第1戦で発揮されたブルージェイズの真骨頂 積極打法が奏功
2025.10.25 17:46 Saturday
【ブルージェイズ11-4ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月24日(日本時間25日)
まさにブルージェイズ打線の真骨頂が発揮された第1戦だった。ブルージェイズ打線はコンタクト力(バットをボールに当てる能力)と長打力の両方を兼ね備えている。長打力が重視され、三振を許容する風潮が強い現代野球において、長打と三振の少なさを両立させるのは至難の業だ。しかし、ブルージェイズはレギュラーシーズンではMLBベストの三振率(17.8%)を記録する一方、OPSでもMLB3位、総得点MLB4位と、パワーも発揮できる。
そして、もう一つの特徴が「積極打法」だ。ブルージェイズ打線はポストシーズンにおいて、ストライクに積極的にスイングを仕掛ける。ストライクゾーンに投じられた投球に対するスイング率71.0%は、今ポストシーズンに進出したチームの中でダントツ(唯一の70%超え)であり、2015年以降でポストシーズンに進出した全124チーム中でも歴代15位に入る。
ただ積極的にスイングを仕掛けられても、長打を打たれないならば投手としてはリスクが低い。しかし、ブルージェイズ打線は今ポストシーズンでダントツの長打率.523(2位のドジャースでも.430)を誇る。ブルージェイズ打線に対する投手は、打席を有利に進める上でストライクが必要だが、ストライクゾーンに投げ込むのはリスクが伴い、そこにジレンマを抱える羽目になる。
今ポストシーズンではほぼ無敵の快投を続けていたブレイク・スネルでさえ、そのジレンマに囚われた。スネルはこれまでのポストシーズンで3先発をこなし、21回でわずか2失点、28三振と絶好調。これまでの3先発では初球ストライク率65.8%と、積極的にストライクを投じてきた。
しかし、ブルージェイズ打線と対したワールドシリーズ第1戦では、初球ストライク率は45.4%にとどまった。スネルはストライク先行の投球ができず、真綿で首を締められるようにブルージェイズ打線に追い詰められていった。
初回、スネルは2四球と単打で3人の走者を許し、3死目を奪うまで29球を要した。二回も2安打を打たれ、三回も安打を許しながら併殺で無失点で抑えた。初回は5打者との対戦のすべてでボール球を投じ、序盤ではストライクを満足に投げられていなかった。
しかし、四回は不用意な初球の入りが裏目に出た。無死1塁でバーショに甘く入った初球のフォーシームを完ぺきに捉えられ、同点2ランを浴びた。
五回も先頭に安打を許しながら、なんとか併殺で切り抜けたが、その時点で球数は84球。決して調子が良いとは言えず、交代も考えられる状況だったが、ドジャースはブルペン陣に不安を抱える。切り札アレックス・ベシアがワールドシリーズを欠場し、信頼が置ける投手は佐々木朗希のみという状況では、六回までエースを引っ張らざるを得なかった。
しかし、スネルはついに六回に決壊。先頭から四球、単打を与え、続くバーショには8球粘られた末に死球を当てた。デーブ・ロバーツ監督はここでスネル降板を決断し、2番手シーアンを投入する。
試合後にスネルはこう語った。
「ストライクを投げれば、彼ら(ブルージェイズ打線)は振ってくるだろう・・・。四球も出していたし、打者有利のカウントを作ってしまっていた。もっと良いスポットに投げないといけなかった」
ストライクを投げれば積極的にスイングを仕掛けられ、しかも長打もありえる。そのプレッシャーがエースの制球を乱していた。
2番手のシーアンはスネルとは異なり、ストライク先行の投球を実践した。しかし、それでも結果は変わらなかった。
シーアンは4打者との対戦ですべて初球をストライクゾーンに投じた。しかし、代わりばなのクレメントには初球ファウルのあと、2球目でタイムリーを献上。続く代打ルークスは初球で空振りを奪ったものの、9球粘られて押し出し四球を与えた。さらに9番ヒメネスとの対戦でも、1、2球目はファウルで追い込んだものの、追い込んでからのチェンジアップをタイムリーにされた。1番スプリンガーにも初球を打たれたが、これがショートゴロとなり、シーアンはこの日最初にして最後のアウトを奪った。
そもそも無死満塁の場面で本来は先発投手のシーアンを投入した判断は、決して間違ってはいない。レギュラーシーズン中、シーアンの奪三振率30.6%はMLB上位9%、空振り率32.9%は上位7%に入る高水準。制球が不安定なブレイク・トライネンより、ローリスクな選択肢だったと言える。
今はブルージェイズ打線を称えるほかないだろう。MLBで最も三振が少ないブルージェイズ打線は、奪三振力が高いシーアンをものともせず打ち砕いた。早めのカウントで仕掛けて打者不利のカウントとなっても、決して三振せずに打球をインプレーにする。そのコンタクト力が鮮やかな攻勢を生み出した。
勝ち越し打を放ったクレメントは、ヤンキースを下した地区シリーズ後に、ブルージェイズの積極打法についてこう語っていた。
「僕たちは1打数無安打に終わるくらいなら、1ストライク0ボールになっても構わない。もし相手にやられたとしても、スイングを仕掛けて残りの打席を全力で戦う。でもこれは考え方の問題だ。ど真ん中に来た初球を振ってアウトになっても仕方ない。これが僕の考え方だ。ただ、外角に2球分外れたボールを振って内野ゴロに倒れたら、誰にとっても良いことにならない」
まさにその言葉通りのアプローチをブルージェイズの打者は実践していた。
第1戦で猛攻を浴びたドジャースは、山本由伸が先発する第2戦では是が非でも連敗を避けたいだろう。
しかし、スネルのように慎重に入れば球数がかさみ、シーアンのようにストライク先行でも悪い結果に終わり、ドジャースは苦い記憶を植え付けられたはずだ。MLB屈指の強力打線に対して、あすの山本由伸はどう対抗するだろうか。
