English Español 韓国語

 
More>>

MLBのライブ配信観るなら《SPOTV NOW》

spotvnow

TRENDING NOW

激戦の2025年ワールドシリーズで生まれた様々な記録を振り返る

 なんという試合。なんというワールドシリーズ。なんというシーズン。

 ワールドシリーズ第7戦は、ポストシーズンも含めて2025年の2477試合目。これは過去最多より5試合多く、史上最多試合数を更新した。そして、2025年シーズンの最終戦は「伝説」の試合となった。

 ドジャースが21世紀初&球団史上初のワールドシリーズ連覇を達成した最終戦は、延長11回までもつれる熱戦に。ワールドシリーズ最終戦が少なくとも11イニング以上の試合となったのは、1924年(12イニング)と1997年に続いて史上3度目だった。

 両チームの合計投球回は146イニングに及び、これは1912年のワールドシリーズ(147回2/3)に次ぐ2番目の数字。ただし、この年は引き分けが1試合あったため、ワールドシリーズは8試合行われた。

 ここではドジャースが最終的に5-4で勝利した一戦にまつわる、11個の「記録」と「事実」を紹介していく。

山本由伸とミゲル・ロハスが作った伝説

【1】第6戦で6イニングを投げた翌日、山本は第7戦を締めくくり、ポストシーズンの「伝説」にその名を刻んだ。MLBの公式記録を扱うエライアス・スポーツ・ビューロー社によると、ポストシーズンで6イニングを投げた翌日に登板した投手は山本が9人目。ただし、過去70年間では1988年NLCSのオーレル・ハーシュハイザー(第3~4戦)と2001年ワールドシリーズのランディ・ジョンソン(第6~7戦)だけ。山本は連投した2試合目に2回2/3を投げ、これは9人の中で最多イニングとなった。

【2】山本は2001年のジョンソン以来となるワールドシリーズ3勝を達成。ただし、山本は敵地で3勝を挙げており、これはワールドシリーズ史上初の快挙となった。

【3】ワールドシリーズ第6戦と第7戦で勝利投手になったのは、1925年のレイ・クレーマー、1946年のハリー・ブレキーン、2001年のジョンソンに続いて山本が4人目。第6戦と第7戦がともに敵地だったのは山本が史上初だ。

【4】山本が第7戦でこれほど多くのイニングを投げることになったのは、ロハスの活躍(九回に起死回生の同点本塁打)があったからこそだ。ワールドシリーズ最終戦の九回以降に同点・勝ち越し・逆転の本塁打を放ったのは史上2人目。1960年にビル・マゼロスキーがサヨナラ本塁打を放って以来の快挙だった。

ウィル・スミスにまつわる記録

【5】ロハスの一発で試合は延長戦に突入し、新たなヒーローが生まれた。延長11回にスミスが勝ち越し本塁打を放ったのだ。ワールドシリーズ最終戦の延長イニングで本塁打が飛び出したのは史上初めてだった。

【6】スミスはワールドシリーズで捕手として全試合フル出場した。7試合合計で73イニングとなり、これはワールドシリーズ史上最多。エライアス・スポーツ・ビューロー社によると、従来の最多記録は1903年の第1回ワールドシリーズでボストン・アメリカンズ(現レッドソックス)のルー・クライガーが記録した71イニングだった。ただし、当時のワールドシリーズは5勝先取の最大9試合制で、クライガーの71イニングは8試合での記録である。7試合制のワールドシリーズにおける最多記録は、1924年にマディ・ルールが記録した67イニングだった。

【7】スミスは2020年、2024年に続いて自身3度目となるワールドシリーズ制覇を果たした。これにより非常に風変わりな記録が継続され、「ウィル・スミス」という名前の選手がワールドシリーズ制覇を成し遂げるのは6年連続に。2021~23年はリリーフ左腕のウィル・スミスがワールドシリーズ優勝チームに所属していた。

