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いよいよ発表 新人王、最優秀監督賞、サイ・ヤング賞、MVPの注目ポイント

2025.11.10 13:19 Monday

 MLBの表彰シーズンは今週も続いていく。今週は全米野球記者協会(BBWAA)の投票で決まる主要4賞の受賞者が発表される予定だ。

 今週、MLBネットワークで発表されるアワードの予定は以下の通り(日付は日本時間。すべて午前9時から)。

11/11(火)新人王
11/12(水)最優秀監督賞
11/13(木)サイ・ヤング賞
11/14(金)MVP

 なお、日本時間14日午前11時からはMLBネットワークで「MLBアワード」の様子が放送される。「MLBアワード」では、オールMLBのファーストチームとセカンドチームなど、数多くのアワードの受賞者が発表される予定だ。

 BBWAAの主要4賞は、すでにファイナリスト3名が発表されている。ファイナリスト3名は投票結果の1~3位に入った3名を表している(注:投票はポストシーズン開始前に終了しており、ファイナリスト3名を対象に再投票が行われるわけではない)。

 受賞者が予想しやすい賞もあるが、混戦となっている賞や、そのほかにも興味深いストーリーがいくつかある。ここでは主要4賞のそれぞれについて、最大の注目ポイントをチェックしていこう。

【1】ア・リーグのMVP争いはどれくらい接戦になるのか

 いくつかの賞は受賞者がハッキリしており、ほかの賞にも最有力候補と目される選手がいる。しかし、今年のア・リーグMVPはそれらに当てはまらない。ヤンキースの右翼手アーロン・ジャッジとマリナーズの捕手カル・ローリーがガーディアンズの三塁手ホセ・ラミレスとともにファイナリストとなっているが、ジャッジとローリーはシーズンを通して、ほぼ互角の争いを繰り広げてきた。

 9月にMLB.comのマーク・フェインサンドが各球団の幹部に「どちらがMVPに相応しいか」を尋ねたが、意見はほぼ真っ二つに分かれた。MLB.comのスタッフたちはシーズンを通してMVPの模擬投票を実施しており、最終投票ではジャッジがわずかに優勢だったが、シーズン中はジャッジとローリーを行ったり来たりしていた。

 どちらが受賞するかは、BBWAAの投票者30名(ア・リーグ15球団の担当記者から各球団2名ずつ)に委ねられた。今季再び歴代屈指の打撃成績を残したスラッガーと数々の記録を打ち立てた両打ちの捕手のどちらを選んでも間違いではない。ジャッジが受賞すればキャリア3度目、ローリーが受賞すればマリナーズでは2001年のイチロー以来となる。

 どちらが受賞するかだけではなく、どれくらい接戦になるかという点も注目される。BBWAAが現在の投票制度をスタートさせた1938年以降、10ポイント差以内で決着したMVP争いが14度あった。1979年のナ・リーグMVPはキース・ヘルナンデスとウィリー・スタージェルが獲得ポイント数で並び、同時受賞となっている。

【2】開幕前の本命がそのままサイ・ヤング賞を受賞するのか

 MLB.comでは毎年開幕前に様々な予想をしている。だが、開幕前の予想は裏切られることも多い。予想通りにならないのが野球というスポーツだ。しかし、時には予想通りの結果が生まれることもある。今年のサイ・ヤング賞争いは予想通りの結果となるかもしれない。

 シーズン開幕前、MLB.comのスタッフは主要4賞の受賞者を予想するアンケートを実施した。投票の結果、サイ・ヤング賞の本命に挙げられたのはタリック・スクーバル(タイガース)とポール・スキーンズ(パイレーツ)。ア・リーグでスクーバル、ナ・リーグでスキーンズの受賞を予想したライターも5人いた。それから7カ月が経過し、サイ・ヤング賞の受賞者がスクーバルとスキーンズ以外になることは考えにくい状況だ。スクーバルは多くの部門でサイ・ヤング賞を受賞した昨季よりもわずかに良い数字を残しており、リーグトップに立った部門もある。スキーンズは打線の援護がなく、10勝10敗に終わったものの、防御率(1.97)とFIP(2.36)でメジャートップの数字を残すなど、支配的な投球を続けた。

