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ALCS第6戦の見どころ マリナーズが歴史を作るか、ブルージェイズが粘るか

 17日(日本時間18日)は近年のポストシーズンでも、最もスリリングな一夜となった。マリナーズが八回の逆転劇で球団初のワールドシリーズ進出に王手をかけ、一方のナ・リーグでは大谷翔平が歴史に残るパフォーマンスでドジャースのリーグ連覇を決めた。

 ドジャースがワールドシリーズへの切符をつかんだ今、残されるのはブルージェイズとマリナーズによるア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS=7回戦制)の行方だ。マリナーズが歴史を作るのか、はたまたブルージェイズが第7戦に持ち込むのか。運命のALCS第6戦の見どころを確認しておこう。

ALCS第6戦:マリナーズ対ブルージェイズ(マリナーズが3勝、ブルージェイズが2勝)

先発マッチアップ:ローガン・ギルバート(マリナーズ)対トレイ・イェサベージ(ブルージェイズ)

新人右腕イェサベージにかかる重圧

 ブルージェイズの関係者は皆、イェサベージの年齢以上の成熟ぶりに感嘆している。大先輩の先発投手ケビン・ゴーズマン、マックス・シャーザー、そしてジョン・シュナイダー監督も、イェサベージを絶賛する。 「イェサベージがまだ22歳だという事実を忘れてしまう」と、シュナイダー監督は語る。

 しかし、イェサベージはまだ22歳だ。しかも、まだMLBの舞台では5試合しか投げたことがない。たったの5試合だ。そのうち2試合はポストシーズンでの登板だが、好投できたのは1試合だけだ。

 ヤンキースとの地区シリーズでは好投した。しかし、マリナーズとのALCS第2戦では4回5失点と苦戦し、ブルージェイズは大敗を喫した。

 キャリア6試合目の登板となる第6戦は、ブルージェイズの過去30年の歩みの中でも最も重要な試合となる。仮にイェサベージが苦戦しても、ブルージェイズは先発投手のクリス・バシット、エリック・ラウアーがブルペンに控えている。しかし、もし序盤からマリナーズ打線につかまった場合、手遅れとなるリスクもある。もちろんヤンキース戦で見せた活躍を再現できれば、イェサベージはカナダの伝説となるだろう。

ジョージ・スプリンガーは大丈夫か?

 ブルージェイズの売りは強力打線だ。ポストシーズンでは正遊撃手の好打者ボー・ビシェットを欠きながらも打ちまくる打線における最強打者は、レギュラーシーズンではブラディミール・ゲレーロJr.ではなくスプリンガーだった。大舞台の経験も豊富なスプリンガーはポストシーズンでもOPS.933と好調だ。

 しかし、第5戦でスプリンガーは膝に死球を受け、負傷交代。膝に直球が直撃した光景は、少々恐ろしいものだった。負傷交代するスプリンガーにブーイングを浴びせたマリナーズファンに対し、シュナイダー監督は苛立ちを隠さなかった。ただ、シュナイダー監督はスプリンガーが第6戦に出場できると信じている。 「ジョージは最強のタフさを持っている。第6戦のスタメンに入れなければ、彼は本当にダメージを受けるはずだ」 しかし、スプリンガーの死球後の様子はとても痛ましかった。ブルージェイズ打線はそれでもスプリンガーを失うわけにはいかない。ただ、100%を大きく下回る状態でプレーさせるわけにもいかない。大黒柱のゲレーロJr.は史上稀に見る好調を維持しているが、サポートできる打者がいなければマリナーズは躊躇なく勝負を避けるだろう。

マリナーズはついにその瞬間をつかめるか

 今、マリナーズはその球団史で最もワールドシリーズに近づいている。過去3度のALCSでは2勝以上挙げることができなかった。史上最多の116勝を挙げた2001年のチームですら、1勝4敗で敗退している。

 そしてその後、マリナーズは21年間ポストシーズンから遠ざかった。マリナーズは第1、2戦に敵地ロジャースセンターで勝利したとはいえ、油断はできない。第6戦ではトロントの観客は熱狂的な雰囲気を作り出すだろう。トロントの観客も、ブルージェイズの久々のワールドシリーズ進出を待ち望んでいるのだ。

 しかし、それらをすべて差し引いても、マリナーズはすべての歯車が噛み合っている。強みである先発ローテーションに加え、打席に立つ度に歴史を作っているかのような主砲カル・ローリーの打棒、そして大砲エウヘニオ・スアレスの復活によって打線は厚みを増した。今のマリナーズは、栄光の瞬間をまさに迎えるチームのオーラを放っている。

 ただ、目標に大きく迫っているとはいえ、マリナーズはまだ歴史を作っていない。仮にこのチャンスを逃して敗退すれば、幾度となく心痛めてきたチームとファンにとっては、これ以上ないほど辛い出来事になるはずだ。マリナーズは未知の領域、約束の地・ワールドシリーズまであと1勝に迫っている。あとは、最後の勝利をつかむだけだ。

2025.10.19 14:21 Sunday

過去と現在が交差するマリナーズ 名打者エドガーの教えで打線が活性化

 「ザ・ダブル」がマリナーズの伝説となってから30年、エドガー・マルティネスが再びポストシーズンに戻ってくる。今回はコーチとして、新世代の選手たちが1995年のチームの悲願を成就するのを見守ろうとしている。