ワールドシリーズの歴史に残る逆転劇

【8】2024年と同様に、ドジャースは逆転勝利でワールドシリーズ優勝を決めた。ワールドシリーズ優勝決定試合で3点差以上の逆転勝利を収めたのは今年のドジャースが10チーム目で、最大の逆転劇は2024年ドジャースの5点差逆転(第5戦)。3点差逆転は3位タイの記録となった。ドジャースが昨年、5点差逆転勝利でワールドシリーズ優勝を決めるまで、ワールドシリーズ優勝決定試合で3点差以上を逆転したのは1986年メッツが最後だったが、ドジャースは2年連続で3点差以上を逆転してワールドシリーズ優勝を決めた。

【9】昨年の5点差逆転は第5戦だったが、今年の3点差逆転は第7戦だ。エライアス・スポーツ・ビューロー社によると、4勝先取制のシリーズの最終戦での3点差逆転は史上3位タイ。1925年ワールドシリーズでパイレーツ、2003年ALCSでヤンキースが4点差逆転を成し遂げている。3点差逆転はほかに3度あり、いずれもワールドシリーズで1960年パイレーツ、1975年レッズ、1986年メッツが達成した。

【10】ドジャースは九回が始まった時点で1点のビハインドを背負っていた。「勝てば世界一、負ければ敗退」のワールドシリーズ最終戦において、ビハインドで九回を迎えたチームは通算3勝33敗。今年のドジャースのほかに、1997年マーリンズと2001年ダイヤモンドバックスしか勝利していない。この3チームのうち、敵地で勝利したのは今年のドジャースだけだ。

【11】敵地での勝利に関連した記録としては、敵地で行われたワールドシリーズ第6戦と第7戦に勝利したのは、今年のドジャースが史上9チーム目。1926年カージナルス、1934年カージナルス、1952年ヤンキース、1958年ヤンキース、1968年タイガース、1979年パイレーツ、2016年カブス、2019年ナショナルズに続く快挙となった。

2025.11.3 12:50 Monday

ゴールドグラブ賞の受賞者が決定 クワンはデビューから4年連続の受賞

 ワールドシリーズが終了し、アワード受賞者の発表も本格化していく。ワールドシリーズ終了の翌日、2日(日本時間3日)にはゴールドグラブ賞の受賞者が発表された。

 ゴールドグラブ賞は1957年に設立され、各リーグの各ポジションで最も優れた守備を見せた選手を表彰する。伝統的な9ポジションに加え、2022年からはユーティリティ(UT)部門の表彰もスタート。事前に各ポジションのファイナリスト3名が選出され、その中から受賞者が決定する。

 受賞者はMLB各球団の監督・コーチの投票を75%、セイバーメトリクスの守備指標を25%の割合で合算して決定。監督・コーチは自軍の所属リーグの選手のみ投票可能で、自軍の選手には投票できない。

 アメリカン・リーグはロイヤルズの三遊間コンビ、マイケル・ガルシアとボビー・ウィットJr.が受賞。同一球団の三遊間コンビが選出されるのは史上18度目、2013年オリオールズのマニー・マチャドとJ・J・ハーディ以来となった。

 また、ガーディアンズのスティーブン・クワンはメジャー1年目から4年連続4度目の受賞。メジャー記録はイチロー氏とノーラン・アレナド(カージナルス)の10年連続で、この記録にどこまで迫れるか注目される。

 ナショナル・リーグはジャイアンツのバッテリー、ローガン・ウェブとパトリック・ベイリーが受賞。同一球団のバッテリーが選出されるのは史上8度目、2013年カージナルスのアダム・ウェインライトとヤディアー・モリーナ以来となった。

 遊撃手部門はわずか3失策、OAA(Outs Above Average=平均よりどれだけ多くアウトを奪ったかを表す守備指標)+21という素晴らしい守備を見せたカージナルスのメイソン・ウィンが初受賞。ドジャースのムーキー・ベッツはファイナリスト入りしたものの、惜しくも受賞を逃した。

