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ブルージェイズ逆転負け 主砲の一発で先制するも守備のミスが響く
【ヤンキース9-6ブルージェイズ】ニューヨーク/ヤンキースタジアム、10月7日(日本時間8日)
歴史に残るヘビー級の試合で、ブルージェイズはグローブを上げ続けることができなかった。
三回の攻撃が終了した時点で6-1とリードし、ヤンキースタジアムの観客は不満をぶつける対象をブルージェイズからヤンキースへ変えようとしていた。ブルージェイズは「自分たちの野球」をすればよかった。しかし、今年のポストシーズンで初めて、つけ入る隙を与えてしまった。
6-9で逆転負けを喫し、アメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)のスイープを逃したブルージェイズにとって、自滅と言っていい試合展開だった。アーロン・ジャッジが放った左翼ポール直撃の同点3ランは、確かにポストシーズンの歴史に残る印象的な一打だ。しかし、この同点弾を生んだのは、ブルージェイズの守備のミスだった。ミスが試合の行方を決定づけた。
試合序盤は完全にブルージェイズが主導権を握っていた。主砲ブラディミール・ゲレーロJr.の3試合連発となる2ラン本塁打で初回に先制。その直後、アイザイア・カイナー=ファレファのエラーでピンチが広がり、ジャンカルロ・スタントンのタイムリーで1点を返されたが、三回に4点を追加し、6-1とリードを広げた。ところが、四回1死走者なしの場面で決定的なミスが発生した。オースティン・ウェルズが高々と打ち上げたフライを三塁アディソン・バージャーが落球したのだ。
2死走者なしになるはずだったが、1死二塁のピンチとなり、トレント・グリシャムが四球を選んで「一発が出れば同点」の状況に。ここでジャッジが左翼ポール直撃の同点3ランを放ち、ゲレーロJr.から主役の座を奪い返した。
これだけでは終わらなかった。五回に2点を勝ち越されると、六回には右翼アンソニー・サンタンデールがコディ・ベリンジャーの打球を上手く処理できず、1死二、三塁のピンチに(記録は二塁打)。ここでベン・ライスに犠牲フライを許し、ヤンキースに9点目を奪われた。
少なくとも三回以降の試合展開は、今季のブルージェイズのものではなかった。トレード期限に加入した元サイ・ヤング賞投手のシェーン・ビーバーは三回途中5安打3失点(自責点2)で降板。守備のミスに比べれば、致命的なものではなかったが、先発の役割を果たせなかったのは事実だ。
2023年から2年連続でチームのゴールドグラブ賞に輝いた鉄壁の守備にミスが出たのも痛かった。アレハンドロ・カーク、アンドレス・ヒメネス、ドールトン・バーショが形成するセンターラインは球界屈指。ロースター全体を通して、堅実な守備を見せるチームだが、ポストシーズンでは奇妙な出来事が起こることもある。ヤンキースタジアムの雰囲気に呑まれたことは否定できないだろう。
ALDSの第2戦までブルージェイズは絶好調で合計23得点を挙げた。しかし、その勢いは第3戦で陰りを見せた感がある。第4戦、ヤンキースは驚異の新人右腕キャム・シュリットラーが控えており、ブルージェイズはブルペンゲームが濃厚。2勝1敗とリードしているブルージェイズが優位の状況に変わりはないが、もし第4戦を落とせば、その状況は一変する。
今季ここまで165試合を戦ってきたブルージェイズだが、最悪の試合が最悪のタイミングで訪れた(5点リードからの逆転負けは今季初)。この苦境を乗り越え、チームの勢いを維持することはできるだろうか。
2025.10.8 13:45 Wednesday
ヤンキースがスイープ負けを回避 ジャッジの同点弾などで5点差逆転勝ち
【ヤンキース9-6ブルージェイズ】ニューヨーク/ヤンキースタジアム、10月7日(日本時間8日)
アメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)第3戦の序盤、ヤンキースは「冬」の到来を待つだけ、という状況だった。5点のビハインドを背負い、本拠地ヤンキースタジアムの観客も意気消沈。10月の「失望」が現実のものとなりつつあった。しかし、頼れる主砲のアーロン・ジャッジがすべてを変えた。
四回、右腕ルイス・バーランドと対戦したヤンキースのキャプテンは、内角のフォーシームを左翼ポールにぶち当てる一発を放ち、ポストシーズンに印象的な名場面を刻んだ。この一打でヤンキースは絶望的と思われたビハインドをはね返し、6-6の同点に追いついた。
次のイニング、ジャズ・チザムJr.が勝ち越しのソロ本塁打を放ち、ヤンキースタジアムは再び大きく揺れた。最終的にヤンキースは9-6で勝利。スイープでの敗退を免れただけでなく、チームに勢いをもたらす1勝になったと言えるだろう。
試合序盤の見通しは決して明るいものではなかった。先発のカルロス・ロドンがブルージェイズ打線に捕まり、ブラディミール・ゲレーロJr.に3試合連続の本塁打を浴びるなど6失点。ブルージェイズは1点リードで迎えた三回に一挙4点を奪い、6-1とヤンキースを突き放した。
ヤンキースはALDSの第1戦と第2戦でともに2ケタ失点。2試合合計で8得点/23失点とブルージェイズに圧倒され、第3戦でも「お馴染みの光景」が繰り広げられるかに思われた。
しかし、ヤンキースの選手たちは諦めず、粘り強く戦い続けた。三回にジャッジのタイムリー二塁打とジャンカルロ・スタントンの犠牲フライで3点差に詰め寄ると、四回には1死一、二塁のチャンスが到来。ここでジャッジが打席に入り、ヤンキースタジアムは「M-V-P!」の大歓声に包まれた。
敵地ロジャースセンターでの第1戦では無死満塁の好機で三振に倒れたジャッジだが、今回はファンの期待に応えた。三塁アディソン・バージャーの落球とトレント・グリシャムの四球でもらったチャンスで打席に立ち、カウント0-2からの3球目、内角への99.7マイル(約160.5キロ)のフォーシームを強振。痛烈な打球が左翼ポール際へ飛んでいった。
ジャッジは身体を傾けながら、「フェアになれ」と祈るかのように打球の行方を見守った。まるで永遠のように感じられるほど長い時間が経過したあと、打球は左翼ポールに直撃。ジャッジがベースを1周すると、ヤンキースタジアムは歓喜と安堵に包まれた。
ジャッジは同地区のレッドソックスとブルージェイズを相手に安打を量産しており、今年のポストシーズンはすでに11安打を記録(自己最多)。まだ本塁打は出ていなかったが、今年のポストシーズン初本塁打が最高のタイミングで飛び出した。
この一打は、ストライクゾーンの中心から1.2フィート(36.6センチ)内側に投げられたボールを打ったものであり、ピッチトラッキングが開始された2008年以降、球速99マイル(約159.3キロ)以上で、これだけ内側に投げられたボールが本塁打になったのは初めてだった。また、ジャッジがストライクゾーン外のボールを本塁打にしたのも今季初だった。
ホームベースに近づくと、ジャッジはヘルメットを軽くたたき、グリシャムと前腕をぶつけ合って喜んだ。その後、ダグアウトでハイタッチの嵐の中に姿を消し、ハイタッチをひと通り終えると、テレビカメラを指差した。
同点弾を放った直後、五回の守備に就いたジャッジは、ファンの歓声に迎えられながらアンソニー・サンタンデールのライナーを好捕。再びファンを喜ばせた。
五回にチザムJr.の一発などで2点を勝ち越したヤンキースは、六回にベン・ライスの犠牲フライでさらに1点を追加。ブルペンは合計6回2/3を無失点に抑える力投を見せ、ALDS第4戦以降に望みをつないだ。
2025.10.8 13:11 Wednesday
タイガース1勝2敗と追い込まれる 先発フラハティが踏ん張れず
【タイガース4-8マリナーズ】デトロイト/コメリカパーク、10月7日(日本時間8日)