 殿堂入りの名打者マルティネスは、1995年のア・リーグ地区シリーズ第5戦の11回裏にサヨナラ二塁打(「ザ・ダブル」)を放ち、マリナーズを球団初のア・リーグ優勝決定シリーズへと導いた。当時の本拠地キングドームで巻き起こった割れんばかりの歓声は、今もマルティネスの耳にこだまする。今、マリナーズが球団初のワールドシリーズ進出に王手をかける中、マルティネスは当時の記憶と重なる部分を感じている。

 「1995年も今年も、本当に似たような状況だった。1995年は(地区で)エンゼルスを追っていましたが、今年はヒューストンだったね。あの頃の思い出が蘇ってきた。今回はさらに上を目指したいね」と、ブルージェイズとのALCS第5戦を前にマルティネスはそう語っていた。

 マリナーズの往年の名捕手ダン・ウィルソン監督が就任して1年目、マリナーズは既に現役のファン世代が話として聞いたことしかない境地に達している。ウィルソン監督は今のシアトルの街の活気、マルティネス、イチロー、ジェイ・ビューナーといった多くのマリナーズのかつてのスターたちがこの快進撃に助力していることに、どこか懐かしいものを感じ取っている。 「エドガーとあの時のことをよく話すよ。お互いに顔を見合わせて、あの頃のことを思い出すんだ。 2001年のようにT-モバイルパークをまた見ることができるなんて、本当に最高の気分だ。前回同じ経験をした仲間たちが周りにいると、改めて特別な気持ちになる」

 マルティネスはお飾りの存在ではない。ケビン・サイツァー、ボビー・マガリャネス打撃コーチと共に、打撃戦略のシニアディレクターを務め、マリナーズ打線を助けている。ウィルソン監督は、マルティネスのコーチとしての復帰は就任後、最も簡単な決断だったと語る。 「最初に声をかけたのはエドガーだった。彼以上に攻撃をうまくこなせる選手は知らない。彼は素晴らしい打者だった。それだけでなく、それを説明する能力も持っている。肉体面だけでなく、精神面でもね。まさに総合的な能力だ」

 マリナーズのスター外野手フリオ・ロドリゲスも、マルティネスの最も熱心な教え子の1人だ。フリオによれば、2人の絆はバッティングケージの中にとどまらない。 「人生や野球について語り合う中で、本当に良い関係を築くことができた。エドガーは私のような若い選手、そしてクラブハウスの全員に、本当に多くのものを与えてくれると思う」

 その影響力はマリナーズの打者に大きく現れている。マルティネスは今季の大半、ホルヘ・ポランコと多くの時間を共にしてきた。ポランコはポストシーズンでも大活躍。タイガースとの地区シリーズ第5戦では、マルティネスの「ザ・ダブル」を彷彿とさせるサヨナラ打を放った。

 「ポランコの活躍は素晴らしい。オフシーズン中にスイングを調整したんだ。去年はオープンスタンスだったけど、今年は少しクローズドスタンスになった。手の位置も違うし、ボールに対してより短く、ダイレクトに反応するようになった。それが彼の全てだ」と、マルティネスはポランコへの指導について語った。

 マルティネスが選手のときは、本能と反復がものを言った。しかし、現代では選手はデータ主導の野球をプレーしている。2015年から2018年もマリナーズで打撃コーチを務めたマルティネスは、こうした進化を積極的に受け入れている。 「今、入手できる情報量、スイングや投球を分析するために使われている技術は、本当に驚異的だ。私が現役だった頃は、こうした情報はすべて非常に役に立っただろう。当時は、目に見えるものに頼るしかなかったから」

 マルティネスは自身の役割について、大量の分析データを明確で実用的な指導へ絞り込むことだと語っている。そして、データの扱いに長け、マルティネスの洞察を各選手に合わせて調整してくれるサイツァーとマガリャネス両コーチに感謝している。 「考えすぎると、打撃はすごく複雑になってしまう。物事がシンプルな方が、パフォーマンスは上がる。一番シンプルなのは、ボールを見て、打つこと。リトルリーグの選手だった頃に言われたことだよね」

 これは若いマリナーズの中心選手たちに響くメッセージだ。レギュラーシーズンで60本塁打を放ったカル・ローリーは、マルティネスの「ボールの後ろにとどまれ」というアドバイスを生かし、フォームを微修正した。

 「カルは今、リーグのことをもっとよく理解している。自分のスイングをずっと良く理解している。調整もできる。ホームランを打てる才能は昔からあったが、今はパワーのある良い打者だ。投手がミスをすれば、それをうまく利用してくれる」と、マルティネスは成長を続けるローリーに太鼓判を押す。

 マルティネスの落ち着いた明るい口調は、ウィルソン監督のスタイルを反映している。マリナーズはALCSの第3、4戦に敗れたが、ウィルソン監督に動揺はなかった。マルティネスは「われわれのチームは常に調整ができた。メッセージは変わらない」と語る。

 マリナーズは今、歴史を作るチャンスを手にしている。まだ見ぬ舞台(ワールドシリーズ)に到達するには、あと1勝が必要だ。ウィルソンが監督室に、マルティネスがバッティングケージに、イチローが外野でユニフォームを着ている。球団の過去と現在がこれほどまでにつながることはあるだろうか。

