今後シーズン出塁率5割を達成する打者が現れる可能性はあるのか?
2025.11.30 10:47 Sunday
年が経つごとに、4割打者の夢は消えつつある。
2026年シーズンは、最後の4割打者(1941年テッド・ウィリアムスの打率.406)が誕生してから85年目のシーズンとなる。もちろん、それ以降も4割打者が誕生するチャンスはあったが、球界に大きな変化が起こらない限り、新たな4割打者が生まれることは考えにくい。
しかし、別の記録はどうだろうか。アスレチックスの「マネーボール」が大きな話題となった2000年代初頭以降、打率よりも出塁率が重要であるという認識が一般的になっている。出塁率4割は確かに素晴らしい数字だが、歴史的な記録とは言えない。では、出塁率5割はどうか。
エクスパンション時代(1961年以降)において、出塁率5割を達成したのはバリー・ボンズただ1人。しかもボンズは2001~04年に4年連続で達成し、2004年には史上最高の.609をマークした。しかし、ボンズが引退してから長い時間が経過しており、出塁率5割は20年以上達成されていない。「出塁率5割」は「打率4割」と比較して、現実的な目標と言えるのだろうか。
ここでは出塁率5割の歴史を振り返るとともに、今後新たに出塁率5割が達成される可能性を考察し、その候補となり得る選手について見ていく。
◆稀有な偉業
1900年以降の近代野球において、出塁率5割を達成した選手はボンズ以外に5人いた。5人の選手により合計11度達成されている。
ベーブ・ルース(5度)
1920年(.532)、1921年(.512)、1923年(.545)、1924年(.513)、1926年(.516)
テッド・ウィリアムス(3度)
1941年(.551)、1954年(.513)、1957年(.526)
ミッキー・マントル(1度)
1957年(.512)
ロジャース・ホーンスビー(1度)
1924年(.507)
ジョン・マグロー(1度)
1900年(.505)
上記5人全員がアメリカ野球殿堂入りを果たしている(マグローは1937年に監督として殿堂入りしたが、選手としても17年間の素晴らしいキャリアを過ごしている)。いずれにせよ、これまで出塁率5割を達成したのは真の一流選手だけだ。
出塁率5割が達成されたシーズンのうち、最も低い打率は.328である。2025年シーズンに当てはめると、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)の.331に次ぐメジャー2位に相当する。最も高い打率は最後の4割打者であるウィリアムスの.406ではなく、ホーンスビーの.424だ。前述の通り、現在の球界で4割打者が誕生する可能性はゼロに等しい。
出塁率5割を達成した選手は、もれなく高打率(中央値は.372)を残していただけでなく、四球率も極めて高かった。もちろん、ボンズは例外だ。ボンズは2001~04年に記録した四球率でメジャー歴代トップ4を独占しており、2004年には617打席で232四球と徹底的に勝負を避けられた(四球率37.6%)。
ボンズ以外に四球率が26%を超えた打者はいない。ボンズを除くと、1954年のウィリアムスの25.9%が最高である(打率.345、出塁率.513)。出塁率5割を達成するためには、打席で相当な辛抱強さが必要となる。出塁率5割を達成した選手のうち、四球率が19%より低かったのはホーンスビーしかいない(打率.424で四球率13.9%)。
ボンズも含め、出塁率5割が達成された15度の平均四球率は驚異の24.3%に達する。ちなみに、2025年シーズンのメジャートップはジャッジの18.3%だった。最後に20%を超えたのは2022年のフアン・ソト(20.3%)。ソトはその前年にも22.2%を記録しており、これが2004年のボンズ以降では最高値である。
故意四球(敬遠)の数も重要な要素となる。ボンズは2004年に120度も敬遠されるなど、史上唯一の「シーズンに46度以上敬遠された打者」となっている。しかし、敬遠が出塁率を高める有効な手段である一方、出塁率の重要性が広く認識されたことや、ユニバーサルDHの導入で投手が打席に立たなくなったことが影響し、敬遠の割合は2012年と比較して50%以上減少している。今季はジャッジが36度敬遠されたが、これはアルバート・プホルスが2010年に38度敬遠されて以来の記録だった。
まとめると、出塁率5割を達成するためには、2025年のメジャートップよりも2分以上高い打率を残すだけでなく、敬遠の恩恵を受けずに5%多く四球を選ぶ必要がある。要するに「幸運を祈るしかない」ということだ。
◆出塁率5割に近づいた打者は?