 今季の受賞者は以下の通り。8人が初受賞となった。

アメリカン・リーグ 投手:マックス・フリード(ヤンキース)3年ぶり4度目 捕手:ディロン・ディングラー(タイガース)初受賞 一塁手:タイ・フランス(ツインズ/ブルージェイズ)初受賞 二塁手:マーカス・セミエン(レンジャーズ)4年ぶり2度目 三塁手:マイケル・ガルシア(ロイヤルズ)初受賞 遊撃手:ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)2年連続2度目 左翼手:スティーブン・クワン(ガーディアンズ)4年連続4度目 中堅手:セダン・ラファエラ(レッドソックス)初受賞 右翼手:ウィルヤー・アブレイユ(レッドソックス)2年連続2度目 UT:マウリシオ・デュボン(アストロズ)2年ぶり2度目

ナショナル・リーグ 投手:ローガン・ウェブ(ジャイアンツ)初受賞 捕手:パトリック・ベイリー(ジャイアンツ)2年連続2度目 一塁手:マット・オルソン(ブレーブス)6年ぶり3度目 二塁手:ニコ・ホーナー(カブス)2年ぶり2度目 三塁手:キブライアン・ヘイズ(パイレーツ/レッズ)2年ぶり2度目 遊撃手:メイソン・ウィン(カージナルス)初受賞 左翼手:イアン・ハップ(カブス)4年連続4度目 中堅手:ピート・クロウ=アームストロング(カブス)初受賞 右翼手:フェルナンド・タティスJr.(パドレス)2年ぶり2度目 UT:ハビアー・サノーハ(マーリンズ)初受賞

 なお、マイナーリーグのゴールドグラブ賞も発表され、以下の選手たちが受賞した。

投手:ロビー・スネリング(マーリンズ) 捕手:レオナルド・バーナル(カージナルス) 一塁手:トレイ・モーガン(レイズ) 二塁手:カイル・デバージ(ツインズ) 三塁手:ペドロ・ラミレス(カブス) 遊撃手:コナー・グリフィン(パイレーツ) 外野手:ルイス・ララ(ブルワーズ) 外野手:ドリュー・ジョーンズ(ダイヤモンドバックス) 外野手:ホーマー・ブッシュJr.(レイズ)

2025.11.3 11:40 Monday

各球団の新監督が続々決定 監督不在はパドレス、ブレーブス、ロッキーズのみ

 ワールドシリーズで最終戦までもつれる熱い戦いが繰り広げられた一方、ワールドシリーズに出場できなかった各球団は2026年シーズンに向けた準備に取りかかっている。

 パイレーツは5月にデレック・シェルトン監督が解任されたあと、暫定監督を務めていたドン・ケリーとの契約を延長し、正式に監督とすることを決定。ブルース・ボウチー監督が退任したレンジャーズはスキップ・シューマッカー、ロン・ワシントン監督が退任したエンゼルスはカート・スズキ、ボブ・メルビン監督を解任したジャイアンツはトニー・ビテロ、ロッコ・バルデリ監督を解任したツインズはシェルトンが新監督に就任した。

 また、オリオールズはトニー・マンソリーノ暫定監督の続投ではなく、クレイグ・アルバーナスが新監督に就任することが決定。ナショナルズもミゲル・カイロ暫定監督の続投ではなく、33歳のブレイク・ビュテラを新監督として採用した。

 こうして新監督探しを必要としていた10球団中7球団の監督が決定し、2日(日本時間3日)時点で監督不在はパドレス、ブレーブス、ロッキーズの3球団だけとなった。

 マイク・シルト監督が退任したパドレスは、すでに新監督探しが最終段階に突入していることが明らかになっている。投手コーチのルーベン・ニエブラのほか、アルバート・プホルスとニック・ハンドリーが最終候補として残り、ほかにも1~2人の候補がいるようだ。「ニューヨーク・ポスト」のジョン・ヘイマン記者は、通算703本塁打の名打者プホルスが「真剣な候補として検討されている」ことを報じている。

 ブライアン・スニッカー監督の退任が決まったブレーブスは、ドジャースのベンチコーチを務めるダニー・レーマンを新監督の第1候補としているようだ。ワールドシリーズが終了したため、今後ブレーブスとレーマンの交渉が本格化していくとみられる。MLB.comでブレーブスの番記者を務めるマーク・ボーマンによると、レーマン以外の候補として、ジョージ・ロンバード(タイガース・ベンチコーチ)、ライアン・フラハティ(カブス・ベンチコーチ)、クリス・ウッドワード(ドジャース・一塁ベースコーチ)の名前も挙がっているという。

