ジャイアンツの新監督に47歳ヴィテロ氏 プロコーチ経験なしの異例採用
2025.10.23 12:05 Thursday
22日(日本時間23日)、ジャイアンツがトニー・ヴィテロ氏を次期監督に迎える契約を締結した。2018年から強豪テネシー大学で監督を務めた47歳のヴィテロ氏は、プロでのコーチ経験なしで直接MLBの監督に転向した初の大学野球監督となる。
「この機会をいただき、大変光栄に思います。感謝の気持ちでいっぱいです。選手たちを率いてサンフランシスコ・ジャイアンツを代表できることに興奮しています。ジャイアンツのファンが誇りに思えるような文化を築くために、早く仕事に取り組みたいと思っています」、とヴィテロ氏は声明で述べた。
ヴィテロ氏がテネシー大学に着任する前、ボランティアーズ(テネシー大学の野球チームの通称)は10年以上もNCAAトーナメント(大学野球のプレーオフ)から遠ざかっていた。ヴィテロ氏はチームの立て直しに貢献し、2024年には初の男性カレッジワールドシリーズ優勝を果たした。それ以外も4年で3度の男性カレッジワールドシリーズ進出を果たすなど、テネシー大学は強豪に変貌。ヴィテロ氏が監督を務めた8シーズンの勝率は、なんと.722に上る。
ヴィテロ氏が新しく率いるジャイアンツには、テネシー大学のOBも多い。2025年ドラフト1巡目では同大から内野手ギャビン・キレンを指名。2023年ドラフト4巡目で指名した内野手マウイ・アフナも同大の出身だ。さらに今夏のトレードで獲得した2人の若手選手(外野手ドリュー・ギルバート、先発投手ブレイド・ティドウェル)は2022年の同大の看板選手として活躍し、それぞれ1巡目と2巡目で指名を受けた。
ヴィテロ氏はテネシー大学の監督に就任する前は各地の大学でコーチを歴任し、多くのメジャーリーガーを育成。2003年から2017年までミズーリ大学、テキサスクリスチャン大学、アーカンソー大学でコーチを務め、著名な教え子としては先発投手マックス・シャーザー、カイル・ギブソン、ギャレット・クローシェ、外野手アンドリュー・ベニンテンディらがいる。
ジャイアンツはボブ・メルビン監督を解任し、後任を探していた。4球団・20年にわたる監督歴で3度の最優秀監督賞に輝いた名将は、ジャイアンツで過ごした2シーズンで結果を残せなかった。レギュラーシーズンでは161勝163敗に終わり、ポストシーズン進出はなし。編成トップのバスター・ポージーは大鉈を振るい、契約期間を残して監督を解雇した。
後任の候補として、ジャイアンツで捕手としてプレーした経験のあるニック・ハンドリー(レンジャーズフロントで特別アシスタント)、ガーディアンズのアソシエイトマネージャーのクレイグ・アルバーナズ、米国代表の監督を務めるマーク・デローサ、そして先日エンゼルスの監督に就任したカート・スズキら、球界関係者あるいは元選手の名が挙がっていた。
しかし、ポージーはその中で最も異色の人材を採用。声明では「トニーは、今日の大学野球界で最も聡明で、革新的で、最も尊敬されるコーチの一人です。」、「候補者選びを通して、トニーのリーダーシップ、競争心、そして選手育成への献身が際立っていました。強く団結力のあるチームを築く彼の能力と、野球への情熱は、私たちの組織の価値観と完全に一致しています。ジャイアンツの未来に目を向ける中で、彼がもたらすエネルギーと方向性、そしてこれから作られるであろう思い出を楽しみにしています」と述べ、大学では情熱的な姿勢で選手を導き、育成してきたヴィテロ氏のスタイルを気に入ったようだ。
大学野球の名将から転身した監督といえば、現ブルワーズのパット・マーフィー監督だ。ただ、マーフィー監督はMLBのフロント職、マイナーの監督、MLBのベンチコーチなど、監督就任まで豊かなキャリアを積んでいた。
前例のない異色の採用は吉と出るだろうか。