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前夜は同僚宅のソファで寝泊まり 居候バージャーがWS史上初の代打満塁弾

2025.10.25 18:14 Saturday

【ブルージェイズ11-4ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月24日(日本時間25日)

 アディソン・バージャーがワールドシリーズ史上初の代打満塁弾を放ち、トロントの本拠地ロジャースセンターを揺らした。

 ブルージェイズがこの勢いを維持し、1992年と1993年の連覇以来となる世界一を成し遂げれば、名場面が次々と生まれるはずだ。その時が来れば、ワールドシリーズ第1戦で9得点を挙げた六回の攻撃は、「ザ・イニング」と呼ばれるようになるかもしない。

 バージャーの満塁弾は、ブルージェイズの下位打線が総力を挙げて3点を勝ち越し、さらにアレハンドロ・カークの2ランでダメ押しに成功する間に生まれた。その本塁打は32年前にジョー・カーターが連覇を決めるサヨナラ本塁打を放った時以来の熱狂の渦をロジャースセンターに巻き起こした。バージャーにとっては野球人生最大の瞬間だった。目を大きく見開いてベースを回り、球場にいた全員と同じように衝撃を受けていた。

「足の感覚さえなかった。まるで意識を失っているようだった」

素晴らしい瞬間、素晴らしいイニング。ブルージェイズはワールドシリーズ制覇にあと3勝に迫った。

 「マックス(・シャーザー)と話していたんだけど、基本的にすべてを経験してきた彼でさえ、ワールドシリーズであんなイニングを経験したことがないと言っていたよ。本当にクールな光景だった」と、ジョン・シュナイダー監督は話した。

 ワールドシリーズの歴史上、ブルージェイズが六回に挙げた9得点を上回る1イニングの攻勢は、1968年のタイガースと1929年のフィラデルフィア・アスレチックスのみ(両チームとも10得点)。また、ブルージェイズはこの試合で11得点を挙げ、第1戦史上4位タイの記録を成し遂げた。

 「あれはまさにうちの攻撃の真髄だ。チーム全体の努力の賜物で、全員が自分の仕事をこなしているだけだ」

ポストシーズンで打率.435と驚異の打棒を振るっているアーニー・クレメントは語った。

 デービス・シュナイダーは、ブルージェイズのファンが「2025年ワールドシリーズ第1戦でアディソン・バージャーが満塁本塁打を打った時、誰の代打だったんだ?」と尋ねる数年後のクイズのネタになるかもしれない。シュナイダー監督は左腕スネルが先発したこの日、バージャーをベンチスタートさせ、代打のタイミングを窺っていた。

 ここで驚くべきことは、ドジャースが左腕のアンソニー・バンダを投入したことだ。バージャーは今季右腕から20本塁打を放ったのに対し、左腕からはわずか1本塁打と左腕には相性が悪い。しかし、次の打順には右の強打者ブラディミール・ゲレーロJr.が控えていた。

 シュナイダー監督の狙いはバージャーを代打に送ることでドジャースに左腕を起用させ、ゲレーロJr.により有利なマッチアップを仕組むことだった。左腕に対して相性が悪いバージャーに対しては、シュナイダー監督は犠牲フライを期待していた。本塁打を打つのは、次のゲレーロJr.と想定していた。

「・・・われわれが期待していた以上の結果だったね」と、シュナイダー監督は語った。

 この六回の猛攻はすべてを覆した。それまでの5回の攻防は、まさに予想通りの一進一退の展開。ブルージェイズはギリギリで粘り、強豪ドジャース相手に反撃の機会を狙っていた。しかし、打者一巡の猛攻によって、一気に試合をものにした。

 バージャーの本塁打の背景には、さらに衝撃的なことがある。バージャーはこの第1戦の前夜、なんとチームメートのデービス・シュナイダーの家のソファで寝泊まりしていたのだ。

 居候を泊めたシュナイダーはこう語った。

「バージャーはマイルズ(・ストロー)と泊まっていたんだけど、昨晩は僕の家に泊まっていたよ。僕の彼女もいたんだけど、彼は『君たちと一緒に寝ていい?』と言っていたんだ。だから僕は『ダメ。ソファで寝て』って。広げられるタイプのソファで、一晩中ギシギシ鳴ってたよ。真夜中に彼がそこで寝ているのを見て、めっちゃおかしかった。彼は頭がおかしいんだけど、面白い人なんだよね」

 2025年のブルージェイズの姿を象徴する出来事とも言えるだろう。気骨のあるベテラン、スーパースター、そしてまるで両親が同じ週末に出かけたかのような生活を送っている20代の若者たちがいる。それでも、なぜかうまく機能している。これは、どんなに努力しても作り出せないクラブハウスのケミストリーだ。自然に、そして意外な形で生まれる必要がある。今季のほとんど全てが、自然に、そして意外な形で起こった。そう思えてくる。

 バージャーのスパイクは今、野球殿堂入りすることになった。彼はワールドシリーズ史上唯一の代打満塁本塁打という、唯一無二の瞬間を刻み、この街にとって忘れられない瞬間を刻んだ。この街にとって忘れられないチームとなったブルージェイズは、あと3勝に迫っている。


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