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平凡な控え選手クレメントはどのようにブルージェイズのカルトヒーローになったか

2025.10.28 11:28 Tuesday

 アーニー・クレメントは球界の新たな奇人であり、カナダのカルト・ヒーローとなった。そして他のチームもようやくその存在に気づき始めた。

 カナダのチームでプレーするのにこれほど適したアメリカ人選手がいるだろうか。トロントはジョン・マクドナルド、ケビン・ピラー、ライアン・ゴーインズといった素晴らしい守備力を持ち、毎試合ユニフォームを汚す貪欲な控え選手たちを称賛してきた街だ。今、ブルージェイズファンはまた新しい選手を見つけた。しかし、この選手は打撃もできる。しかも予備のバットを入れる濾過ーかあはホッケースティックが突き出ている。

 ブルージェイズがワールドシリーズ進出を果たした快進撃の間、ロジャースセンターには「アーニー!アーニー!アーニー!」のチャントが響き渡った。訪れたメディアは困惑した。ブルージェイズファンは「ブラディ(ブラディミール・ゲレーロJr.)」と叫んでいるわけではない。

「信じられない。ラインナップを見ると、ブラディミールは注目度も高くて、タイトルも獲得している。でも、アーニーも打率は同じなんだ。驚くべきことだ。彼は自分のプレーをやっている。感情を表に出さないという素晴らしい仕事をしているが、それでも(ア・リーグ優勝決定シリーズ)第7戦の後でもその様子が見て取れた。彼は本当に気を遣っている。本当に気を遣っているんだ」と、ジョン・シュナイダー監督は語る。

 クレメントは今ポストシーズン13試合で打率.429を記録し、三振はわずか2度。下位打線からブルージェイズの攻撃を牽引している。

 クレメントはこれまで壮絶な道のりを歩んできた。ブルージェイズが2023年にクレメントとマイナー契約を結んだのは、スプリングトレーニング終盤のことだった。クレメントはそれまで2017年ドラフトの4巡目で指名されたクリーブランドに6年間在籍。しかし、クリーブランドでは優先順位の高い選手ではなく、有望株とも扱われていなかった。そしてアスレチックスに移籍したが、最下位だったアスレチックスからも解雇された。そしてブルージェイズにたどり着いた。

 クレメントはブルージェイズとそのファンにとって、本当に大切な存在だ。なぜなら、ブルージェイズとそのファンがクレメントにとって大きな意味を持つからだ。

 「この3年間、球団が私にこのような機会を与えてくれたことは、私にとってこの上なく大きな意味を持つ。せめて僕ができるのは、ポストシーズンで良いプレーをして、チームの優勝に貢献すること。本当に球団の人たちに感謝している。彼らは素晴らしい人間ばかりだ。少しでも恩返しができればと思っている」と、クレメントは言う。

 クレメントは気取らないところを持ち合わせており、ルーズで気楽な性格だ。クラブハウスで一番のムードメーカーにも、冷徹で真面目な人間にもなり得る。

 「アーニー・クレメントの一番の魅力は、野球のスキル以外で、とにかく何にも気にしないところだ。どんな状況でも、彼はプレーする準備ができている。シアトルでの第5戦後に彼が言ったように、彼のメンタリティは選手たちを刺激すると思う」と、ジョン・シュナイダー監督は語る。

 ALCS第5戦の敗戦後(エウヘニオ・スアレスの満塁弾で試合の流れが変わった痛恨の敗戦)、クレメントはロッカールームでチームについてどう思うかと聞かれると、ロッカールームに深く腰掛けた。まるで朝食を注文するときのような口調で、チームの現状に満足していると説明した。「ブルージェイズにはチャンスがある。それだけで十分だ」とクレメント監督は肩をすくめながら言った。

 そして、クレメントは正しかった。

 「クレメントはとにかく恐れ知らずで、それが大好きなんだ。それが彼のメンタリティだ。彼はブルーカラーだよ。首を突っ込んで、仕事をやり遂げる」と、シュナイダー監督。

 クレメントは今季、三塁とユーティリティの両部門でゴールドグラブにノミネートされた。走攻守の貢献度を測るfWARでは優秀な3.2をマーク。もはや控え選手ではない。ブルージェイズがワールドシリーズにいる最大の理由の一つだ。

 ただ、クレメントは注目されることなんて気にしない。またあの苦笑いを浮かべて肩をすくめるだろう。まあいいか、と。

 「素晴らしいことだと思うよ。これまでのキャリアで見過ごされがちだったから、今に始まったことじゃない。だから、全く気にしていない。目立たないところで、本当に素晴らしいプレーをすれば、みんなそれに気付いてくれる。でも、まあ、目立たないほうがいいけどね。素晴らしいことだと思うし、慣れているからね」と、クレメントは言う。

 しかし、もう隠れる術はない。ワールドシリーズで彼の名前が叫ばれ、かつてのマイナーリーグの控え選手は「アーニー!アーニー!アーニー!」と声援を受けている。

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