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球団幹部がトレードデッドラインを振り返る 新たなトレンドは

2025.8.9 16:34 Saturday

 8日(日本時間9日)、トレードデッドラインから1週間が経過し、いよいよ本格的にポストシーズン争いが激化している。デッドラインまでの最後の31時間で50件のトレードが成立するなど、今季のトレード市場も大いに盛り上がった。各球団の幹部は匿名でインタビューを受け、今季のデッドラインについて振り返っている。

 多くのトレードが成立したにもかかわらず、ア・リーグのある球団幹部は「トレードは難しい」とデッドラインで得られた教訓について語った。大小問わずトレードが成立した一方、サンディ・アルカンタラ(マーリンズ)やルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)ら放出が噂された中で残留した大物選手も多かったのは事実だ。

 多くの場合、良いトレードは双方にとって痛手となる。才能を獲得するには、才能を手放さなければならないのだ。有望株や複数年保有できる選手を手放すのは、言うは易く行うは難しである。

 「勝利の代償は現実のものだ。チームや意思決定者の中には、その代償を払う意思のある者もいれば、そうでない者もいる」ある球団幹部は語った。そして複数の球団幹部が、勝利のためには常にその犠牲を払うことをいとわない人物を指摘した。パドレスのゼネラルマネージャー、AJ・プレラーだ。

 プレラーはトレードデッドライン当日に22選手を巻き込んだ5つのトレードを行ったが、中でもアスレチックスからメイソン・ミラーを獲得する6選手が絡むトレードは規模が大きかった。パドレスは剛腕ミラー獲得のため、「MLBパイプライン」で球界3位にランクインする18歳レオ・デブリースを放出し、球界の度肝を抜いた。

 「プレラーは皆を狂わせる!デブリースを売却する際に、複数のチームを待たせていた。買い手でありながら、最高額の入札者にデブリースを売り飛ばすという点で、まるで売り手のように動いていた」と、あるア・リーグ球団の幹部はデブリース放出の裏側を語った。デブリースは、「MLBパイプライン」が2004年にランキングを発表し始めてから、シーズン中にトレードされた最初のトップ5有望株となり、デッドラインでトレードされたトップ10有望選手としては史上3人目(他の2人はエロイ・ヒメネスとスコット・カズミアー)となった。

 「ここ数年、同じ傾向が強まっている。買い手は有望な有望株を手放したがらない。もちろんサンディエゴは例外だが」とあるナ・リーグの球団幹部は語った。優勝を狙うチームが、たとえ球界トップ10の有望選手でなくても、レンタルのスター選手と引き換えに有望株を複数人手放していたのは、それほど昔のことではない。

 2016年のデッドラインでは、ヤンキースはアロルディス・チャップマンとアンドリュー・ミラーという2人のリリーバーを放出。その見返りにグレイバー・トーレスら3人の球界トップ100有望株を獲得した。チャップマンとミラーはそれぞれ移籍先のワールドシリーズ進出に貢献し、対価となったトーレスも主力に成長した。

 ただ、今夏のデッドラインでは球界トップ100の有望株で移籍したのは3人のみ。デブリース以外では、エドゥアルド・テイト(56位)とミック・エイベル(91位)が共にヨアン・デュランの対価としてフィリーズからツインズへ移籍しただけだった。

 「チームはレンタルのために高評価の有望株を手放すことはもうない。たとえ短期的にどれだけチームに貢献してくれるとしてもだ」とナ・リーグのある球団幹部は語った。

 レンタル選手を高値で買う球団が減る一方、複数年保有できる選手、特に先発投手は法外な対価が設定される場合が多く、それは変わっていない。今夏のデッドラインではジョー・ライアン(ツインズ)、サンディ・アルカンタラとエドワード・カブレラ(共にマーリンズ)、マッケンジー・ゴア(ナショナルズ)らにトレードの噂が上りながら、結局は全員が残留した。

 「売り手が複数年保有可能な先発投手の売り値を下げなかった。だから、どの投手も移籍しなかったのだと思う」とはあるナ・リーグ球団幹部の談だ。そして別の幹部は野手に比べ、投手の獲得のコストが高いことに驚いていた。

 「投手の需要ははるかに高く、どのチームもそれを求めていると思う。野手を放出するなら、その選手が複数のポジションをこなせる場合を除き、まさにそのポジションのニーズを満たす球団に売らなければいけないから」と、投手の方が需要が高くなりやすい原理について、別の球団幹部は説明する。

 さらに今夏のデッドラインでは33人のリリーフ投手が移籍するなど、リリーフ市場が活況だった。「リリーフ投手の要求額は天井知らずで、そこからほぼ横ばいだった。最終的にコンテンダーが必要な対価を支払った」とあるナ・リーグの幹部は語る。

 「私にとって最大の話題は、どれだけのチームがオール・インしたかということだ。多くの球団が、これまでの戦略に基づき、ワールドシリーズ優勝のチャンスがあると考えているんだ。そして、そうしたチームの多くが、10月に勝利するためには、強力なブルペンが必要だと考えているのは明らかだ」。

 ポストシーズンの進出枠が拡大されたことを踏まえると、デッドラインまでのこの狂乱は今後のスタンダードになる可能性がある。ナ・リーグのある球団幹部は、レイズが行ったような買い手としても売り手としてもハイブリッドな動きを行うチームが増えると予測している。

 「ほとんどの人は、選手を移籍させるために、ぎりぎりまで待つだけだ」とあるナ・リーグの球団幹部は語った。また、別の球団幹部は先週の狂乱のデッドラインを振り返り、こう結論に至った。「全体的に見て、ここしばらくで最も楽しいトレードデッドラインの一つであることは間違いない」と語った。


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