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史上初の両投げ野手が誕生 左でライトを、右で三塁を守備固め

2025.8.11 09:55 Monday

【オリオールズ2-3アスレチックス】ボルティモア/オリオールパーク、8月10日(日本時間11日)

 アスレチックスはオリオールズとの3連戦の最終戦に3-2で逆転勝利。直近16試合で11勝と調子を上げ、オリオールズ3連戦にも勝ち越した。この日はロースターの野手全13人を注ぎ込む全員野球で終盤の逆転劇を演出。九回には内野手が不足したことから、両投げ野手のカルロス・コルテスが左利き用の外野手グラブを右利き用の内野手グラブに持ち替え、プロキャリアで初の三塁手を守った。

 アスレチックスはこの日「MLBパイプライン」の有望株ランキングで球団3位に入るルイス・モラレスがキャリア初先発を飾った。4三振を奪って無失点に抑えたものの、5四球を与えるなど制球に苦しんだ。有望株のモラレスには球数制限が課せられており、2回2/3限りでマウンドを降りた。

 五回、3番手ベン・ボウデンがオリオールズのジョーダン・ウエストバーグにソロ本塁打を浴び、ついに試合の均衡が崩れた。アスレチックスも六回に新人コルビー・トーマスのタイムリーですぐさま同点に追いついたが、七回にコビー・メヨにタイムリーを浴び、1-2と勝ち越しを許した。

 しかしアスレチックスは諦めず、九回にチャンスを作る。1死一、二塁で8番ウィリー・マカイバーがレフト線に二塁打を放ち、代走で一塁走者に入っていたローレンス・バトラーが激走で逆転のホームを踏んだ。

 アスレチックスは3-2とリードを奪い、あとは最終回を抑えるだけだったが、内野手が一人足りなかった。逆転のホームを踏んだバトラーは三塁手ジオ・ウルシェラの代走として試合に入っていたため、三塁手が不在だった上、控え内野手も既に使い切っていた。

 そこで八回からライトに守備固めで入っていたコルテスが三塁手として起用された。生まれつき左利きのコルテスは8歳のとき、複数のポジションを守れるようにと父から右投げを学んだ。2018年にコルテスは二塁手としてドラフト指名を受けたが、翌年には外野手に転向。2019年を最後に二塁を守ったことはなかった。

 グラブを右から左に持ち替え、6年ぶりに内野を守っただけではなく、コルテスは未経験の三塁にぶっつけ本番で挑んだ。これは左打者との対戦が多いことを見込んだ上での配置で、「それで良かった。でも緊張したよ」と胸をなでおろした。

 奇策を披露したマーク・コッツェイ監督は「これは昔ながらのチーム一丸の勝利だった。全員が貢献した。両利きの選手が内野に回って守備をしたんだ。これは自らを慣れない立場に置く覚悟があってチームのために犠牲を払った物語っている」とチームを称賛。印象的なコルテスの守備固めのみならず、控え捕手のマカイバーが打っては決勝タイムリー、守備でも再三の好プレーを見せるなど、本来は脇役の選手たちが奮闘した。

 そしてコルテスはこの日、MLBの歴史に名を刻んだ。両投げの投手としては過去にパット・ベンディッティ(奇しくも同じアスレチックスでデビュー)がメジャーでプレーした記録が残っているものの、野手が同じ試合でグラブを持ち替えて両投げを行った記録は存在しない。

 MLBのデータベースの両投げとして登録された野手は、歴史上でコルテスのほかにブルワーズのアンソニー・シーグラーしかいない。今季デビューしたばかりのシーグラーはまだ捕手と三塁手でしか出場経験がなく、左投げで守ったことがない。コルテスはシーグラーに先んじて唯一無二の偉業を達成した。

 この日、コルテスは既に交代済みの同僚マックス・シューマンから右利き用のグラブを借りた。しかし、今後は右利き用のグラブも持参するつもりだ。「これからは自分のグラブを持ってこないとね。念の為」とコルテスは笑いながらコメントした。


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