コメリカパークでは雨が降り、タイガースとマリナーズが対戦するアメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)第3戦は3時間遅れでスタートした。タイガースが16日ぶりのホームゲームに臨む中、満員の観客席ではオレンジ色のタオルが振られ、タイガースの選手たちを後押ししていた。
タイガースの関係者が想像していた以上の光景だったが、試合は4-8で敗戦。久々のホームゲームを待ちわびていた地元ファンに勝利を届けることはできなかった。
シーズン終盤の苦戦を乗り越え、ポストシーズンに進出したタイガース。ワイルドカード・シリーズも含め、2週間以上にわたる遠征を終えてホームに戻ってきた。タイガースが本拠地コメリカパークで勝利したのは9月6日(同7日)が最後。1勝2敗と追い込まれたタイガースは、2025年シーズンの戦いを延長するために、ALDS第4戦で約1カ月ぶりとなるホームでの白星を挙げることがマストとなる。
A・J・ヒンチ監督はマリナーズ先発の右腕ローガン・ギルバートに対し、上位打線に左打者を多く並べた。また、休養十分のブルペンも先発のジャック・フラハティをサポートする準備ができていた。マリナーズの強みに対抗すべく、ヒンチ監督はあらゆる手を尽くしたのだ。しかし、マリナーズは投打両面でタイガースを上回った。タイガースは最終回に3点を返して意地を見せたものの、試合前半のビハインドをはね返すことができなかった。
マリナーズは三回に3連打で2点を先制。1点目は左翼ライリー・グリーンから本塁へのスローイングが悪送球となって生まれたものだった。
早めの継投を好むヒンチ監督だが、2点を先制されたあともフラハティを続投させることを選択。フラハティは無死一、二塁からフリオ・ロドリゲスとホルヘ・ポランコを連続三振に仕留め、ジョシュ・ネイラーには右中間への大飛球を打たれたものの、センターフライに打ち取ってピンチを切り抜けた。しかし、四回先頭のエウヘニオ・スアレスにソロ本塁打を浴び、1死一塁となって降板。この走者がカル・ローリーのタイムリーで生還したため、3回1/3で降板したフラハティには4失点(自責点3)が記録された。
ヒンチ監督が打線を組み替え、ケリー・カーペンターを1番打者に起用したのは、マリナーズのダン・ウィルソン監督に「右腕のギルバートを左打者のカーペンターと3度対戦させるか」という決断を迫るためだった。ウィルソン監督には、3巡目もギルバートを続投させる、もしくはリリーフ左腕のゲーブ・スパイアーを早めに投入する、という2つの選択肢があった。
カーペンターの3打席目は五回1死一、三塁のチャンスで回ってきた。ウィルソン監督はスパイアー投入ではなく、ギルバートの続投を選択。タイガースにとっては4点ビハインドから追い上げるチャンスだったが、カーペンターのセカンドゴロが併殺崩れとなる間に1点を返すだけにとどまった。
タイガースは7点ビハインドの九回に3点を返して意地を見せたが、4-8で敗戦。打線がなかなかチャンスをモノにできないという状況がポストシーズンに入ってからも続いている。ヒンチ監督は打線を組み替えたり、代打を起用したりして、なんとか優位なマッチアップを作り出そうとしているが、それが得点につながるかどうかは、最終的には打者次第だ。
追い込まれて迎えるALDS第4戦。タイガースの打者たちには奮起が求められる。
2025.10.8 11:58 Wednesday
マリナーズがALCS進出に王手 ギルバートの好投に打線が3本塁打で応える
【タイガース4-8マリナーズ】デトロイト/コメリカパーク、10月7日(日本時間8日)
マリナーズのローガン・ギルバートはアメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)第3戦に先発。序盤は比較的おとなしかったが、ゆっくりと着実にマウンド上での力強い姿を取り戻していった。
ギルバートのニックネームは「ウォルター」。それはギルバートの人間性だけでなく、精神性も表している。マウンドの外では穏やかだが、マウンド上では力強いピッチングで三振を量産する。敵地コメリカパークで行われたALDS第3戦の序盤、ギルバートはまだ殻を破れていなかったが、試合が進むにつれて、力強さを増していった。