 「必要な要素はすべて揃っている」と、マルティネス。 「選手たちは長い間一緒にプレーしてきた。彼らは十分に成熟しており、トップレベルに到達できるレベルに達している」 球団レジェンドたちの期待に応え、マリナーズは歴史を変えられるだろうか。

2025.10.19 13:51 Sunday

佐々木朗希、ブルペン転向の決断の裏側

 ドジャースの球団編成部長アンドリュー・フリードマンは9月、右肩のインピンジメントで長期離脱していた佐々木朗希と面談した。フリードマンはそこで、佐々木にポストシーズンに出場できるとすればブルペン転向が必要になると伝えた。23歳の佐々木にはリリーフ経験がなかった。

 「もしやりたくないなら、それは理解する。リスクは伴うから。でも、もしやりたいなら、君がチームを優勝に導ける現実的な道筋があると思っている」 フリードマンは佐々木にそう言ったことを覚えている。

 フリードマンはその場で佐々木に答えを求めなかった。考えるように伝えた翌日、佐々木はフリードマンに電話で「参加する」と答えた。

 その後まもなくして、佐々木は3Aオクラホマシティで2度のリリーフ登板をこなした。しかし、それから1ヵ月も経たないうちに、佐々木はナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の第4戦の最終回のマウンドに上り、チームを2年連続のワールドシリーズへ導いた。

 「彼が期待に応えてくれたことは言葉では言い尽くせない」と、フリードマンは語る。

 佐々木にとって、ブルペン転向は未知の経験の連続だった。ワイルドカードシリーズでレッズ相手にリリーフ登板したのは、レギュラーシーズン最終週の2登板に続き、リリーフとしてはわずか3登板目だった。その3日後には、フィラデルフィアの熱狂的な観客を前にしながら、地区シリーズ第1戦でキャリア初セーブを挙げた。そしてその第4戦では、3回無安打の好リリーフでチームをサヨナラ勝利、そして地区シリーズ突破に導いた。

 そして迎えたNLCS第4戦、デーブ・ロバーツ監督は初めての連投を佐々木に課した。 「ポストシーズンでは、選手たちがやったことがないことがたくさん起きる。でも、優勝したいなら、リスクを負う覚悟ができていなければならない。そして、私としては、今夜の朗希に完全に自信を持っていた」

 ロバーツ監督の佐々木への信頼は報われた。100マイル(161キロ)以上をマークしていた直球の球威はやや落ち、先頭に安打を許したものの、佐々木は危なげなく九回を締めくくった。

 つい最近まで、佐々木はドジャースのポストシーズンの計画に含まれないこともありえた。佐々木がブルペン転向を了承したときでさえ、フリードマン自身も佐々木がポストシーズンの構想に含まれる確信を持っていなかった。不確定要素が多すぎたのだ。

 しかし、佐々木は戻ってきた。

 転機となったのは9月18日のリハビリ登板だった。佐々木は1回(16球)を挙げ、無安打、2三振と好投。それだけではなく、直球はかつての球速を取り戻し、スプリットも切れ味が蘇っていた。佐々木は完全に、腹斜筋と肩をケガする前の2023年の姿に戻っているように思われた。

 「その時、私たちは『よし、佐々木なら本当に助けになってくれる』と思った」と、フリードマンも確信に至った。

 佐々木はチームの助けになったどころではなかった。ポストシーズンでのドジャースのブルペン陣において、佐々木は最も信頼できる投手の一人として頭角を現した。その安定した存在感から、ロバーツ監督は彼を第一候補と位置付けている。連投のテストをクリアした今、四半世紀ぶりの連覇にあと4勝に迫るドジャースは、佐々木にさらに頼ることだろう。

 ロバーツ監督の信頼は堅い。 「朗希に自信を持っている。彼を信頼している。才能を信じている。メンタルを信じている」

2025.10.19 12:48 Sunday

20歳の大谷にメジャーリーガーが寄せた期待 11年後に予言は実現

 「優れた投手でありながら、打席でも結果を残せるなんて、信じられない。滅多にないことだ」

 この発言で語られている選手は、もちろん大谷翔平のことだ。17日(日本時間18日)に行われたナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の第4戦、大谷は投手として七回途中無失点、10三振の快投、さらに打者としては3本塁打の離れ業で、二刀流として新たな伝説を刻んだ。MLBの歴史上、1試合における最高のパフォーマンスだったと言っても過言ではない。

 しかし、冒頭の発言はきのう敗れたブルワーズの選手やコーチから飛び出たものではない。ましてや二刀流として復活した今季、二刀流として大活躍したエンゼルス時代、日本で活躍した過去10年間の発言でもない。

 大谷についてのこの発言は、2014年11月に当時エンゼルスの投手だったマット・シューメイカーが語ったものだ。

 当時20歳だった大谷は、既に日本プロ野球で最も有名な選手だった。投げては時速100マイル(161キロ)に達する直球を誇り、打っては桁外れのパワーで本塁打を放った。

 高校時代は日本プロ野球を経ずにMLB挑戦を目指していた大谷は、数多くの関心を寄せていたMLBの球団ではなく、結局は日本ハムファイターズへの入団を選択。大谷は2014年当時、二刀流としてのプレーに魅力を感じたことがファイターズ入団の決め手だったと振り返っている。

 大谷は前代未聞の二刀流挑戦で、すぐに頭角を現した。19歳で迎えた2014年シーズンは155回1/3、11勝4敗、防御率2.61と投手として大開花。さらに打者としても234打席で10本塁打、OPS.842と非凡さを示した。

