今オフFA市場で最も希少な存在? 右打ちの外野手が歴史的レベルで減少
2025.12.7 14:12 Sunday
このオフシーズン、外野手が欲しいならば、優秀な選手と契約すべきだ。FA市場最大の大物と目されるカイル・タッカー、高評価を受けるであろうコディ・ベリンジャー、主にDHの選手ではあるもののカイル・シュワーバーもいる。ヤンキースは既に34本塁打を放ったトレント・グリシャムにクオリファイング・オファーを提示し、チームに引き止めた。
ここで挙げた4人の選手には共通点がある。それは左打ちということだ。右打ちの外野手を探しているなら、別の選択肢に目を向けなければいけない。ロブ・レフスナイダー、ミゲル・アンドゥハー、ハリソン・ベイダーらがFA市場の中で最高の右打ちの外野手だ。レフスナイダーとアンドゥハーは左腕に強く、ベイダーは守備が上手い。それぞれに魅力的な点があるが、これらの選手はスター選手ではないどころか、それに近い選手でもない。強豪チームであればレギュラーでもなく、プラトーンやベンチを任されるタイプの選手だろう。
それ以外の右打ちの外野手は、アンドリュー・マカッチェン、トミー・ファム、スターリング・マルテ、クリス・テイラーといった30代後半に差し掛かるかつてのスター選手が揃う。あるいはレーン・トーマスのような不振とケガに苦しんだ選手もいる。
今オフのFA市場は明らかに右打ちの外野手の層が薄い。そして、右打ちの外野手はFA市場だけではなく、リーグ全体で希少な存在になっている。今や右打ちの外野手を探すのは、誇張なくかつてないほど困難なのだ。
今オフ初め、オリオールズは保有期間残り1年のテイラー・ウォードを獲得するため、保有期間4年の先発右腕グレイソン・ロドリゲスを放出した。この一見すれば衝撃的なトレードも、右打ちの外野手不在の背景から少しは説明がつくかもしれない。今後も同様の動きが起きる可能性はある。
右打ちの外野手がかつてないほど減ってしまったのはどういうことだろうか?
2025年、400打席以上に立ち、平均以上の打撃成績(OPS+100を超えた)右打ちの外野手は16人いた。アーロン・ジャッジ、ロナルド・アクーニャJr.、フリオ・ロドリゲス、バイロン・バクストンといったスター選手に加え、ベイダー、ウォード、ランディ・アロザレーナといったベテラン選手、そしてジャクソン・チョーリオ、アンディ・パヘス、ワイアット・ラングフォードといった若手選手も活躍した。
打てる右打ちの外野手がレギュラーで16人。ほとんど2チームの1人の計算になる。これは2024年より1人少ない。また、過去10年間と比べても大幅に少ない。さらに深刻なことに、この数字は過去60年以上の中で最低だ。
フルシーズンを通して平均以上の打撃成績を残した右打ちの外野手がこれほど少なかったのは、1960年(15人)に遡る。しかし、1960年は翌年にエクスパンションが行われる前、MLBが16球団だった最後のシーズンだ。その後、1960年代後半に24球団にまでリーグは拡張され、現行の30球団体制に至っている。いかに今、右打ちの外野手が少ないかが分かる。
割合で見れば、2025年に200打席以上に立ったすべての選手の中で、打てる右打ちの外野手はわずか16人に1人だった。これは1947年以降、最低の割合だ。1956年には6人に1人、そして2010年ですら8人に1人の割合だった。かつてはウィリー・メイズ、ハンク・アーロン、フランク・ロビンソン、ロベルト・クレメントなど、右打ちのスター外野手がいた。今はそうではない。一体何が起こっているのか?
一つの原因は、単に「レギュラーの右打ちの外野手が減っている」ということだ。打撃成績の条件を取り除いても、レギュラーの右打ちの外野手が26人しかいなかったのは1966年以来の出来事だ(前述の通り1966年も今より球団数は少ない)。
さらに言えば、そもそも右打者が減っている。左打者の数が減っていた5年前とは大きな違いだ。2023年に内野の守備シフトが制限されても、安打数や打率に大きな影響を与えることはなかった。しかし、多くの球団が左打者をラインナップに組み入れるようになった。
しかし、主にそれは生産性に関係している。
右打ちの外野手が記録したwRC+(得点を生み出す能力を測る指標。簡単に言えば、高性能のOPS+)はちょうど100だった。wRC+のような加重を取り入れた指標では100を平均としているため、これは「右打ちの外野手の攻撃力は平均レベル」ということを意味する。
攻撃力が平均レベルならば心配する必要はないかもしれないが、外野手は平均以上の攻撃力を求められるポジションだ。このwRC+100という今季の数値は、1920年に「飛ぶボールの時代(ライブボール・エラ)」が戻ってきたから、3番目に低い。そして、歴代最低のランキングを見てみれば、直近の2023、2024年シーズンもランクインしており、戦争中でスター選手が不在だった1940年代半ばのシーズンも含まれることが分かる。
1920年以降、右打ちの外野手の打撃成績が低かったシーズンランキング
ワースト1位:1997年(wRC+97)
2位:2024年(wRC+99)
3位:2025年、1934年、1944年(wRC+100)
4位:2023年、1942年、1946年(wRC+101)
2025年の右打ちの外野手のOPSは、遊撃手にも劣っていた(OPS.723対.718)。2006年には、右打ちの外野手のOPSは遊撃手より63ポイントも高かった。
たとえば、メッツは今季、右打ちの外野手がわずか3本の本塁打しか打っていない。マルテが1本、タイロン・テイラーが2本だ。メッツが左打ちの外野手(フアン・ソト、ブランドン・ニモら)を重用したことも関係しているが、これは2017年のロッキーズの2本以来、球界最小だ。
カージナルスも同様だ。カージナルスの右打ちの外野手は打率.200、出塁率.263、長打率.287という成績に終わった。OPS.550は、データが手に入る1969年以降では史上最低だった(これは唯一の右打ちの外野手でレギュラーだったジョーダン・ウォーカーの不振の影響とはいえ、それでも低い)。また、ガーディアンズは全ポジションにおいて200打席以上に立った右打者が1人(ガブリエル・アリアス)しかいなかった。これは1900年以降で2度目の珍記録だ。
一方、レッドソックス、ツインズ、カージナルス、ダイヤモンドバックスなど、左打ちの外野手を多く抱える球団もいる。しかし、それらのチームが左打ちの外野手をトレードするのは想像以上に難しいかもしれない。一方で、右打ちの外野手を必要とするチーム(メッツ、ガーディアンズ、ロイヤルズ、レッズなど)は、オリオールズがしたような大胆なトレードをしなければいけないかもしれない。
そうなると、テオスカー・ヘルナンデス(ドジャース)、ルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)、ジェイク・マイヤーズ(アストロズ)、あるいはバイロン・バクストン(ツインズ)が噂に上っている通りトレードされれば、想像以上に関心を集めるかもしれない。もしストーブリーグが本当に需要と供給を反映しているならば、パワーのある右打ちの外野手の供給は著しく不足していることになる。
