大谷翔平はいかに最強打者になったのか? 成長をデータで分析
2025.12.26 13:52 Friday
大谷翔平は球場でこれまで誰も見たことのないようなことをやっている。
読者の皆さんにとっては当たり前のことかもしれないが、近年の大谷の活躍を振り返るのに悪い時期というのはない。この二刀流の天才は3年連続でMVPに輝き、そのうち2回はドジャース時代に受賞。また、大谷はロサンゼルス・ドジャースのワールドシリーズ連覇にも貢献した。
ドジャースに入団1年目、大谷は「50-50(50本塁打50盗塁)」の新記録を打ち立てた。そして今季、リーグ優勝を決めたポストシーズンの試合では、打っては3本塁打を放ち、投げては6回無失点、10三振の前人未到のパフォーマンスを見せた。ワールドシリーズでは1試合に4長打、そして9度の出塁を記録した。
大谷の成功の明白な理由は誰もが知っている。2024年以降、大谷はどの打者よりも多くのボールをバレルゾーン(理想的な打球速度と打球角度の組み合わせ)に打ち込み、同期間における盗塁数(79)はMLB4位であり、2025年にはかつてないほどの好調ぶりでマウンドに復帰した。しかし、もし可能なら、大谷に関してあまり報道されていないのは、過去の弱点をどのように克服し、真のスーパースターへと成長したかということだろう。
大谷の成功の秘訣のうち、特に打者としての活躍に注目して、過小評価されている点をいくつか見てみよう。
どの球種も大谷に対して安全ではない
大谷はエンゼルスでプレーした最初の3シーズン、直球に強い打者だった。直球に対しては長打率.586を記録し、556打席で36本塁打を放った。しかし、変化球(ブレーキングボールやオフスピードボール)に対しては弱く、長打率.396、本塁打は11本にとどまった。大谷はエンゼルスで2021年にブレイクし、自身初のMVP受賞という快挙を成し遂げた。このシーズンを境に、あらゆる球種を力強く打ち分ける打者として成熟の兆しが見え始めた。直球、変化球、そして緩急を問わず、その強さはエンゼルスでの最終シーズンとなった2023年以降、さらに強烈なものとなっている。
大谷の球種別長打率(2021年以降)
2021年:対直球.630 / 直球以外.557
2022年:対直球.582 / 直球以外.460
2023年:対直球.783 / 直球以外.558
2024年:対直球.577 / 直球以外.714
2025年:対直球.648 / t
ジャイアンツ:ボー・ビシェット
ジャイアンツは過去4シーズン、毎年79-81勝を挙げているが、勝率5割を超えた(プレーオフに出場した)シーズンはわずか1度しかない。三塁手マット・チャップマン、遊撃手ウィリー・アダメス、一塁手ラファエル・デバースを獲得したにもかかわらず、ジャイアンツはスター選手の獲得を切望している。タッカーやFA市場でトップの先発投手も選択肢に入るだろうが、ビシェットはジャイアンツの弱点である二塁を埋め、スター揃いの内野陣を完成させるだろう。ビシェットのコンタクト・ラインドライブ重視の打撃スタイルは、広大なオラクルパークでは本塁打が減るかもしれないが、多くの安打を生み出すだろう。
メッツ:コディ・ベリンジャー
ベリンジャーがヤンキース、あるいはドジャースに復帰する可能性は十分に考えられる。しかし、ベリンジャーの持つ強みは、ピート・アロンソ、ジェフ・マクニール、ブランドン・ニモという3人の柱を失ったメッツのロースター(出場選手登録)にとって理想的な組み合わせと言えるだろう。ベリンジャーは、メッツが現在空席となっている3つのポジション、つまりセンター、レフト、そして一塁をカバーしてくれるだろう。また、打線に強打者が加わるだけでなく、2025年には明らかに平均以下の守備を強化するというメッツの目標達成にも貢献するだろう。ヤンキースからもう一人のキーマンを獲得することも、悪くないボーナスとなるだろう。
オリオールズ:レンジャー・スアレス
オリオールズは今オフ、どの球団よりも積極補強を行っており、2025年の惨敗を過去のものにしようと躍起になている。ピート・アロンソとテイラー・ウォードを打線に加え、ライアン・ヘルスリーを守護神に迎え、大型トレードでシェーン・バズを獲得して、ウォードの対価として放出したグレイソン・ロドリゲスからのアップグレードを図った。しかし、先発ローテはケガに苦しんだ投手たちに依存しており、依然として手薄だ。スアレスはイニングを消化するタイプではなく(フルタイムの先発として4シーズンで平均147イニング)、そして典型的なエースのような投球をする投手でもない。しかし、スアレスは仕事をこなし、失点を抑えられる。ポストシーズンでも輝かしい実績を残した。