 ア・リーグではギャレット・クローシェ(レッドソックス)、ナ・リーグではクリストファー・サンチェス(フィリーズ)が対抗馬に挙がるが、スクーバルとスキーンズの名前が受賞者として呼ばれなければサプライズと言えるだろう。MLB.comのスタッフの予想を自画自賛するつもりはない。これは、とてつもなく大きな期待を背負った2人の投手がその期待に応える活躍を見せたというだけの話だ。

【3】同球団の新人コンビのワンツーフィニッシュは実現するか

 2025年シーズンの大半、アスレチックスは2009年のアンドリュー・ベイリー以来となる新人王輩出に向けて好位置につけていた。しかし、具体的にはどちらの選手が受賞することになるのだろうか。前半戦はジェイコブ・ウィルソンが圧倒的な最有力候補と目されており、オールスターゲームにはア・リーグのスタメン遊撃手として選出された。しかし、4月23日にメジャーデビューしたニック・カーツが猛打を発揮。7月25日に1試合4本塁打の大暴れを見せる頃には「最有力候補」の座をウィルソンから奪っていた。

 カーツは117試合に出場し、打率.290、36本塁打、出塁率.383、長打率.619の好成績をマーク。すでに一塁手部門でア・リーグのシルバースラッガー賞を受賞しており、ア・リーグ新人王に輝くのもほぼ間違いないだろう。よって、焦点となるのは、ロマン・アンソニー(レッドソックス)もファイナリスト入りしているア・リーグの新人王争いにおいて、アスレチックスの2人がワンツーフィニッシュを果たすかどうかだ。アンソニーはOPS.859と印象的な活躍を見せたが、デビューが6月と遅く、9月には負傷でシーズンを終えたため、71試合しか出場していない。一方、ウィルソンは正遊撃手として125試合に出場し、打率.311、OPS.800をマークした。

 もし新人王投票のワンツーフィニッシュが実現すれば史上9組目。野手2人のコンビに限定すれば、1989年カブスのジェレーム・ウォルトンとドワイト・スミス以来、実に36年ぶりの快挙となる。

【4】名将フランコーナは歴代最多タイとなる4度目の受賞なるか

 テリー・フランコーナはクリーブランドで11シーズン指揮を執ったあと、健康上の理由で勇退。2024年シーズンは2012年以来初めて監督を務めず、フィリーズで初めて監督を務めた1997年以降、フランコーナがメジャー球団の指揮を執らなかったのはわずか5シーズン目(2001~03年、2012年、2024年)だった。

 しかし、フランコーナが傍観者のままでいる状況は長く続かなかった。わずか1シーズンの休養を経て、レッズからのオファーを受け、フィリーズ、レッドソックス、クリーブランドに続いて自身4球団目の監督に就任。レッズは2014年以降、わずか1度しかポストシーズンに出場しておらず、2020年を最後に4年連続でポストシーズンの舞台から遠ざかっていた。フランコーナは就任1年から見事な手腕を発揮し、前年に77勝85敗だったチームを83勝79敗でワイルドカード獲得に導いた。

 フランコーナはクリーブランド時代に3度(2013年、2016年、2022年)の最優秀監督賞に輝いており、もし今年受賞すれば、ボビー・コックス(殿堂入り)、トニー・ラルーサ(殿堂入り)、バック・ショウォルターと並んで歴代最多タイの4度目の受賞となる。ただし、ライバルも強力で、メジャー最高勝率を記録したブルワーズのパット・マーフィー監督とナ・リーグ東地区を制したフィリーズのロブ・トムソン監督がフランコーナとともにファイナリストとなっている。

 ちなみに、昨年はマーフィーと、フランコーナの後任としてガーディアンズの監督に就任したスティーブン・ボートがともに就任1年目で受賞。両者とも今年もファイナリスト入りしており、2年連続受賞の可能性を残している。


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