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ベッツ不振の原因はスイングにあり? コンパクトな振りが大振りに

2025.10.31 13:02 Friday

 ワールドシリーズを5試合終えた時点で、ドジャースの打線は打率.201、出塁率.296、長打率.354と低迷している。第3戦で9度出塁した大谷翔平でさえ、他の4試合では2安打2四球と苦しんでいる。デーブ・ロバーツ監督は打線を組み換え、第5戦ではウィル・スミスを2番に上げ、ポストシーズン史上最低レベルの打撃成績を収めているセンターのアンディ・パヘスをスタメン落ちさせた。

 これらは妥当な選択ではある。しかし、結局のところ、チーム次第のスター選手の一人が打てていなければ、できることは限られている。3度の世界一、8度のオールスター選出、そして前代未聞のコンバートを成功させたムーキー・ベッツが、本来の姿を見失っている。ドジャースの1、2番を担ってきたベッツは第5戦で4年ぶりに3番に降格。ただ、それでも現状は変わらず、4打数無安打に終わった。

「とにかくずっと酷い。努力不足が原因だったらよかったのに、そうじゃないんだ」と、ベッツは胸中を明かした。

 ベッツは5試合でわずか3安打、すべて単打で、長打は1本だけだ。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ(NLCS)ではわずか2安打、フィリーズとの地区シリーズ(NLDS)では4安打だったが、それとは対照的だ。ワイルドカードシリーズ(WCS)の2試合ではレッズ相手に6安打を放ったが、それは今から1ヶ月前のことだ。第6戦が行われる10月31日(日本時間11月1日)には、彼が最後に本塁打を打ってから6週間が経つことになる。今ポストシーズン、各チームがベッツを打席に立たせるために大谷の故意四球を積極的に選んでいるのは、まさにこのためだ。

 ベッツの不調の理由を明確に言うのは難しい。それは、2025年シーズン全体の見通しを明確に把握するのが難しかったのとほぼ同じだ。シーズン序盤は低調で、最初の100試合でOPSが.674だったものの、7月に予定外の休養を取って「リセット」し、その後、最後の50試合でOPSが.846と好調に転じた(シーズン序盤には、深刻なウイルス感染症で開幕を棒に振ったこと、5月に左足の指を骨折したこと、そして7月下旬に義父が他界したことでチームを離れたことなど、個人的な問題があったことは指摘できる。色々な意味で長い1年だった)。

 ベッツのシーズン全体の調子を把握するのは難しいとしても、スイングの調子を見る方がずっと簡単だ。少なくとも、そこには興味深い調査対象がある。ワールドシリーズでのベッツのスイングは、ポストシーズン序盤と比べてもかなり異なっているのだ。

 ベッツのスイングデータは、ワールドシリーズでのスイングは長くなっており、一発狙いのようなスイングになっていることを示している。

 ワールドシリーズでのスイングのアタックアングルは13度と、シーズン中の9度、そしてMLB平均の10度よりかなり上がっている。ボールに当たる瞬間のバットの(垂直)角度を示すアタックアングルの値が大きいということは、より打球を打ち上げる志向のスイングになっていることを示している。事実、13度という数字は、マット・ウォールナー(ツインズ)やサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)といった「三振か本塁打か」の傾向が強いパワーヒッターに近い。

 さらにボールに対するバットの(水平)角度を示し、引っ張り/流し傾向の強さが分かるアタックディレクションも激変。NLCS以前は7度から4度だったのに対し、ワールドシリーズでは12度と、かなり極端になっている。MLB平均は0度にもかかわらず、MLB屈指のプルヒッターとして知られるイーサック・パレイデス(アストロズ)の15度に次ぐ数字となっている。

 ベッツのスイングは打球を打ち上げ、引っ張ることを狙ったような大振りとなってしまっているが、実際に本塁打にはつながっていない。ただ、三振にもつながっていない。ほとんどがポップフライと弱い外野フライにつながっている。ベッツのフライ数は10度を数え、ワールドシリーズではトミー・エドマンと並んで最多記録だ。弱いフライは幸運でヒットになることも、相手守備の乱れを誘うこともほとんどない。よって、ベッツの打率は.143に低迷するのも頷ける。

 ただ、ベッツのスイングスピードは驚くべきことにわずかに上がっている。これは、パワーを生み出そうと強振しているか、それともスイングスピードのピーク時にボールを前で捌こうとしているからなのかは分からない。しかし、いずれにせよ、ベッツのスイングスピードはこの不振を紐解く鍵ではない。

 「ベッツは(自分に)プレッシャーをかけていると思う。少し不安な気持ちがあるのがわかると思う」と、ロバーツ監督は言う。ドジャース打線全体の苦戦を考えれば、自分にプレッシャーをかけてしまうのも理解できる。

 チームの打撃コーチ、そして元チームメートのJD・マルティネスに指導を受けたベッツが、後半戦から調子を上げたのはスイングの変更によるものだった。

 その要因は、引っ張った本塁打に頼らず、コンパクトなスイングでラインドライブを打っていたことだ。確かに完ぺきな打球が本塁打になったこともあったが、それは本質ではない。今ワールドシリーズでベッツが見せているのは、改善された後半戦のスイングではない。上位10%のスイングスピードと打ち上げるスイングを両立させるのは難しいのだ。

 皮肉なことに、これは昨今のMLBでよく耳にする、打者がスイングスピードを向上させ、打球を打ち上げて本塁打を狙う話とは正反対だ。このトレンドに則るには最低限のスイングスピードが必要だ。ただ、ベッツはもともとスイングスピードが速いタイプではない。

 「少しはメカニクスの問題もあるし、いい投球をされているのもある。ベッツは一生懸命頑張っている。今はとにかく、打席に立って4、5打席いい打席に立つことが大事だ」とロバーツは言った。

 ここで忘れてはならないのは、ベッツを抑えた投手側の功績だ。ブルージェイズの投手陣、特に若手のトレイ・イェサベージを称賛しないのは職務怠慢と言えるで。22歳の右腕は6打席でベッツを無安打、1四球に抑えた。

 ブルージェイズ投手陣のアプローチも効いている。ベッツに対する104球の中で、オフスピードピッチ(チェンジアップ、スプリットを含む球種分類)はわずか1球。イェサベージやケビン・ゴーズマンといったスプリットを武器とする投手とも対戦しているにもかかわらず、これは10月にベッツが対戦した4つのチームの中で、圧倒的に低い割合だ。

 もちろん、ただ不振のタイミングが巡っているだけということも考えられる。どんな偉大な打者にも不振の時期はある。たとえば、ドジャースはワールドシリーズでOPS.651と苦しんでいるが、レギュラーシーズンでも5試合のスパンでOPS.651未満と苦しんだ時期は22度もあった。

 ドジャースはまだ逆転を狙える。第2戦と第3戦で同じ連勝を収めたドジャースに、再び連勝を求めるのは無理な話ではない。まだ終わりではない。ただ、ベッツにはこれまで以上に多くのことが求められる。しかし、それは今のようなパワー重視のスイングではないかもしれない。

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