「粘り強い」と言われるタイガース打線を相手に、ギルバートは敵地ながらも素晴らしいピッチングを見せた。自慢のスプリットを武器に相手打線を翻弄し、6回4安打1失点の好投。7つの三振を奪い、四球は1つも与えなかった。
打線は三回に2点を先制すると、四回にもエウヘニオ・スアレスのソロ本塁打などで2得点。六回にはJ・P・クロフォードのソロ本塁打で5-1と突き放し、5点リードで迎えた九回にはカル・ローリーにダメ押しの2ラン本塁打が飛び出した。ギルバートの好投を打線が援護し、タイガースに8-4で勝利。2001年以来24年ぶり、球団史上4度目となるアメリカン・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)進出まであと1勝に迫った。
ちなみに、周知の事実ではあるが、マリナーズは全30球団の中で唯一、ワールドシリーズ出場の経験がないチームである。
2025.10.8 11:25 Wednesday
マリナーズ・ネイラーがALDS第3戦にスタメン出場 試合は雨天で開始遅延
第1子の誕生を控え、アメリカン・リーグ地区シリーズ(ALDS)第3戦を欠場する可能性があるとみられていたジョシュ・ネイラー(マリナーズ)だが、どうやらネイラー夫妻は無事に幸せな瞬間を迎えたようだ。ネイラーは7日(日本時間8日)、敵地コメリカパークで行われるALDS第3戦に「5番・一塁」でスタメン出場。なお、試合は雨天のため開始が遅れている。
ネイラーは当初、マリナーズの選手たちがデトロイトへ移動するフライトに同行せず、6日(同7日)にコメリカパークで行われた全体練習の時点ではチームを離脱していた。第1子の誕生を控えていたからだ。しかし、ダン・ウィルソン監督はネイラーがチームを離脱した理由について明言を避けた。
「ジョシュは何でも喜んで話してくれると思うから、今のところは『彼に聞いてくれ』と案内するだけにしておくよ。でも、彼が戻ってきてくれたのは本当に嬉しい。彼がここにいてくれて、スタメンに名を連ねてくれたことは本当にありがたい」と指揮官は語った。
ネイラーはすぐにメディアに対応することはできなかった。ポストシーズンの期間中は、試合前にクラブハウスがメディア向けに開放されないからだ。また、雨天の予報だったため、マリナーズは試合前の屋外での打撃練習を行わなかった。
ネイラーは妻の陣痛が始まった時点でチームを離れ、妻と医師が待つアリゾナへ向かう予定となっていた。一時的にチームを離れたあと、ALDS第3戦のスタメンに名を連ねたということは、すでに第1子が誕生したとみられる。
マリナーズは初戦を落としたものの、第2戦に3-2で勝利し、ALDSの対戦成績を1勝1敗としている。ネイラーはここまで2試合に出場し、8打数ノーヒット、1三振、1四球だ。
ネイラーが父親産休リスト入りする可能性、もしくは負傷者が発生する可能性に備え、マリナーズは11人の予備メンバーの中から数人をデトロイトへの遠征に帯同させていた。父親産休リスト入りした場合、選手は最大3日間の離脱を認められ、その期間中、チームは代替選手をロースターに登録することが可能になる。
しかし、ネイラーがチームに合流したことで、マリナーズは少なくとも父親産休リスト入りによるロースターの変更を心配する必要はなくなった。
ウィルソン監督は「ジョシュはここにいる。彼はスタメンに名を連ねている。彼がスタメンにいる状態で第3戦を迎えられるのは本当に嬉しい」とネイラーが第3戦に間に合ったことを喜んだ。
ネイラーはトレード移籍後54試合に出場し、打率.299、9本塁打、33打点、19盗塁、出塁率.341、OPS.831を記録。9月23日(同24日)のロッキーズ戦ではポストシーズン進出を決定づける逆転の3点タイムリー二塁打を放ち、本拠地T-モバイルパークを沸かせた。
