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2026年度殿堂入り投票の注目ポイント7選 最有力候補はベルトランか

2025.11.18 12:27 Tuesday

 2026年度の全米野球記者協会(BBWAA)によるアメリカ野球殿堂入り投票の候補者が発表された。

 投票対象となった選手は27人で、そのうち15人は前年度から継続、残り12人が2026年度からの新たな候補者となっている。殿堂入り投票の結果は2026年1月20日(日本時間21日)にMLBネットワークの番組内で発表予定。ここでは7つの注目ポイントを紹介していこう。

【1】カルロス・ベルトランは殿堂入りできるか

 一言で表すなら、答えは「イエス」だ。

 ベルトランの得票率は過去2度の投票で46.5%から70.3%まで急上昇した。2025年度の投票では殿堂入りに惜しくも19票足りなかったが、4度目の挑戦となる2026年度の投票では、有力な新規候補がいないため、殿堂入りスピーチの準備を始めてもいいだろう。

 1999年ア・リーグ新人王のベルトランは、9度のオールスター選出、3度のゴールドグラブ賞、2度のシルバースラッガー賞、2013年ロベルト・クレメンテ賞、2004年アストロズ時代のポストシーズンでの大活躍など、輝かしいキャリアを過ごした。その中で最も偉大な記録は、メジャー史上わずか5人しか達成していない通算400本塁打&300盗塁だろう。バリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲス、ウィリー・メイズ、アンドレ・ドーソン、そしてベルトランだけが達成している大記録だ。

【2】アンドリュー・ジョーンズにも殿堂入りのチャンス到来

 2020年度から2023年度にかけて、ジョーンズの得票率は約3倍に増加した(19.4%から58.1%)。この急上昇により、2025年度までには殿堂入りを果たすと予想する者もいたが、得票率の上昇ペースは鈍化。2024年度は3.5%アップ、2025年度は4.6%アップで、66.2%となった。

 歴代屈指の守備力を誇る中堅手で、通算434本塁打を記録しているジョーンズは、今回が9度目の挑戦となる。ベルトラン同様、いずれは殿堂入りを果たすことになるだろう。ただし、今回殿堂入りするためには、得票率の10%近い上昇が必要であり、確実とは言えない。

【3】アンディ・ペティットとチェイス・アトリーは得票率アップを目指す

 ペティットが殿堂入り候補となった最初の6年間は波乱万丈だった。2019年度から2024年度にかけて、得票率は9%から17%の間で推移。2023年度は17.0%だったが、2024年度は13.5%に落ち込んだ。しかし、7度目の挑戦となった2025年度に息を吹き返し、前年度の2倍以上となる27.9%を記録。2025年度の投票において、前年度から引き続き候補者となった14人の中で最大の増加幅(14.4%アップ)だった。

 ヤンキース時代に5度のワールドシリーズ制覇を経験したペティットは、レギュラーシーズンで通算256勝を挙げ、ポストシーズンでの通算19勝は歴代最多。BBWAAの投票対象となる期間はあと3年しか残っていないため、殿堂入りに必要な得票率75%をクリアできるかどうかは時間との戦いになるが、7度目の挑戦が終わった時点の状況としてはラリー・ウォーカーに似ている。ウォーカーは7度目の挑戦で得票率21.9%だったが、最終的にはラストチャンスの10度目の挑戦で殿堂入りを果たした。

 ペティットに比べると、アトリーにはまだまだ時間がある。2度目の挑戦となった2025年度は前年度から11%アップの39.8%を記録。4度のシルバースラッガー賞に輝き、全盛期には球界最高の二塁手と呼ばれたアトリーは、殿堂入りの基準となる75%に到達するまでもう少し時間がかかりそうだが、順調に進んでいると言えそうだ。

【4】フェリックス・ヘルナンデスは2度目の挑戦で得票率大幅アップなるか

 ペティットと比較すると、「キング・フェリックス」が初めての殿堂入り投票を終えた時点の感触は悪くないはずだ。マリナーズ一筋で15年間プレーしたヘルナンデスは、2025年度の殿堂入り投票で得票率20.6%を記録。低いように思われるが、たとえばマイク・ムシーナは2014年度に20.3%からスタートし、2019年度に殿堂入りを決めた。また、ビリー・ワグナーの殿堂入りへの道のりは、2015年度の得票率10.5%からスタートした。初年度の20.6%は悪くない数字だ。

 ヘルナンデスは最優秀防御率2度、オールスター選出6度の実績を誇り、2010年にア・リーグのサイ・ヤング賞を受賞。2012年には完全試合を達成した。これらの事実は、ヘルナンデスが殿堂入りに相応しい選手であることを示している。2026年度の新規候補に有力選手がいないことも追い風となるだろう。今回の殿堂入り投票で、ヘルナンデスは一気に得票率をアップさせる可能性を秘めている。

