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歴史的快投の新人イェサベージ ベテランも舌を巻く22歳がブルージェイズをあと1勝に導く

2025.10.30 16:42 Thursday

【ドジャース1-6ブルージェイズ】ロサンゼルス/ドジャースタジアム、10月29日(日本時間30日)

 ブルージェイズのベテラン選手たちがトレイ・イェサベージの名前を聞いたのは、2025シーズンもかなり進んだ頃だった。イェサベージのような立ち位置の選手は、通常は球団の将来を担う存在と考えられる。そして、目先の勝利を目指すMLBチームにとってそういった選手は、トレードデッドラインで重要な選手を獲得するための対価に過ぎない。

 しかし、ワールドシリーズ制覇まであと1勝に迫るア・リーグ王者は、今やトレイ・イェサベージの名前を間違いなく知っている。そして球界で最も資金力のあるチームも、そしてその他のチームも。

 ブルージェイズはワールドシリーズ第5戦に、イェサベージの快投で勝利。打線もデービス・シュナイダーとブラディミール・ゲレーロJr.の先頭からの2者連続本塁打などもあり、ドジャースを6-1で破り、世界一に王手をかけた。

 1Aでシーズンをスタートし、9月15日に3Aバッファローからブルージェイズに昇格。22歳のイェサベージは今やチームを優勝の瀬戸際へと導いている。そのシンデレラストーリーの最新にして最高の場面について、
「ハリウッドでもこれほど素晴らしいものは作れなかっただろうね」と、イェサベージは語る。

 最大7戦のシリーズで2勝2敗のタイとなった場合、第5戦の勝者は68回中48回(67.6%)でシリーズを制している。現行のフォーマットでは、アウェイで第5戦に勝利して3勝2敗のリードを奪い、その後ホームに戻って第6戦以降に挑んだチームは、27回中20回(74.1%)シリーズを制している。

 イェサベージは7イニングを投げ、わずか1失点、12三振(ワールドシリーズにおける新人記録)、無四球と好投。ワールドシリーズにおいて、これほど多くの三振を奪いながら無四球だったのはイェサベージが初めてであり、しかもMLB8戦目の先発、そしてポストシーズン初のアウェイでの先発で達成した。

 「イェサベージは本当に落ち着いている。彼にとって、この瞬間は大したことではない。あの若さで信じられないくらいだ。だから、彼を指導し、育ててくれた人に敬意を表するよ。プレッシャーの中でも本当に、本当に冷静なんだ。信じられないよ」と、ベテラン右腕のクリス・バシットは語った。

 しかし、ブルージェイズが過去2日間でドジャースに対して成し遂げたことも信じられないことだ。

 ブルージェイズは第3戦、延長18回の壮絶な死闘に破れ、疲弊した。それは球団を壊滅させるほどの敗北であり、隅っこで丸まって親指をしゃぶりたくなるような苦痛だった。

 しかし、第4、5戦は見事に立ち直り、ドジャースを圧倒。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、「気分は良くない。ブルージェイズの選手たちがヒットを打ったり、球団を前進させたりする方法を模索しているのは明らかだ。だが、われわれはそれをうまくやっていない」と語る。

 第4、5戦では、ブルージェイズの球団の顔であるゲレーロが2本塁打を放ち、投手陣はドジャース打線を.161(62打数10安打)に抑え、観客を完全に静まり返らせた。

 特に第5戦では、あっという間に主導権を握った。多くのファンがロサンゼルスならではの渋滞に巻き込まれ、まだドジャースタジアムに入れてもいない時間帯に、2本の本塁打をドジャース先発のブレイク・スネルに浴びせた。

 負傷したジョージ・スプリンガーに代わってリードオフを務めたシュナイダーとゲレーロJr.は、内角のフォーシームを同じようなスイングでとらえた。わずか3球、本塁打が2本、ブルージェイズは2-0とリードした。

 「ブルージェイズ打線は僕を攻略できたわけではなかったと思う。試合の初球、内角高めの直球。98マイル(約157.7キロ)出ていた。不運だった。そしてそれからブラッド(ゲレーロJr.)。あれはただの悪いボールだった。それ以降は順調に投げられたと思う」と、スネルは振り返った。

 しかし、本当にただの不運だったのか。シュナイダーはブルージェイズはスネルの直球を待っていたと言う。

「第1戦では直球がなかなか定まらなかったけど、それでもチェンジアップは効果的に投げていた。だから直球でストライクを狙ってから、そこから緩急をつけてくると予想した」

 これは他に類を見ない奇襲だった。ワールドシリーズで試合開始直後に連続ホームランを打ったことはかつてなかったからだ(ポストシーズンの試合開始直後に連続ホームランを打ったのは、他に2002年のアスレチックスが地区シリーズで放ったものだけである)。ブルージェイズが試合開始直後に連続本塁打を打ったことも、あるいはドジャースが打たれたことも、そしてスネルが打たれたこともなかった。

 援護をもらったイェサベージは好調だった。第1戦ではスプリットの感覚をつかむのに苦労したが、今回は問題なかった。三回にはポストシーズン男として知られるキケ・ヘルナンデスに本塁打を浴びたが、それでも試合を支配し続けた。ポストシーズンで新人が複数回の登板で2桁三振を記録したのは史上初、ワールドシリーズで5イニング目までに2桁三振を奪ったのはこの試合を観戦していたドジャースのレジェンド、サンディ・コーファックス以来2人目だった。

 「早めにゾーンに投げて、自分のカウントにして、追い込んでから好きなように投げるだけだ」と、イェサベージは語る。

 イェサベージのチームメートの中には、殿堂入り間違いなしのキャリアを送る選手もいるが、このパフォーマンスに畏敬の念を抱いていた。

 「メジャーリーグに来た時のことを思い出すよ。2008年のシーズンには、ワールドシリーズに投げるなんて想像もできなかった。本当にクレイジーな話だったよ…イェサベージは本物だ。今の彼は誰とでも戦える」と、マックス・シャーザーは語る。

 そんなイェサベージにはある楽しみがある。メジャー昇格がシーズン終盤だったため、給料はこれまで多くはなかった。しかし、ポストシーズンに進出したことで、配当金をもらえることになった。

「プレーオフの配当金はいつ入ってくるにせよ嬉しいものだろうね」と、イェサベージ。

 チャンピオンリングも良いものだろう。


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