2025.10.8 05:46 Wednesday
勝負の分かれ目:フィリーズの九回の犠打は正しかったのか
【フィリーズ3-4ドジャース】フィラデルフィア/シチズンズバンクパーク、10月6日(日本時間7日)
試合の趨勢(すうせい)だけではなく、シリーズの趨勢を決めた采配だったかもしれない。ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)の第2戦、4点ビハインドで最後の攻撃を迎えたフィリーズは、起死回生の逆転劇の一歩手前に迫っていた。
先頭からの3連打で瞬く間に2点を奪い、3-4と1点差に迫り、なおも無死二塁の好機。たまらず切り札の左腕ベシアを投入したドジャースに対し、フィリーズは代打から登場していた7番の左打者ストットが打席に入った。
ストットは送りバントを試みたが、ドジャースの三塁手マンシーの好フィールディングに阻まれ、二塁走者カステヤノスが三塁でタッチアウト。犠打は失敗したものの、1死一塁となり、その後代打ベイダーの単打でフィリーズはチャンスを広げた。しかし、あと1本が出ず、4-3で敗戦。シリーズは0勝2敗となり、シーズン終了のがけっぷちに追い込まれた。
“たられば”を言っても仕方がない。しかし、ストットが送りバントを成功させていれば、あるいはそもそも試みていなければ、試合の結果は変わっていたかもしれない。仮に送りバントが成功ないし二塁走者が三塁でアウトになっていなければ、後続のベイダーが左中間に放った単打で同点の走者が生還していた可能性は高いだろう。
近年、データ分析が進んだ野球の世界では、送りバントは非効率であるというのは常識になりつつある。しかし、どうしても1点が欲しい終盤の場面(特に1点が勝負とシーズンの成否を決するポストシーズン)では、MLBでも送りバントが行われることは珍しくない。
ただ、やはりデータはストットの送りバントの判断に疑問符を突きつけている。
MLBのデータアナリストであるトム・タンゴ氏は試合後、自身のXでストットの送りバントが変動させた試合の勝利確率のデータをポストした。
仮に送りバントが成功して1死三塁となっていた場合でも、フィリーズの勝利確率は2%低下していた。しかし、仮に打者走者も生きるバントで無死一、三塁となっていた場合は、勝利確率は20%上昇していた。一方で、送りバントが失敗して1死一塁となった場合は、勝利確率が20%低下する計算だった。フィリーズは最悪の結果を引き当ててしまった。
なぜフィリーズ(あるいはストット)は送りバントを試みたのだろうか。
まず打席に入っていたストットは、左腕に弱い。左腕に対する今季のOPSは.575と、右腕に対する.760と比べて大幅に悪化する。そもそも左腕スネルが先発するこの試合では先発から外れ、代わりに右打者のソーサがスタメンに入っていた(よってこの終盤で右打者を代打に送る選択肢は最初からなかった)。
ただ、走者2塁の局面ならば、左打者は引っ張った内野ゴロあるいはライトへの十分な飛距離のある外野フライでも走者を進塁させることができる。しかし、フィリーズは送りバントのサインを出さなければ、走者を進めることも難しいと判断したのかもしれない。
事実、相対したベシアは進塁打に適した内野ゴロやフライを打つのも容易くない好投手だ。浮き上がるようなフォーシームを武器とし、三振とフライの割合が非常に高い。データサイト「ファングラフス」によれば、ベシアのフライ率は54.0%でMLB9位、そして内野フライ率22.1%でMLB2位(ともに50イニング以上)にランクインしている。
また、ストットはベシアに対して通算5打数無安打と相性も悪かった。2022年、2023年、そして今季の3シーズンで7打席対戦し、2四球を選んだが、2三振を喫した。残り3度の凡退では、1度は右中間への大飛球があったものの、残り2度は犠牲フライには足りない平凡な外野フライに打ち取られた。
