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シースと契約合意のブルージェイズ 次は強打者の確保を目指す

2025.11.27 11:56 Thursday

 ワールドシリーズ第7戦で惜しくも敗れ、夢のようなシーズンを終えたばかりのブルージェイズが再び球界の主役になろうとしている。

 26日(日本時間27日)、ブルージェイズがフリーエージェント(FA)の先発右腕ディラン・シースと7年総額2億1000万ドル(約315億円)の大型契約で合意したことが明らかになった。これは投手市場の動きを先取りし、今オフの投手市場の相場を早々に確定させる、大胆かつ大きな動きだ。まだ球団からの正式発表は行われていないが、今後の補強の行方を大きく左右するものであり、球界でも有数の強力ローテーションを形成することが可能になった。

 もちろん、ブルージェイズの補強はまだ終わっていない。まだオフシーズンは始まったばかりであり、まだ11月だ。次はどう動くのだろうか。

【1】カイル・タッカーかボー・ビシェット、あるいはその両方を獲得する可能性は?

 ブルージェイズは強打者の獲得を狙っている。望むならばどの選手の争奪戦にも参加できるくらいの財政的な柔軟性を有しているからだ。

 シースを獲得したことにより、もともと低かったタッカーとビシェットを「両獲り」する可能性はさらに低くなった。しかし、だからといって、FA市場でトップクラスの打者を獲得するチャンスがなくなったわけではない。

 大まかに言えば、ブルージェイズは今年ワールドシリーズ進出を果たす前から、メジャーでも上位の資金力を持つチームだった。そして、ここ数カ月のブルージェイズの勢いは、経済学の学位を持っていなくとも理解できるだろう。これまで夢見ることしかできなかったカナダ市場の可能性が、突如として現実のものとなり始めたのだ。人口4000万人ほどのカナダで平均1090万人もの視聴者数を誇るブルージェイズが資金に困窮することは考えにくい。

 シースとの大型契約により、トレードで強打者の獲得を狙う可能性も出てきた。リーズナブルな契約を結んでいるケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)はブルージェイズにとって魅力的なターゲットとなるだろう。しかし、こうした選択肢を検討する前に、口座残高を確認するような段階にはまだ至っていない。つまり、ブルージェイズにはまだ補強資金がある。ビシェットとの再契約の可能性も含め、FA市場で強打者を狙うことになりそうだ。

【2】ほかにはどのようなニーズがあるのか?

 強打者を1人獲得する必要性に加え、論理的にはブルペン補強が次のステップであり、ウィンターミーティングに向けてリリーフ投手市場での動きを活性化させていくだろう。昨オフは右腕ジミー・ガルシアを2年契約で呼び戻した。今オフはさらにレベルの高い投手の獲得に動くことが予想される。

 ブルペンに関しては、選手育成が地味ながらも大きな役割を果たしている。これまでのブルージェイズは、それほど多額でないにしても、ブルペン補強に資金を投じる必要があった。それは自前のファーム組織から十分な戦力を輩出できていなかったからだ。現在は先発ローテーションの一角を担うトレイ・イェサベージを筆頭に、ブレイドン・フィッシャー、メイソン・フルハーティらがメジャーの戦力として台頭。これにより、戦力不足をカバーするためにベテラン投手を獲得する必要はなくなった。

 その結果、ブルージェイズは「戦力不足をカバーするため」ではなく「戦力アップのため」に資金を投入できる。ジェフ・ホフマンがクローザー、ルイス・バーランドがセットアッパーを務めているが、セランソニー・ドミンゲスがFAとなったため、少なくともその穴埋めが必要。早々のシース獲得は大型補強への強い意欲の表れであり、ホフマンをドミンゲスの穴埋めとしてセットアッパーに回し、実績のある大物クローザーの獲得に動くことも十分に考えられる。

【3】先発ローテーションにさらなる動きはあるのか?

 もし明日シーズンが開幕するとしたら、ブルージェイズは以下のような強力ローテーションを組むことができる。

ディラン・シース
ケビン・ゴーズマン
トレイ・イェサベージ
シェーン・ビーバー
ホゼ・ベリオス

 6番手以降にはエリック・ラウアーやボーデン・フランシスが控えており、有望株のゲージ・スタニファーとリッキー・ティードマンもいる。さらに、アダム・マッコやラザロ・エストラーダにもスプリングトレーニングでアピールのチャンスが与えられるだろう。先発として起用できる投手の選択肢は多い。

 ここで最大の不確定要素となるのがベリオスだ。今季はメジャー10年目で初めて負傷者リスト入りし、右肘炎症でシーズンを終えた。球速が低下しており、これは今後に向けた「赤信号」となる可能性もある。10年近くにわたり、球界で最も安定した先発投手の1人であるベリオスを戦力構想から外すのは難しいが、今季ついに不安が露呈したのは事実だ。

 ブルージェイズが現在のローテーション5枚から誰かをトレードで放出する可能性は低いと思われるが、ベリオスには来季終了後のオプトアウト権があることを覚えておかなければならない。来季の成績次第では、ベリオスが契約の最終2年を破棄してFA市場に出ていく可能性がある。ゴーズマンとビーバーも1年後にFAとなるため、ブルージェイズは1年後のオフ、先発投手3人を同時に失う可能性もあるのだ。

 よって、ブルージェイズが先発投手をもう1人獲得し、先発補強に失敗したチームにベリオス(またはほかの先発投手)をトレードするという可能性は完全には排除できない。とはいえ、わざわざライバル球団を助けるようなことはしないだろう。シース獲得で先発補強を終え、強打者やブルペンの補強にシフトしていく可能性が高そうだ。


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