ヤンキース:今井達也
2020年シーズン後に田中将大が退団してから、ヤンキースは日本人投手がプレーしていないが、今そのブランクにピリオドを打つ良い機会だ。ヤンキースは先発投手の補強が切実に必要というわけではないかもしれないが、肘の手術から復帰した3人の投手(カルロス・ロドン、ゲリット・コール、クラーク・シュミット)に頼っているのも事実。さらにコールとシュミットはトミー・ジョン手術からのリハビリ中だ。キャム・シュリトラーとウィル・ウォーレンは2025年には共に新人で経験が浅く、ルイス・ギルは防御率は堅調だったものの、11回の先発登板で不安定なパフォーマンスだった。NPBから移籍してくる選手にはリスクがないわけではないが、NPBでコンスタントに素晴らしい成績を残している27歳の今井は、マックス・フリードの次の2番手として、ローテーション崩壊を防ぐ保険となる。
カブス:フランバー・バルデス
カブスがタッカーの引き止めや穴埋めをしないのならば、先発1・2番手級を補強する必要があるのは明らかだ。マシュー・ボイドは今季素晴らしい投球だったが、もうすぐ35歳になり、これまでもケガがちのキャリアを送ってきた。ケイド・ホートンはまだMLBで22先発の経験しかない。今永昇太は今季後半に痛恨の不振に陥った。ナ・リーグ中地区首位のブルワーズの牙城を崩すことができていないカブスにとって、この布陣は十分ではない。バルデスはFAの先発投手の中で、最も洗練された経歴(2022年から年間平均30先発、防御率3.21)を持ち、ダンズビー・スワンソンとニコ・ホーナーを筆頭に内野守備が強力なカブスと相性が良い、ゴロを打たせる投球スタイルが真骨頂だ。
マリナーズ:エウヘニオ・スアレス
マリナーズに最初に在籍した2022-23年ではファンとクラブハウスに愛されたスアレスだが、今夏にトレードで復帰してからは目立たないパフォーマンスに終わった(53試合でOPS.682)。それでも、マリナーズにはスアレスを引き留める感情以上の理由がある。現在、マリナーズの正三塁手と予想されているのはベン・ウィリアムソン(1年目の今季はOPS.604)であり、トッププロスペクトのコルト・エマーソンがシーズン途中から定位置争いに加わると見られている。マリナーズは左腕キラーのロブ・レフスナイダーと1年契約を結んだばかりだが、それでもスアレスを指名打者に回す余裕がある(マリナーズは来季の三塁手の成績予測がMLB22位、指名打者で同15位)。スアレスにはまだ強烈な打力が残されており、マリナーズの優勝の野望に貢献できるだろう。
パイレーツ:岡本和真
パイレーツはここ1週間、ブランドン・ラウとのトレードを成立させ、FAのライアン・オハーンとの契約に合意するなど、攻撃面の弱点を補うのに忙しくしてきた。だが、パイレーツがさらに多額の出費をいとわない限り、2025年にMLBで5番目に少ない失点数ながら最も得点数が低かったチームがそこで止まる理由はない。もしパイレーツがポール・スキーンズ率いる投手陣にチームを10月まで導く最高のチャンスを与えたいのであれば、2023年には41本塁打を放つなど、NPBで安定した打撃力を発揮した29歳の岡本を獲得するのは全く理にかなっている。岡本がもし打線の層を厚くしながら三塁を守ることができれば、ジャレッド・トリオロを便利屋として起用し続けられるだろう。また、オハーンとスペンサー・ホーウィッツの左打者コンビが担う一塁・指名打者の保険にもなる。
ロッキーズ:ルイス・アライズ
誰もが目にしたい光景だろう。クアーズフィールドは、単打を打つには断然最高の球場だ(二塁打でもほぼ最高だ)。そして、アライズは単打の達人だ。81試合を通して、その実力がどのように発揮されるかを見るのは、きっと面白いだろう。2025年、ロッキーズはエンゼルスに次ぐどのチームよりも三振を喫し、バットでボールを捉えられる選手を必要としている。そして、アライズは誰よりもその能力に優れている。コロラドの新しいフロントは、次世代の強力なロッキーズを築くことに注力する必要があるが(アライズはおそらくその時にはチームにいないでしょう)、アライズを短期契約で獲得し、うまくいけば将来有望株と交換するチャンスを与えても、それほど問題にはならないだろう。