仮にストットが走者を動かせずに凡退し、1死二塁になっていた場合の勝利確率は16%減の27.8%だった。フィリーズは1死二塁になるリスクを嫌い、成功しても勝利確率が2%微減する送りバントに踏み切ったということになる。
あるいは、送りバントをする前に別の采配のカードを切るべきだったという指摘もあり得る。それが二塁走者カステヤノスへの代走だ。カステヤノスのスプリントスピードは平均をかろうじて上回るレベルだが、「スタットキャスト」の走塁得点指標(「ベースランニングバリュー」)では通算-13と、走塁が上手い選手ではない。
送りバントで三塁タッチアウトになった走塁も、スタートが良かったとは言えず、走塁の上手い走者であればセーフになっていた可能性もあったかもしれない。さらに、仮に送りバントが成功して1死三塁になっていた場合でも、カステヤノスが際どい内野ゴロや外野フライで生還できたかには疑問が残る。
しかし、フィリーズには代走の選択肢がなかった。この日ベンチスタートだった5選手のうち、ストットを含む2人が既に途中出場済み。九回の時点では唯一の控え捕手マーチャンを除き、2人の選手しかベンチに残っていなかった。ただ、そのうちの一人のベイダーは第1戦で足を負傷して途中交代しており、この日も代打で安打を放ったあとすぐに代走を送られている。負傷で走れないベイダーがサヨナラの走者として出塁した場合に備え、代走を残しておく必要があった(さらに仮に延長戦に突入した場合、ベイダーへの交代枠がなければDHのシュワーバーを守備に出さなければいけなかっただろう)。
現代野球では、送りバントはほとんどのシチュエーションで非効率な戦略とされる。この日、九回無死2塁の好機を迎えたフィリーズにとっても、バントの判断は正しくなかったかもしれない。しかし、それを承知の上でフィリーズが送りバントに踏み切った要素も複数考えられる。
結局は三塁からの猛チャージでバントを処理した三塁手マンシー、二塁の牽制カバーからダッシュで三塁に入ってタッグプレーを成立させた遊撃手ベッツ、そして絶体絶命の窮地に陥りながらもベシア(そして佐々木朗希)へとつなぐ余力を残していたドジャースが一枚上手だったということかもしれない。フィリーズにとっては痛恨の惜敗となった。
は2025.10.7 15:27 Tuesday
今永が2本塁打浴び、ブルワーズに連敗 鈴木の先制3ランは空砲に
【ブルワーズ7-3カブス】ミルウォーキー/アメリカンファミリーフィールド、10月6日(日本時間7日)
ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)の第2戦は、ブルワーズの一発攻勢に沈んだカブスが連敗。0勝2敗でシリーズ敗退に王手をかけられた。今永昇太(32)は2回2/3で2本塁打と苦戦し、ポストシーズンで初黒星。鈴木誠也(31)は好調を維持して先制3ランを放ったが、空砲となった。
初回、カブスは一、二塁のチャンスを作り、4番鈴木が先制3ラン。高めボールゾーンに浮いたチェンジアップを逃さず、打球初速111.7マイル(約180.0キロ)、飛距離440フィート(約134.1メートル)の圧巻の一発を放った。今ポストシーズンで2本目の本塁打は、今季のレギュラーシーズンを通じても2番目に飛距離が長い特大弾だった。
しかし、直後の守備で今永は2死から連打を浴び、5番ボーンに同点3ランを被弾。今季14本塁打を放ちながら、119打席連続本塁打なしでレギュラーシーズンを終えた大砲ボーンを目覚めさせる痛恨の一発を献上した。
さらに同点で迎えた三回、今永はまたしても2死からウィリアム・コントレラスに勝ち越しソロを被弾。続く打者にも単打を浴び、2回2/3、4失点、3三振、無四球、2本塁打の内容で降板した。
カブスは細かい継投策を打つブルワーズ投手陣に対して再三走者を出したが、3番手ミジオロウスキーが登板すると得点圏に走者を進めることすらできなかった。23歳の剛腕が投じる平均101.5マイル(約163.3キロ)、最速104.3マイル(約167.9キロ)の直球と、最速97.5マイル(約156.9キロ)のスライダーにバットが空を切り、3回で4三振、1安打と封じ込まれた。
