野球)はときどきそういうことが起こるんだ。スティーブン・ボートとバッテリーを組んで完封してから10年が経った。あれは前半戦の最終戦で、ボートがホームランを打ち、試合後に僕たちは車に乗り込んで、オールスター・ゲームの開催地であるシンシナティまでドライブしたんだ」とグレイは当時の思い出を語った。

 グレイのピッチングで印象的だったのは、支配力よりも効率性だ。10球未満でガーディアンズ打線を三者凡退に抑えたイニングが3度もあった。3ボールになったのは2度だけ。三回の球数が最も多かったが、それでもわずか12球だった。今季3度目・通算20度目となる2ケタ奪三振を達成し、わずか2時間11分でガーディアンズ打線を完封した。

 10度のゴールドグラブ賞を誇る名三塁手ノーラン・アレナドは「自分が守備に就いたなかで最高のピッチングだった。走って守備位置まで行き、またすぐにダグアウトに戻ったような感じだったよ」と語る。「彼はすべてのボールを狙い通りに投げていた。ゾーンを支配していたし、まさにピッチングの完成形だよ」とグレイの好投を絶賛したが、アレナド自身も六回にタイムリー二塁打を放つなど、2安打2打点の活躍で勝利に貢献した。

 グレイが最後に完封を記録したのは2015年8月7日のこと。10年ぶりとなる完封勝利を挙げた一戦で許した唯一のヒットは、五回2死からノーラン・ジョーンズに打たれたもので、カウント1-2からボール気味のスイーパーをライト前に弾き返された。しかし、難しい球を上手く打たれたため、特に動揺することはなかったという。

 グレイは「イニングが進んでいき、五回途中までパーフェクトに抑えていることもわかっていた。ヒットを打たれた球もいいボールだったし、それに関しては満足しているよ」とコメント。「イニングが進むなかで、何回まで投げたかをあまり気にしないようにしていた。今、五回なのか六回なのか、途中でわからなくなった。でも気にすることなく投げ続けることができた。九回になったときはわかっていたけれど、ただの1イニングと考えることができたし、それが良かったんだと思う」と無心で投げ続けた結果の快投だった。

 グレイにノーヒッター達成のポテンシャルがあることを誰よりも知っているのがボートだった。ボートは誰よりも多くグレイとバッテリーを組んだからだ(通算45試合・272回1/3)。グレイのピッチングは素晴らしく、16個の空振りを奪い、そのうち10個は最大の武器であるスイーパーで記録したものだった。

 ボート監督は「彼はすべてを思い通りにやっていたね。コマンドも素晴らしかったし、すべての球種が機能していた。上下左右のコーナーを突きながら、6つの球種を投げ分け、狙い通りの場所に投げていた。信じられないようなパフォーマンスだったよ」とグレイの快投を素直に称賛。これほど支配的なグレイのピッチングを見たことがあるかと尋ねられ、「2015年にクリーブランドで見たよ。あのときは2安打完封だった」と10年前にバッテリーを組んだ試合を挙げた。

 なお、90球未満での「マダックス」達成は、2021年のアダム・ウェインライト(カージナルス)以来メジャー4年ぶり。グレイが奪った11三振は、90球未満の「マダックス」では史上最多となった。


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