ボブ・ユーカー氏が90歳で死去 殿堂入りの実況アナウンサー
2025.1.17 09:30 Friday
日本時間1月17日、ブリュワーズは「Mr. Baseball」ことボブ・ユーカー氏が90歳で死去したことを発表した。現役時代に捕手としてプレーし、引退後は実況アナウンサーに転身したユーカー氏。MLB機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは「現役時代は控え捕手でしたが、ボブ・ユーカー氏は自虐的なスタイルで知られ、球界での70年間にわたるキャリアを通じて、球界で最も愛された人物の1人でした。彼のような野球人生は他に類を見ません」と述べ、ユーカー氏の死を悼んだ。
現役時代は通算打率.200の控え捕手に過ぎなかったユーカー氏だが、ブレーブス、カージナルス、フィリーズで合計6年間プレーし、カージナルス時代の1964年にはワールドシリーズ制覇を経験。現役時代からウィットに富んだコメントで人気を博し、いつしか「Mr. Baseball」の愛称がつけられた。
引退後、スカウトとしては活躍できなかったが、1971年にブリュワーズのラジオ中継チームに加わると本領発揮。ウィスコンシン州のアスリート殿堂入り、ラジオの殿堂入り、全米スポーツキャスター&スポーツライター協会の殿堂入りを果たし、2003年にはスポーツキャスターのアメリカ野球殿堂入りに相当する「フォード・C・フリック賞」を受賞した。このとき「通算打率.200の選手が殿堂入りした」と、ちょっとした話題になった。
試合の実況では “Get up, get up, get out of here … gone!” というフレーズが有名。2014年以降は徐々に遠征を減らし、最終的にはホームゲームのみの出演となったが、年齢を重ねても野球への愛情や情熱は衰えなかった。実況を担当した試合は昨年のワイルドカード・シリーズ第3戦が最後。地区シリーズ進出を目前にしながらも、守護神デビン・ウィリアムスが強打者ピート・アロンソに痛恨の一発を浴び、逆転負けを喫した試合だ。
実況アナウンサーとして40年目を迎えたあたりから、様々な病気との戦いが続いていたユーカー氏。それでも実況ブースに入り、ブリュワーズのファンに試合中継を届け続けた。前コミッショナーのバド・シーリグ氏は「野球のアナウンサーにはファンとのつながりがあるんだ。ハリー・ケリーもそうだし、ピッツバーグのボブ・プリンス、ニューヨークのメル・アレン、そして伝説のビン・スカリー。そしてボブ・ユーカーもそこにいる」。シーリグ氏の言葉通り、ユーカー氏は多くの野球関係者、そしてファンに愛された存在だった。