ロイヤルズがエース左腕レイガンズと新たに3年契約 契約を解説
2025.2.15 16:12 Saturday
日本時間2月15日、ロイヤルズがエース左腕コール・レイガンズと新たに3年1325万ドルの契約に合意したことを、米スポーツ専門チャンネル「ESPN」のジェフ・パッサン記者らが伝えた。レイガンズはまだFA権を取得しておらず、2028年までロイヤルズの保有下にあった。しかし、ロイヤルズは年俸調停期間の2年分を買い取り、赤丸急上昇中の左腕に昇給を与えた。
27歳のレイガンズは昨季、自身初のオールスター・ゲーム選出を果たし、サイ・ヤング賞投票4位に入るなど大ブレイク。32先発で223奪三振、防御率3.14の活躍を見せ、ポストシーズンでもチームをワイルドカード・シリーズ突破に導く好投を見せた。
ただ、レイガンズはメジャー経験が浅く、FA権の取得は2028年終了後と、まだ4年の保有期間を残している。ロイヤルズとしては何もせずともレイガンズを向こう4年キープできるが、なぜ新たに3年分の契約を結び直す必要があったのだろうか。
MLBの契約制度を理解する上で重要なのが、3年と6年の区切りだ。サービスタイム(登録日数)が6年分に達するまでは選手はFA権を取得できない。つまり、レイガンズは新たに3年契約を結び直したからといって、その契約終了時にFA権を取得できるわけではない。サービスタイムが6年分に達するまでは、保有権は球団の下にある。さらにFA権取得の前段階では、基本的にサービスタイム(登録日数)が3年分に満たなければ年俸調停権を得られず、年俸はリーグの最低年俸に制限される。現在、レイガンズのサービスタイムはほぼ2年分で、あと1年で年俸調停権を取得できる状況にあった。実は、この状況下での3年契約は双方にメリットがある。
ロイヤルズのメリットは、レイガンズの年俸の大幅な上昇を抑えられる点にある。レイガンズは今季こそ最低年俸を上回る100万ドルの昇給を得るが、調停1年目となる来季は450万ドル、調停2年目の2027年は750万ドル(今季か来季にサイ・ヤング賞を受賞した場合は800万ドル)の年俸がこの時点で確定する。これは決して安い金額ではなく、フロントスターターを務める若手先発としては適当な年俸だ。マリナーズのローガン・ギルバートは調停1年目に405万ドル、調停2年目に762万5000ドルの契約を結んでいる。
ただ、仮にレイガンズがサイ・ヤング賞級の投手に成長した場合、この契約はリーズナブルなものになる。例えば2021年にサイ・ヤング賞を受賞し、そのオフに初めて年俸調停権を得たコービン・バーンズは1年目に650万ドル、2年目に1001万ドルの年俸を得ている。昨季のサイ・ヤング賞に輝いたタリック・スクーバルも、調停2年目の今季は1015万ドルの年俸を得ることになっている。
一方のレイガンズ側のメリットは、故障や不振のリスクを回避して向こう3年の年俸を確定させられる点にある。レイガンズはこれまでの短いキャリアで2度のトミー・ジョン手術を受けるなど、故障に悩まされてきた投手だ。ここから故障してしまえば、調停で決まる年俸は今回のオファーよりも低くなってしまう可能性が高い。それらのリスクを排除して、向こう3年の稼ぎを確実なものとすることができる。ただ、このままエース級として成長し続けたとしても、調停最終年は契約に含まれていない。そこで大きな昇給、そしてFAになった後の大型契約を見込める余地も残している。