出塁率5割を達成するのは困難だが、不可能ではないかもしれない。近年でも出塁率.450以上を記録した選手は少なからず存在する。2005年以降では9度記録された(短縮シーズンの2020年を除く)。
チッパー・ジョーンズ(2008年/.470)
フアン・ソト(2021年/.465)
アルバート・プホルス(2008年/.462)
ブライス・ハーパー(2015年/.460)
マイク・トラウト(2018年/.460)
ジョーイ・ボットー(2015年/.459)
アーロン・ジャッジ(2024年/.458)
アーロン・ジャッジ(2025年/.457)
ジョーイ・ボットー(2017年/.454)
短縮シーズンの2020年も含めると、直近20年間で出塁率5割に最も近づいたのは2020年のソト(.490)だ。ナショナルズで47試合に出場し、打率.351、四球率20.9%を記録した。逆に言えば、打率.350と四球率20%をクリアしても出塁率5割には届かなかったのだ。
では、ボンズ以来となる出塁率5割を達成する可能性がある現役選手はいるのか。ここでは4人の有力候補を紹介しよう。
アーロン・ジャッジ(ヤンキース)
まずはジャッジから始めるべきだろう。直近2年間、出塁率5割に最も近い選手だったからだ。今季はメジャー断トツの.457を記録。2位のジョージ・スプリンガー(.399)に大差をつけた。ジャッジは2024年にも.458をマークし、通算出塁率.413を誇る。驚異的なパワーを持つだけでなく、出塁能力の高さもエリートレベルだ。
しかし、ジャッジほどの実力を持つ打者であっても、出塁率5割を達成するのは至難の業だろう。2年連続MVPに輝いた2024年と2025年は近年でトップクラスの打撃成績を残したシーズンだったが、それでも出塁率5割には遠く及ばなかった。打撃技術の高さと選球眼の良さを兼ね備えており、現役選手の中では出塁率5割を達成する最有力候補と言えるが、実際に達成される可能性は低いと言わざるを得ない。
フアン・ソト(メッツ)
実は、ソトはジャッジよりも出塁率5割に近づいたシーズンがある(短縮シーズンの2020年も含めると2度)。2021年に打率.313を記録し、メジャー最多の145四球を選んだため、出塁率は.465に達した。だが、出塁率5割を達成するためには、これを再現するだけでなく、さらに数字を伸ばす必要がある。
メッツと15年7億6500万ドル(約1147億5000万円)の超大型契約を結んだ今季、ソトは打率.263に終わったが、リーグトップの出塁率.396を記録した。パワーと驚異的な選球眼を兼ね備えるソトは、他の追随を許さないダイナミックな打者だが、出塁率5割を達成するためには、才能をフルに発揮する、もしくは限界を突破していくような活躍が必要になるだろう。
大谷翔平(ドジャース)
今のところ、大谷はジャッジやソトほど出塁率5割に近づいていない。自己最高の出塁率はエンゼルスで2度目のMVPを受賞した2023年に記録した.412である。直近2年間では.390と.392を記録しているが、一流打者の中では空振り率やチェイス率(ボール球に手を出す割合)が比較的高く、それが出塁率を制限する要素となっている。今季の四球率15.0%はメジャー上位3%の好成績であるものの、この四球率のまま出塁率5割を達成するためには、4割近い打率が必要となる。
しかし、大谷は今年のワールドシリーズ第3戦で4度も敬遠されるほど相手チームに恐れられた打者だ(ポストシーズンでの1試合4敬遠は史上初)。誰も大谷が1試合9出塁を続けられるとは思っていないが、もし相手チームに「勝負したくない」と思わせるほどの好調をキープすれば、大谷にとって特別なシーズンが到来する可能性はある。そして、たとえ出塁率が5割に届かなかったとしても、どんなプレーも見逃せない選手であることに変わりはない。
ロマン・アンソニー(レッドソックス)
ジャッジ、ソト、大谷は定番の選択肢であり、最後はダークホース的な候補を選んで締めくくろう。今季のメジャーデビュー時点で球界ナンバーワン有望株だったアンソニーは「大穴」と呼ぶべき候補ではないかもしれないが、将来的な殿堂入りがほぼ確実な現役のスーパースターたちと同列に並べるのはやや大胆だと言える。
今季のアンソニーはレッドソックスで303打席に立ち、打率.292、出塁率.396、四球率13.2%と印象的なルーキーシーズンを過ごした。ボール球に手を出さず、打球速度はかなり速く、特に速球に強かった。出塁率5割を達成するためには、打率を上げ、三振率(27.7%)を下げ、四球率をかなり上げていく必要があるが、もしそれを実現できるだけの才能を持つ若手選手がいるとすれば、それはアンソニーかもしれない。