 当時は海外リーグのスター候補に過ぎなかった大谷が、その名をアメリカの野球ファンに知らしめるきっかけとなったのが、2014年秋に行われた日米野球のオールスターシリーズだ。

 1986年から1992年、そして1996年から2006年にかけて、MLBは2年ごとに選手を海外に派遣し、NPBオールスターチームと対戦させていた。2014年には、MLBチームはNPBのオールスターチームではなく、日本代表チームである侍ジャパンと5連戦と2度のエキシビションマッチを行った。

 2014年のシリーズ初戦、侍ジャパンは2-0でMLBオールスターに勝利。この日は後にドジャースなどで活躍する前田健太が先発したが、それでもハイライトは大谷だった。

 大谷は八回からリリーフ登板し、わずか12球でMLBのオールスターを三者凡退。持ち前の剛速球でアルシデス・エスコバー(当時ロイヤルズ)、デクスター・ファウラー(アストロズ)をフライに仕留め、そしてベン・ゾブリスト(レイズ)をファーストゴロに打ち取った。

 「大谷は若いが、まったく怯えているようには見えなかった。彼は攻めていた。彼の年齢だと、あれだけの速球を投げ、ストライクゾーンに入れることが何よりも重要だと思う。もし、あれだけの速球を良いコマンドで投げることができれば、誰にも負けないほど優れた投手になれるはずだ」 20歳の大谷の投球を見て、感銘のコメントを残したのはオールスター4度選出、そして2006年のMVPにも輝いた名選手ジャスティン・モーノウ(ロッキーズ)だった。

 そして数日後、大谷はさらなる衝撃を与えた。

 大谷は札幌で行われたシリーズ最終戦に先発登板。先頭打者のホセ・アルトゥーベ(アストロズ)に四球を与え、MLBが誇る強打者を打席に迎えた。

 ヤシエル・プイグ(当時ドジャース)、モーノウ、エバン・ロンゴリア(レイズ)と対し、結果はなんと3者三振。

 続く二回も大谷はスター捕手サルバドール・ペレス(ロイヤルズ)をダブルプレーに打ち取り、三回に2失点したものの、四回には満塁のピンチを三振で切り抜けた。

 「大谷はすごかった。95マイルをゾーンに投げ込んでくる。あれは厳しいよ」と、エスコバーは試合後に語った。

 大谷のその日の投球内容は4回2失点、2四球、1死球、1暴投、6安打と未熟さも露呈するものだった。しかし、MLBのスター選手から奪った7三振は、まさに大谷の実力の片鱗を示すものだった。われわれは3年以上後になって、その実力を目にすることになる。

 「大谷はまだ20歳だって?」 冒頭のコメントを残したシューメイカーは思わず聞き返した。 「それだけでも十分すごい。あんな剛腕なのに。もしかしたら彼は本当に二刀流選手になれるかもしれないね」

 11年後、その予言は当たった。大谷はMLBの舞台でも二刀流選手だ。そして、おそらく歴史上で最も才能に溢れた選手だ。

2025.10.19 11:35 Sunday

マリナーズが悲願のワールドシリーズ進出に王手 紙一重の攻防制す

【マリナーズ6-2ブルージェイズ】シアトル/T-モバイルパーク、10月17日(日本時間18日)

 歴史に名を残すか、それとも悲劇に終わるかどうかは、ほんの数メートルの飛距離の違いにすぎない。勝った方がワールドシリーズ進出に王手となるア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS=7回戦制)の第5戦では、そのわずかな差が勝敗を分けた。

 1-2とリードされて八回を迎え、残り6アウトに追い詰められたマリナーズが、起死回生の逆転劇を演じた。まず本塁打王カル・ローリーに同点弾が飛び出し、さらにチャンスを作り、エウヘニオ・スアレスがライトスタンドへ勝ち越し満塁弾。一挙5得点の攻勢で勝ち越し、ブルージェイズを6-2で破った。

 マリナーズは2000年以来となるホームでのALCSの勝利を飾り、球団史上初のワールドシリーズ進出に王手をかけた。

 「キャリアの中で素晴らしい瞬間は数多くあったが、グランドスラムを打って、長年タイトルを待ち望んでいたファンの前でチームの勝利に貢献できたことは格別だ。私もキャリアを通してこの瞬間を待ち望んできた」と、満塁弾を放ったスアレスは語った。

 この試合では、わずか数メートルを争う攻防が連発した。

 四回、0-1とリードされたブルージェイズは満塁のチャンスを作った。アーニー・クレメントが放った打球はホームベース手前の土でバウンドし、ファウルグラウンドへ転がりかけた。しかし、それを捕手のカル・ローリーが素早く抑え、本塁を踏んでから一塁へ転送。あと数センチずれていればファウルで仕切り直しだったかもしれなかったこのホームゲッツーで、マリナーズは窮地を脱した。

 クレメントはその後、六回に勝ち越しタイムリーを放ち、八回にもレフトへ飛距離363フィート(110メートル)の大飛球を放った。そのままレフトスタンドに吸い込まれるかと思われたこの打球は、レフトのランディ・アロザレーナが見事に捕球。追加点を防ぐ本塁打キャッチで、マリナーズは流れをつかんだ。