【5】新規候補12人の筆頭はコール・ハメルズ

 ハメルズは、同じエース左腕として有資格1年目で殿堂入りを果たしたCC・サバシアと同じ道のりを歩むことを期待しているかもしれない。しかし、ハメルズはサバシアほどの成績を残していない。現役生活がサバシアほど長くなかったからだ。サバシアはハメルズより138試合多く先発し、約900イニング多く投げている。それでも、ハメルズはメジャーの舞台で素晴らしい活躍を見せた。

 オールスターに4度選出されたハメルズは、全盛期と呼べる2007~16年の10年間で2082イニングを投げ、ERA+126を記録(平均より26%優秀)。通算防御率3.43は、ワイルドカード時代(1995年以降)に2000イニング以上を投げた先発投手の中で13位タイの数字だ。通算2560三振を奪い、フィリーズ時代の10年間で奪った1844三振は、スティーブン・カールトン(殿堂入り)、アーロン・ノラ(現役)、ロビン・ロバーツ(殿堂入り)に次いで球団史上4位となっている。

 2008年のポストシーズンではリーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズのMVPをダブル受賞。2014年のブレーブス戦で継投ノーヒッターを達成し、翌2015年のカブス戦では単独でノーヒッターを成し遂げた。2015年途中にレンジャーズへトレードされたため、結果的にはフィリーズでの最終登板でノーヒッターを達成したことになった。

【6】新規候補でほかに注目すべき選手は?

 新規候補でもう1人、注目すべき選手を挙げるとすれば、ライアン・ブラウンだろう。ブルワーズの球団史上最多本塁打記録保持者(352本)である。ブルワーズでの最初の6年間は素晴らしく、202本塁打を量産。1900年以降の近代野球において、最初の6シーズンで202本塁打はフランク・ロビンソンと並び、7位タイの数字だ。同期間中、打率.313、出塁率.374、長打率.568の好成績を残し、オールスター選出5度。2007年にナ・リーグ新人王を受賞すると、2011年にはナ・リーグMVPに輝いた。

 しかし、2011年と2012年にパフォーマンス向上薬の使用疑惑が浮上し、素晴らしい成績の信ぴょう性が疑問視されるようになった。2013年には薬物規定違反で65試合の出場停止処分を受けることに。14年間のキャリアでOPS+134(平均より34%優秀)、通算1963安打、1154打点をマークしたが、出場停止処分を受けたという事実はキャリアの汚点となった。

 ロイヤルズの看板選手として活躍したアレックス・ゴードンも今回から殿堂入り投票の候補者となった。2005年ドラフト全体2位指名でプロ入りしたゴードンは、球団史上7位の通算1643安打を記録し、ベースボール・リファレンス版のWAR(34.8)でも球団歴代トップ10に名を連ねている。抜群の守備力で鳴らした選手であり、ゴールドグラブ賞を8度、プラチナグラブ賞も2度受賞した。

 メジャー史上最高の韓国人選手である秋信守(チュ・シンス)や強打者エドウィン・エンカーナシオンも候補者となった。秋信守は15年間で通算出塁率.377を記録。エンカーナシオンは16年間で通算424本塁打を放った。

 ほかには、メジャーで15年間プレーし、2019年のワールドシリーズでヒーローとなったハウィー・ケンドリック、主にオリオールズで活躍したニック・マーケイキス、ワールドシリーズ制覇2度のハンター・ペンス、オールスター選出2度の左腕ジオ・ゴンザレス、オールスター選出3度のマット・ケンプらがいる。

【7】マニー・ラミレスのラストチャンス

 数字だけを見るならば、マニーは何年も前に殿堂入りしているはずだ。同世代で最も恐れられた打者の1人であるラミレスは「500本塁打クラブ」の一員であり、通算長打1122本は歴代18位にランクイン。12度のオールスター選出、9度のシルバースラッガー賞のほか、レッドソックス時代に2度のワールドシリーズ制覇を経験した。

 しかし、ラミレスの殿堂入りに向けた道のりは、複数回にわたる薬物規定違反によって複雑化しており、それはBBWAAの殿堂入り投票における得票率にも反映されている。2025年度は34.3%を記録し、9年間で最も高い得票率だったが、殿堂入りの基準である75%には遠く及ばない。

 今回が10度目の挑戦で、ラミレスにとってラストチャンスとなる。BBWAAの投票による殿堂入りは難しく、時代委員会の投票による殿堂入りのほうが可能性は高いだろう。


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