マリナーズが悲願のワールドシリーズ進出に王手 紙一重の攻防制す
2025.10.18 14:16 Saturday
【マリナーズ6-2ブルージェイズ】シアトル/T-モバイルパーク、10月17日(日本時間18日)
歴史に名を残すか、それとも悲劇に終わるかどうかは、ほんの数メートルの飛距離の違いにすぎない。勝った方がワールドシリーズ進出に王手となるア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS=7回戦制)の第5戦では、そのわずかな差が勝敗を分けた。
1-2とリードされて八回を迎え、残り6アウトに追い詰められたマリナーズが、起死回生の逆転劇を演じた。まず本塁打王カル・ローリーに同点弾が飛び出し、さらにチャンスを作り、エウヘニオ・スアレスがライトスタンドへ勝ち越し満塁弾。一挙5得点の攻勢で勝ち越し、ブルージェイズを6-2で破った。
マリナーズは2000年以来となるホームでのALCSの勝利を飾り、球団史上初のワールドシリーズ進出に王手をかけた。
「キャリアの中で素晴らしい瞬間は数多くあったが、グランドスラムを打って、長年タイトルを待ち望んでいたファンの前でチームの勝利に貢献できたことは格別だ。私もキャリアを通してこの瞬間を待ち望んできた」と、満塁弾を放ったスアレスは語った。
この試合では、わずか数メートルを争う攻防が連発した。
四回、0-1とリードされたブルージェイズは満塁のチャンスを作った。アーニー・クレメントが放った打球はホームベース手前の土でバウンドし、ファウルグラウンドへ転がりかけた。しかし、それを捕手のカル・ローリーが素早く抑え、本塁を踏んでから一塁へ転送。あと数センチずれていればファウルで仕切り直しだったかもしれなかったこのホームゲッツーで、マリナーズは窮地を脱した。
クレメントはその後、六回に勝ち越しタイムリーを放ち、八回にもレフトへ飛距離363フィート(110メートル)の大飛球を放った。そのままレフトスタンドに吸い込まれるかと思われたこの打球は、レフトのランディ・アロザレーナが見事に捕球。追加点を防ぐ本塁打キャッチで、マリナーズは流れをつかんだ。
大飛球を打たれた左腕のゲーブ・スパイアーは「良い打球を打たれたと思った。ランディがゆっくりと追いかけているのが見えたから、チャンスがあるかもと思った。そして彼がジャンプして捕球するのを見た。本当に嬉しくて、両手を上げて喜んだよ。最高の瞬間だったね」と振り返った。
その直後の攻撃でマリナーズは逆転。口火を切ったローリーの本塁打は高々と上がったものの、飛距離348フィート(106メートル)と伸び切らなかった。しかし、なんとかレフトスタンドへ届き、値千金の同点弾となった。
「ボールを打ったときはとらえたと思った。だけど、打ち上げすぎたと気付いた。分からないけど、もし屋根が開いていたら、違う結果になっていたかもしれないね。だけど十分な距離を飛ばせてよかったよ」と、レギュラーシーズン中も60本塁打を放ったローリーは語った。
ローリーの同点弾のあと、マリナーズは満塁のチャンスでスアレスを打席に迎えた。二回に先制弾を放っていたスアレスは、セランソニー・ドミンゲスの直球を打ち返して、勝ち越しの満塁弾。ポストシーズンで満塁本塁打を放ったのは、エドガー・マルティネス(1995年ALCS第4戦)に続き、2人目だ。
「ジーノ(スアレス)が今日5打点を挙げ、勝利をもたらしてくれたことは、言葉では言い表せないほど嬉しいことだろう。彼にとって、まさに最高の一日だった」と、ダン・ウィルソン監督は語り、不振の大砲が目覚めたことを喜んだ。
ポストシーズンの最大7戦のシリーズでは2勝2敗で迎えた第5戦に勝利したチームは、68.9%(46/67)の確率でシリーズに勝利している。現行のフォーマットでは、ホームで第5戦に勝利して3勝2敗でアウェイの第6戦以降に臨んだチームは、60.6%(20/33)の確率で勝利している。
追い詰められたブルージェイズのジョン・シュナイダー監督はこう語った。
「選手たちに穴に潜り込むようなことはしてほしくない。それはわれわれの本質ではない。第6戦に全力を尽くす。試合に向けて万全の準備を整える。このチームには、他の方法は考えられない」
ブルージェイズのクラブハウスには浮かぬ顔の選手が多かった。ブルージェイズの選手たちは、「われわれがここでやれることはやった」と繰り返した。
先発として好投したケビン・ゴーズマンは、惜敗を乗り越えて前を向いている。
「このシアトルでの3戦を3戦のシリーズととらえていたから、トロントに戻るためにはこのシリーズに勝ち越さなければいけなかった。そして実際に勝ち越せた。ああいう負け方をするのはもちろん辛い。でも、われわれは粘り強い。このクラブハウスにいる選手たち以上に信頼できるチームはない」