 大飛球を打たれた左腕のゲーブ・スパイアーは「良い打球を打たれたと思った。ランディがゆっくりと追いかけているのが見えたから、チャンスがあるかもと思った。そして彼がジャンプして捕球するのを見た。本当に嬉しくて、両手を上げて喜んだよ。最高の瞬間だったね」と振り返った。

 その直後の攻撃でマリナーズは逆転。口火を切ったローリーの本塁打は高々と上がったものの、飛距離348フィート(106メートル)と伸び切らなかった。しかし、なんとかレフトスタンドへ届き、値千金の同点弾となった。

 「ボールを打ったときはとらえたと思った。だけど、打ち上げすぎたと気付いた。分からないけど、もし屋根が開いていたら、違う結果になっていたかもしれないね。だけど十分な距離を飛ばせてよかったよ」と、レギュラーシーズン中も60本塁打を放ったローリーは語った。

 ローリーの同点弾のあと、マリナーズは満塁のチャンスでスアレスを打席に迎えた。二回に先制弾を放っていたスアレスは、セランソニー・ドミンゲスの直球を打ち返して、勝ち越しの満塁弾。ポストシーズンで満塁本塁打を放ったのは、エドガー・マルティネス(1995年ALCS第4戦)に続き、2人目だ。

 「ジーノ(スアレス)が今日5打点を挙げ、勝利をもたらしてくれたことは、言葉では言い表せないほど嬉しいことだろう。彼にとって、まさに最高の一日だった」と、ダン・ウィルソン監督は語り、不振の大砲が目覚めたことを喜んだ。

 ポストシーズンの最大7戦のシリーズでは2勝2敗で迎えた第5戦に勝利したチームは、68.9%(46/67)の確率でシリーズに勝利している。現行のフォーマットでは、ホームで第5戦に勝利して3勝2敗でアウェイの第6戦以降に臨んだチームは、60.6%(20/33)の確率で勝利している。

 追い詰められたブルージェイズのジョン・シュナイダー監督はこう語った。 「選手たちに穴に潜り込むようなことはしてほしくない。それはわれわれの本質ではない。第6戦に全力を尽くす。試合に向けて万全の準備を整える。このチームには、他の方法は考えられない」

 ブルージェイズのクラブハウスには浮かぬ顔の選手が多かった。ブルージェイズの選手たちは、「われわれがここでやれることはやった」と繰り返した。

 先発として好投したケビン・ゴーズマンは、惜敗を乗り越えて前を向いている。 「このシアトルでの3戦を3戦のシリーズととらえていたから、トロントに戻るためにはこのシリーズに勝ち越さなければいけなかった。そして実際に勝ち越せた。ああいう負け方をするのはもちろん辛い。でも、われわれは粘り強い。このクラブハウスにいる選手たち以上に信頼できるチームはない」

2025.10.18 14:16 Saturday

大谷翔平がNLCSのMVPに選出 打撃不振も、第4戦に歴史的活躍

 大谷翔平(31)は、素晴らしいフィナーレを演出する方法を確かに知っている。

 ドジャースは17日(日本時間18日)、ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の突破に王手をかけ、第4戦を迎えた。球界でも25年ぶりの世界一連覇という究極の目標に向け、また大きな一歩を踏み出そうとしていた。

 大谷はNLCSでは深刻な打撃不振に陥っており、ほとんどチームに貢献できていなかった。しかし、デーブ・ロバーツ監督だけはチーム最大のスターに揺るぎない信頼を寄せていた。 「大谷にとって、このシリーズで存在感を示すチャンスだと思う。だから、彼のベストパフォーマンスが見られるはずだ」 第4戦では二刀流として歴史的な活躍を見せ、そのたった1試合の活躍のみでシリーズMVPに輝いた。

 5-1でブルワーズを下したこの試合、大谷は先発投手としては七回途中無失点、10三振の好投を見せ、指名打者としては3本塁打を放った。昨季、史上初の「50本塁打50盗塁」を達成したマーリンズ戦での大活躍は大谷の代名詞ともなったが、この試合では二刀流としてさらにオールラウンドに活躍し、歴史に名を刻んだ。

 初回、投手・大谷は先頭打者に四球を与えたが、3者連続三振を奪い、力強いスタートを切った。そのうち2打者は時速100マイル(161キロ)を超える剛速球。2008年にピッチトラッキングシステムが導入されて以来、ポストシーズンで時速100マイルを超える球で複数の三振を奪った初のドジャースの先発投手となった。

 そして初回、今度は打撃で魅せた。ブルワーズ先発のキンタナから圧巻の先頭打者本塁打を放って先制。そして、四回には飛距離469フィート(143メートル)の場外弾で追加点を挙げた。

 投手・大谷は七回に2人の走者を許して降板したが、6回0/3、無失点、2安打、10三振、3四球の快投。シーズン初めて2桁三振を達成した。

 そしてスタンディングオベーションを浴びながら降板した直後の七回、大谷はこの日3本目の本塁打を左中間に突き刺した。

 投打で圧倒的な支配力を見せつけた。大谷が2桁三振を奪いながら2本塁打を放ったのは、キャリアで2度目。他にこれを1度以上成し遂げた選手は存在しない。

2025.10.18 13:33 Saturday

PSで急増の申告敬遠 戦略的に効果はあるのか?

