佐々木朗希、ブルペン転向の決断の裏側
2025.10.19 12:48 Sunday
ドジャースの球団編成部長アンドリュー・フリードマンは9月、右肩のインピンジメントで長期離脱していた佐々木朗希と面談した。フリードマンはそこで、佐々木にポストシーズンに出場できるとすればブルペン転向が必要になると伝えた。23歳の佐々木にはリリーフ経験がなかった。
「もしやりたくないなら、それは理解する。リスクは伴うから。でも、もしやりたいなら、君がチームを優勝に導ける現実的な道筋があると思っている」
フリードマンは佐々木にそう言ったことを覚えている。
フリードマンはその場で佐々木に答えを求めなかった。考えるように伝えた翌日、佐々木はフリードマンに電話で「参加する」と答えた。
その後まもなくして、佐々木は3Aオクラホマシティで2度のリリーフ登板をこなした。しかし、それから1ヵ月も経たないうちに、佐々木はナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の第4戦の最終回のマウンドに上り、チームを2年連続のワールドシリーズへ導いた。
「彼が期待に応えてくれたことは言葉では言い尽くせない」と、フリードマンは語る。
佐々木にとって、ブルペン転向は未知の経験の連続だった。ワイルドカードシリーズでレッズ相手にリリーフ登板したのは、レギュラーシーズン最終週の2登板に続き、リリーフとしてはわずか3登板目だった。その3日後には、フィラデルフィアの熱狂的な観客を前にしながら、地区シリーズ第1戦でキャリア初セーブを挙げた。そしてその第4戦では、3回無安打の好リリーフでチームをサヨナラ勝利、そして地区シリーズ突破に導いた。
そして迎えたNLCS第4戦、デーブ・ロバーツ監督は初めての連投を佐々木に課した。
「ポストシーズンでは、選手たちがやったことがないことがたくさん起きる。でも、優勝したいなら、リスクを負う覚悟ができていなければならない。そして、私としては、今夜の朗希に完全に自信を持っていた」
ロバーツ監督の佐々木への信頼は報われた。100マイル(161キロ)以上をマークしていた直球の球威はやや落ち、先頭に安打を許したものの、佐々木は危なげなく九回を締めくくった。
つい最近まで、佐々木はドジャースのポストシーズンの計画に含まれないこともありえた。佐々木がブルペン転向を了承したときでさえ、フリードマン自身も佐々木がポストシーズンの構想に含まれる確信を持っていなかった。不確定要素が多すぎたのだ。
しかし、佐々木は戻ってきた。
転機となったのは9月18日のリハビリ登板だった。佐々木は1回(16球)を挙げ、無安打、2三振と好投。それだけではなく、直球はかつての球速を取り戻し、スプリットも切れ味が蘇っていた。佐々木は完全に、腹斜筋と肩をケガする前の2023年の姿に戻っているように思われた。
「その時、私たちは『よし、佐々木なら本当に助けになってくれる』と思った」と、フリードマンも確信に至った。
佐々木はチームの助けになったどころではなかった。ポストシーズンでのドジャースのブルペン陣において、佐々木は最も信頼できる投手の一人として頭角を現した。その安定した存在感から、ロバーツ監督は彼を第一候補と位置付けている。連投のテストをクリアした今、四半世紀ぶりの連覇にあと4勝に迫るドジャースは、佐々木にさらに頼ることだろう。
ロバーツ監督の信頼は堅い。
「朗希に自信を持っている。彼を信頼している。才能を信じている。メンタルを信じている」