ブレーブス:ザック・ギャレン
ブレーブスの先発ローテは健康面の問題から2025年に崩壊し、優勝候補だったチームが89勝から76勝に転落する大きな要因となった。ブレーブスは未だに強力なチームだが、先発ローテの面々は健康状態に問題を抱えていたり、MLBでの実績が限られていたり、不安定だ。2019年途中にMLBに定着し、高い安定感を発揮してきたギャレンは、魅力的な候補だ。ギャレンは今季、防御率が4.83に急上昇し、懸念材料を残したものの、終盤は比較的好調だった。近年、投手育成で成果を残しているブレーブスへの移籍は、双方にとってプラスに働くかもしれない。
フィリーズ:JT・リアルミュート
3月に35歳になり、衰えの兆候が顕著な捕手との契約にフィリーズが慎重な理由はいくつかある。しかし、リアルミュートをフィラデルフィアで8年目のシーズンに復帰させるには、さらに明確な理由がある。このチームは優勝のチャンスを活かすため、明らかに焦りを感じている。そして、リアルミュートがいない現状のフィリーズ捕手陣はリーグ最下位レベルと見込まれている。FA市場にはリアルミュート以上の選択肢はなく、トレードによる解決策は獲得が困難で、才能の面でもかなりの費用がかかるだろう。球界、そしてFA市場にも確実なことは何もないが、フィラデルフィアがリアルミュートを引き留めるのは時間の問題だろう。
パドレス:クリス・バシット
マイケル・キングを復帰させた後も、パドレスは2026年シーズンを乗り切るためのイニングを組み立てるだけでなく、プレーオフを争う方法を見つけ出さなければならない。シースがブルージェイズに流出し、昨夏にスティーブン・コレクとライアン・バーガートがロイヤルズにトレードされ、ダルビッシュ有も全休が決まっているため、2025年の先発した投手の約半分がいなくなってしまった。ジョー・マスグローブはトミー・ジョン手術から復帰に向けて準備を進めているが、高額のフリーエージェント獲得による解決策は考えにくいだろう。AJ・プレラーが大型トレードを成立させる可能性も否定できないが、バシットとの契約は代替案として非常に理にかなっている。 36歳の右腕は現時点では高額な契約を要求することはないだろうが、4年連続で170イニングの記録を達成し、 2018年以降は毎年ERA+でリーグ平均かそれ以上の成績を残している。バシットとの契約は良い保険になりそうだ。
レイズ:ルーカス・ジオリト
ジオリトは2021年に3年連続となるサイ・ヤング賞レースでの投票を得てから、波乱の4シーズンを送ってきた。右肘の手術のため2024年シーズンを全休したが、今季はレッドソックスでやや復活を遂げた。しかし、スタットキャストのデータによると防御率3.41はxERA(打球の質も加味して算出される期待防御率)5.00と、水面下で懸念される多くの数字を覆すものだった。とはいえ、レイズでキャリアを再生させたベテラン投手はジオリトが初めてではないだろうし、レイズはバズをトレードに出したことで先発ローテーションの補強が必要になる。頼みの綱のシェーン・マクラナハンも長く続いたケガの離脱期間からの復帰を目指す段階にある。レイズが今夏優勝争いに加われなくても、復活したジオリトはトレードデッドラインで注目される物件になるだろう。
その他
ガーディアンズ:ハリソン・ベイダー
ガーディアンズは常に外野手不足に喘いでいる。さらに今季のガーディアンズは歴史的水準で右打者がおらず、右打ちのベイダーは理想的な補強だ。
カージナルス:ザック・エフリン
再建に舵を切ったカージナルスだが、人手不足かつ若手が多い先発ローテに指南役・保険となり得るベテランは必要だ。
アスレチックス:タイラー・マーリー
マーリーは健康維持に苦労しているが、健康ならば戦力になる。アスレチックスが強力打線を誇る一方、先発ローテには疑問が残る。
タイガース:ジャスティン・バーランダー
キャリアの終盤における選手とチームの再会にわれわれは弱いが、バーランダーはまだ実力を維持している。タイガースの先発ローテにとって良い補強となるだろう。