 故意四球はレギュラーシーズンでは激減しているにもかかわらず、今季のポストシーズンでは急増している。

 10月16日現在、今ポストシーズンでは24度の故意四球が記録された。昨季は21度、一昨年は12度に過ぎなかった。これは2018年の26度以来、ポストシーズンでは最多だ。ポストシーズンのフォーマットが拡大されたのも関係しているが、まだワールドシリーズにも達していない現段階では、故意四球の頻度は高くなっている。

 一方、レギュラーシーズンでは故意四球の割合は年々減っている。過去3シーズンは毎年「史上最低の故意四球率」が記録されている。これは明らかにナ・リーグにもDH制が導入され、投手の前の打者に故意四球を与える必要がなくなったことが関係している。

 故意四球の減少にある考えはシンプルだ。史上初めて1年間にわたって故意四球を与えなかった2019年のアストロズを率いたAJ・ヒンチ監督は言う。 「ただで打者を出塁させることが正しいと思わない」

 データから見れば、ヒンチ監督の意見は正しく、故意四球は理に適っていない選択だ。MLBのシニアデータアーキテクトであるトム・タンゴ氏がかつて自身の著作で示したように、故意四球が投手側に有利になると数学的に証明される唯一の状況は、九回裏1死二、三塁あるいは三塁の場合のみ。それでも、勝率への影響はごくわずかだ。 「もし打者が全員同じ能力を持っていたら、故意に四球を与えるのは、せいぜい損益ゼロの動きで、試合の早い段階でそうするのは逆効果だ。なぜなら、無失点のイニングの確率を上げるよりも、ビッグイニングの確率を上げるからだ」

 レギュラーシーズンで故意四球が減少する理由は、データの裏付けがある。しかし、ポストシーズンで故意四球を与えられるのは、話題の球界のスターたちであり、「同じ能力を持つ打者」ではない。これまでの23度の故意四球は成功したのかを分析してみよう。

・11のインプレーアウト ・4三振 ・単打3本 ・二塁打3本 ・四球2 ・犠牲フライ1本

 故意四球後の打撃成績は打率.273、出塁率.333、長打率.409だ。故意四球を与えたイニングで得点が入ったのは11度、つまり半分程度だった。故意四球を与えたイニングでの平均失点は0.91で、1イニングに1点に近い数字だった。

 一方、故意四球を受けた16人の打者はほとんどがスター選手だ。アーロン・ジャッジ、カル・ローリー、大谷翔平といったMVP候補、そしてフリオ・ロドリゲス、ライリー・グリーン、ブラディミール・ゲレーロJr.、マックス・マンシーといったスラッガーが揃う。

 故意四球を受けた打者の今季の打撃成績は、打率274、出塁率.350、長打率.506。これは今季のホセ・ラミレスの打撃成績とほぼ同等だ。ラミレスは将来の殿堂入り候補であり、今季は平均より33%優れた攻撃力を発揮した。

 そして故意四球を受けた打者の走者がいる状況での打撃成績は、打率.286、出塁率.362、長打率.523に上昇する。これは平均より45%程度優れており、ざっと球界で7番目に優れた打者だったケテル・マルテと同じだった。

 とはいえ、良い打者の次の打者も、故意四球を与えられる前の打者ほどではなくとも優秀だ。タンゴ氏が述べているように、打者の能力を考慮しても、「傑出した打者に故意四球を与えることは、ほぼ確実に(攻撃側)チームの得点力を向上させる」ことになる。

 ただ、故意四球後の結果が悪かった場合、故意四球を与えなかった場合の結果も恐らくかなり悪いだろう。多くの場合は「取り得る最悪の選択肢は何か」を比較しなければならない。故意四球を与える選択肢がある状況では、以下の条件の少なくとも1つが当てはまる。そしてほとんどの場合、複数の条件が当てはまる。

・非常に優秀な打者が打席に立つ。 ・すでに少なくとも1人の走者が塁上にいる(234回中22回) ・すでに3ボール0ストライクのカウントになっている(過去2回) ・投手と打者の相性が悪かった。

 つまり、故意四球を検討する時点で、守備側は既に悪い状況に陥っている。

 ここで問題は、「走者が一人多い状態で実力が劣る打者と対戦する方が良かったのか、それとも走者がいない状態で優秀な打者と対戦する方が良かったのか」ということになる。

 ただ、これは状況にもよる。

 ヤンキースとブルージェイズによる地区シリーズ第3戦の三回、1点ビハインドのヤンキースは無死二塁の場面でゲレーロJr.に故意四球を与えた。しかし、この敬遠策は失敗した。ヤンキースの投手だったロドンは次の打者を打ち取ったものの、そこから3者連続で単打を浴びて逆転された。試合序盤での四球は、一般的には絶対に避けるべきものだ。

 しかし、ロドンはゲレーロJr.に対して非常に相性が悪かった。過去21度の対戦では一度も三振を奪えておらず、その試合の序盤では本塁打も打たれていた。敬遠策は失敗したが、果たしてゲレーロJr.と勝負するほうが良かったとも言い切れない。

 一方、こうした試合の流れを決定づける状況でのみ、故意四球は行われるわけではないのも事実だ。今ポストシーズンでの24度の故意四球のうち、12度は試合の勝敗がほぼ決定していた状況(勝利確率85%以上)で行われた。

 そして実際のところ、今ポストシーズンでは故意四球は試合の勝敗に大きな影響を与えていないことが分かっている。

2025年のポストシーズンの故意四球による勝利確率

・故意四球があり得る状況になった場合:攻撃側の勝利確率74% ・実際に故意四球を与えた場合:攻撃側の勝利確率75% ・その次の打者:攻撃側の勝利確率74% ・攻撃終了時:攻撃側の勝利確率75%