四回には2番手として登板した守護神パレンシアが、チューリオにダメ押しの3ランを浴びて万事休す。チーム本塁打数22位と長打力が弱点のブルワーズ打線にお株を奪われる一発攻勢を食らい、7失点を喫した。
その後も打線はブルワーズの継投を打ち崩せず、3-7で敗戦。序盤の猛攻に屈した第1戦に続き、完敗を喫してシリーズは0勝2敗。がけっぷちに追い込まれたカブスは本拠地リグレーフィールドに戻り、8日(日本時間9日)に行われる第3戦でリベンジを期す。
は2025.10.7 13:05 Tuesday
スネルまた快投、朗希が2球でセーブ ドジャースが連勝で王手
【フィリーズ3-4ドジャース】フィラデルフィア/シチズンズバンクパーク、10月6日(日本時間7日)
ブレイク・スネル、ヘスス・ルザードの両先発の好投によって、ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)第2戦では、両軍ともにわずかなチャンスを探り合う展開となった。
ドジャースにとって最大の転機は、キケ・ヘルナンデスが放ったボテボテのショートゴロで、三塁走者テオスカー・ヘルナンデスが本塁に突入したときに訪れた。これで均衡を破ったドジャースは、そこから堰を切ったように得点し、4点を先制した。
九回にブルペン陣が1点差に詰め寄られたが、ドジャースは4-3で逃げ切り。スネルがまたしても快投し、NLDS突破に連勝で王手をかけた。
勝負を分けたいくつかのプレーのひとつが、27個目のアウトとなったセカンドゴロだった。同点、そしてサヨナラの走者を塁に置いた状況で佐々木朗希がトレイ・ターナーをセカンドゴロに打ち取り、試合終了かと思われた。しかし、二塁手トミー・エドマンの送球がショートバウンドとなり、一塁手フレディー・フリーマンはこれを懸命なスクーピングでミットに収めた。
「とにかく何が何でもキャッチしようとした。中間のボールは一番難しい。短いボールか長いボールか、ちょうどその中間のボールだ。なんとかキャッチできたし、ありがたいことにグローブの中に収まった」と一塁守備の名手フリーマンは胸を撫で下ろし、2球でアウトをとった佐々木は「(一塁の)カバーに入るの忘れちゃったって思いました」と苦笑いしつつ、フリーマンの好捕に感謝した。
スネルは球団史上2人目となる、ポストシーズンでの6回以上無失点、かつ1安打以下の好投を記録。これは2019年NLDSのウォーカー・ビューラー以来の快挙だ。さらにスネル自身、ポストシーズンで9三振以上、2安打以下を記録した登板は通算4度を数え、これはポストシーズン史上最多記録だ。
前回登板のワイルドカードシリーズ第1戦でも7回2失点と好投し、この日はフィリーズ打線を7回無失点と圧倒。六回のピンチでは1死一、二塁で初めて得点圏に走者を背負ったが、デーブ・ロバーツ監督は継投せずにエースにマウンドを託した。スネルはその期待に応え、ハーパーとボームを打ち取った。
自分のパフォーマンスで満足している点を問われたスネルは、「どう調整しているかだよ。フィリーズと対戦したのはつい最近だったけど、前回の対戦からどう調整したか。そしてゾーン攻撃に集中していることだ」と答えた。
「ケガから復帰して以来、スネルは素晴らしい投球をしている。われわれが求めていた全てが揃っていた。今夜は6イニングを力強く投げてくれた。全てがうまく機能していた。われわれの先発投手陣はここ1ヵ月ほど素晴らしい投球を続けている。全国の舞台でその姿を見てもらえて嬉しいね」と、フリーマンは語った。
ポストシーズンの歴史において、最大5戦のシリーズで2勝0敗とリードしたチームは、90回中80回(88.9%)そのシリーズを突破している。現行のフォーマットでは、アウェイで第1戦と第2戦に連勝したチームは、18回中16回(88.9%)で勝ち上がり、そのうち12回はスイープ(3連勝)で終わっている。
は2025.10.7 11:55 Tuesday