 もちろん敬遠策が見事に成功した場合もあれば、成功しなかった場合もある。しかし、総合的に見れば差はほとんど出ない。

 故意四球の話題で特に取り沙汰されるのが、ポストシーズンでは不調に陥る期間があった大谷の敬遠する是非だ。大谷の次を打つベッツは敬遠策のあと、一度は併殺打を記録したが、2四球、1本のタイムリーを記録している。大谷の敬遠は間違いなのだろうか。

 必ずしも間違いではない。

 まず大谷が突如として不振に陥ることは、2本塁打を放ったナ・リーグワイルドカードシリーズの時点では想像もつかないことだった。そして第二には、大谷の苦戦は特定のタイプの投手(低いアームアングルから内角を攻め立てる力強い左腕)に対して起きているということだ。故意四球が与えられた4度は、いずれも右腕相手であり、理論上は右打者のベッツの方が分は良かったかもしれない。

 しかし、大谷は依然として大谷だ。特定の投手に対して沈黙しても、その脅威は変わらない。「走者がいる状態で大谷を右投手と対戦させる」ことが最悪の選択だとすれば、「走者がいる状態でベッツと対戦させる」ことも最悪だ。

 故意四球はデータから見れば、誤った選択だ。

 しかし、故意四球を与えるかどうかという状況に追い詰められてしまえば、「不利なマッチアップを受け入れ、強打者と対戦する」ことも、「故意四球を与え、その次の優秀な打者と対する」ことも、両方とも分が悪い。

 結局は、故意四球という誤った選択を避けるための最良の方法は、そもそもそのような選択を迫られるピンチを作らないこと。言うは易く行うは難しであることは明らかではあるが。

2025.10.18 13:05 Saturday

ドジャースがワールドシリーズ進出 大谷が3本塁打&10三振と無双

【ドジャース5-1ブルワーズ】ロサンゼルス/ドジャースタジアム、10月17日(日本時間18日)

 ナ・リーグ連覇に王手をかけていたドジャースは、大谷翔平(31)の投打にわたる活躍でナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の第4戦に勝利。ブルワーズをスイープ(4連勝)で下し、2年連続のワールドシリーズへ駒を進めた。大谷は打っては先頭打者弾を含む3本塁打、投げては七回途中無失点10三振の快投のワンマンショーでドジャースを勝利に導いた。

 初回から大谷は投打にエンジン全開だった。まずは投手として3つのアウトをすべて三振で奪うと、直後の打撃では先頭打者本塁打で先制点をもたらした。この本塁打で大谷はポストシーズンで初めて先頭打者本塁打を放った投手となった。

 そして四回の第3打席では再び本塁打を放ち、リードを4-0に広げた。ポストシーズンでマルチ本塁打を放ったのは、この日の大谷が史上初だった。

 そのリードを投手・大谷が守った。この日も大谷は七色の変化球を駆使し、ブルワーズ打線を翻弄。1巡目はフォーシームとスイーパーを中心に攻め、四回までにフォーシームで3三振、スイーパーで2三振を奪った。四回以降は決め球をスプリットに切り替え。スプリットはわずか9球しか投じていないものの、5度のスイングを誘ってすべて空振りを奪い、四~六回の間に5三振と抜群の切れ味を発揮した。

 投手・大谷は七回に走者2人を背負って降板。6回無失点、10三振、3四球、2安打と、投手としては今季最高のパフォーマンスだった。

 しかし、なおも衝撃は続いた。七回の第4打席、大谷はブルワーズの守護神メギルの直球をとらえ、左中間にこの日3本目の本塁打。1つの試合で2桁三振を奪い、3本塁打を放ったのは、レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせてもこの日の大谷が史上初だった。

2025.10.18 12:24 Saturday

「きょうどうやって勝つかだけ考える」 王者ドジャースが3連勝

【ドジャース3-1ブルワーズ】ミルウォーキー/ドジャースタジアム、10月16日(日本時間17日)

 ドジャースの二塁手トミー・エドマンは、「プレーオフを経験するということは、特別な意味を持つ」と語った。初めてプレーオフに出場する者にとって、「過去に何度も同じような瞬間を経験してきた者と比べると、心臓の鼓動を静めるのは間違いなくずっと難しい」。

 エドマンがかつてそういうタイプの選手だったとしても、今はもう違う。大谷翔平、ムーキー・ベッツ、ウィル・スミス、フレディー・フリーマン、そしてこのドジャースの巨大なチームに加入した他の誰にとっても、それは同じだ。彼らは皆、この状況に何度も遭遇し、勝利を収めてきた。彼らが対戦相手にかけるプレッシャーは容赦なく、その力は克服するのが難しい。

 ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)の第3戦、ドジャースはまたしても第1シード・ブルワーズを破り、リーグ連覇に王手をかけた。

 ポストシーズンの最大7戦のシリーズにおいて、3勝0敗とリードしたチームは過去41チーム中40チームが勝利している。そのうち、31度はスイープ(4連勝)で決した。3連勝から敗退したチームは歴史上、2004年のア・リーグ優勝決定シリーズのヤンキースしかいない(奇しくもそのヤンキースを打ち破ったレッドソックスには、ドジャース監督のデーブ・ロバーツがおり、鍵を握る活躍を見せた)。

 負ければ王手をかけられる第3戦、ブルワーズは勝利に近づくことすらなかった。早々に先制点を奪われ、たまらず新人ジェイコブ・ミジオロウスキーを投入。ミジオロウスキーは最初に対戦した16打者のうち15人を打ち取り、9三振を奪ったが、六回に息切れして追加点を奪われた。新人の奮闘を援護できず、打線はドジャース先発のタイラー・グラスナウとブルペン陣の前に沈黙した。

 レギュラーシーズン中はメジャー3位の総得点を記録したブルワーズ打線は、NLCSの3戦で1得点ずつに抑え込まれている。第1、2戦ではスネル、山本の2人の先発に圧倒されたが、第3戦ではドジャース唯一の弱点とされていたブルペン陣にも封じられた。

 「挑戦的だ。彼ら(ドジャース)は世界最高の選手だよね?このシーズンのこの時期になると、最高の投手陣が揃うんだ」と、ブルワーズのジェイク・バウアーズは語った。

 追い詰められたブルワーズは、第4戦はベテランのホセ・キンタナを投入するだろう。左腕のキンタナの起用は、打者・大谷封じには効果があるだろう。しかし、逆転でのシリーズ突破はおろか、シリーズを再びミルウォーキーに持ち込むだけでも大きな挑戦となる。シーズン最高勝率のチームが最大7戦のシリーズで0勝3敗となった過去7度の事例では、7度すべてスイープ(4連敗)で決着している。

 「あまり先走りすぎないように気をつけている。ワールドシリーズは考えていない。きょうどうやって勝つかだけを考えている。それがわれわれが多くの試合に勝てている理由だと思う」と、エドマンは語る。

 一方、ブルワーズ・ナインは現実を受け止めている。今季のレギュラーシーズンで最高勝率を挙げたブルワーズは、がけっぷちに立たされた。「これまで見せてきた以上の成果が必要になる」とは、三塁手のケイレブ・ダービン。「言うまでもないことだが、1勝する前に4勝することはできない」と、指名打者のクリスチャン・イェリッチは語る。

 さらに好調だった1番打者ジャクソン・チューリオが第3戦で負傷交代を余儀なくされ、状況は悪化する一方だ。この窮地を抜け出す唯一の方法は、イェリッチの言葉を借りるならば、課題を「小さな目標」に細分化することだと彼らは信じている。そして、自分たちに過度なプレッシャーをかけてはいけないことも理解している。

 第3戦の前、ブルワーズのパット・マーフィー監督は試合前にいつもの芝居がかった振る舞いをしており、報道陣と冗談を言い合ったり、野球以外の話題で盛り上がったりしていた。

 ある記者がマーフィー監督の目に付く気の緩みについて質問したところ、マーフィー監督はこう答えた。 「これはただの演技だよ。気が緩んでなんかいない。ものすごく緊張しているんだ」

 その数時間後、NLCSで0勝3敗と劣勢に立たされたマーフィー監督は、もはや緊張する理由はほとんどないと悟った。この時点で、ブルワーズにはもう失うものがない。ブルワーズは強大なドジャースの前に屈する新たなチームとなるのか、それとも歴史的な形でドジャースを驚かせる相手になるのか、そのどちらかだ。

 バウアーズは語る。 「前にもあったことだろう?だったらなぜ、われわれにできないのか?」

2025.10.18 09:49 Saturday

フィリーズが今オフにカステヤノスを放出へ 今季は打撃不振

 フィリーズはベテラン外野手ニック・カステヤノスを今オフにトレードするか、リリース(解雇)する見込みだと、ジ・アスレチックのマット・ガルブ記者が報じた。カステヤノスは今季打撃不振に陥り、来季は5年契約の最終年に差し掛かる。

 34歳のカステヤノスは、2022年に5年契約でフィリーズに加入。通算4シーズンで82本塁打、オールスター選出1度と貢献を重ね、ポストシーズンでも勝負強い打撃を見せてきた。しかし、守備・走塁での貢献度が低く、トータルの貢献度を示すfWARでは、通算4シーズンで0.7と低迷していた(平均的なレギュラー選手は1シーズンあたり2.0WARを残すと言われている)。

 ただ、今季は打率.250、OPS.694と打撃不振に苦しみ、定位置を失陥。同記者によれば、出場機会の減少がフィリーズとカステヤノスとの間に緊張関係をもたらしており、それも今オフ中の放出の遠因だという。

 カステヤノスは来季2000万ドルの契約を残している。フィリーズがカステヤノスをトレード放出するためには、来季の年俸の大部分を負担する必要があるだろう。もっとも、フィリーズはカステヤノスがレギュラーを務めていた過去2シーズンも、不良債権化していたカステヤノスの放出を試みたが、失敗した。リリース(解雇)すれば、年俸を全額負担する必要がある。

 来季はフィリーズにとって、再編を迫られるシーズンだ。主砲カイル・シュワーバーと正捕手JT・リアルミュートがFAとなり、ここ数年のチームの屋台骨を支えていた選手たちに退団の可能性がある。また、外野のレギュラーを務めたマックス・ケプラーとハリソン・ベイダー(相互オプション)もFAとなるだろう。DHと外野に空席が生じるにもかかわらず、フィリーズはカステヤノスと袂を分かつ見込みだ。

2025.10.18 09:47 Saturday

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