 ロッキーズは5月にバド・ブラック監督を解任し、それ以降はウォーレン・シェーファーが暫定監督を務めた。ビル・シュミットGMが辞任したため、現在は新たなGM探しを進めており、新監督は新GMのもとで決定されることになる。よって、新GMが決まるまで、新監督探しに大きな動きはなさそうだ。

2025.11.3 09:29 Monday

キケ、ロハスら137選手がFAに WS終了翌日、MLB選手会が発表

 激戦のワールドシリーズが終了し、MLBはオフシーズンに突入。2日(日本時間3日)、MLB選手会はフリーエージェント(FA)となった137選手のリストを公開した。

 21世紀初&球団史上初のワールドシリーズ連覇を成し遂げたドジャースからは、キケ・ヘルナンデス、ミゲル・ロハス、引退するクレイトン・カーショウら7選手がFAに。惜しくも32年ぶり3度目のワールドシリーズ制覇を逃したブルージェイズからは、ボー・ビシェット、マックス・シャーザーら6選手がFAとなった。

 最多はレンジャーズの12人。ツインズとカージナルスは1人だけで、マーリンズはFAとなった選手が1人もいなかった。また、日本人選手ではオリオールズの菅野智之が今回のリストに含まれている。

 なお、契約オプションの破棄、オプトアウト権の行使などにより、今後さらにFA選手が増える可能性がある。

 2日(同3日)時点でMLB選手会が発表したFA選手137人は以下の通り。

オリオールズ(3人) ザック・エフリン ゲーリー・サンチェス 菅野智之

レッドソックス(4人) スティーブン・マッツ ダスティン・メイ ロブ・レフスナイダー ジャスティン・ウィルソン

ヤンキース(8人) ポール・ブラックバーン ポール・ゴールドシュミット トレント・グリシャム アメッド・ロサリオ オースティン・スレイター ルーク・ウィーバー デビン・ウィリアムス ライアン・ヤーブロー

レイズ(2人) エイドリアン・ハウザー ココ・モンテス

ブルージェイズ(6人) クリス・バシット ボー・ビシェット セランソニー・ドミンゲス タイ・フランス アイザイア・カイナー=ファレファ マックス・シャーザー

ホワイトソックス(3人) タイラー・アレクサンダー ミゲル・カストロ マイケル・A・テイラー

ガーディアンズ(2人) ジェイコブ・ジュニス レーン・トーマス

タイガース(6人) アレックス・カッブ カイル・フィネガン トミー・ケインリー ラファエル・モンテロ クリス・パダック グレイバー・トーレス

ロイヤルズ(4人) アダム・フレイジャー ハンター・ハービー ルーク・メイリー マイク・ヤストレムスキー

ツインズ(1人) クリスチャン・バスケス

アスレチックス(3人) ホセ・レクラーク スコット・マクガフ ショーン・ニューカム

アストロズ(4人) ビクター・カラティニ クレイグ・キンブレル ブレンダン・ロジャース フランバー・バルデス

エンゼルス(10人) タイラー・アンダーソン アンドリュー・チェイフィン ルイス・ガルシア カイル・ヘンドリックス ケンリー・ジャンセン ヨアン・モンカダ ルイス・レンヒーフォ ハンター・ストリックランド クリス・テイラー ホセ・ウレーニャ

マリナーズ(4人) ケイレブ・ファーガソン ルーク・ジャクソン ジョシュ・ネイラー エウヘニオ・スアレス

レンジャーズ(12人) ショーン・アームストロング パトリック・コービン ダニー・クーロム ジョン・グレイ メリル・ケリー タイラー・マーリー クリス・マーティン フィル・メイトン ホビー・ミルナー ディラン・ムーア ドノバン・ソラーノ ラウディ・テレズ

ブレーブス(4人) ライセル・イグレシアス チャーリー・モートン マーセル・オズナ コナー・シーボルド

マーリンズ(0人)

メッツ(8人) グリフィン・キャニング ライアン・ヘルズリー スターリング・マルテ セドリック・マリンズ タイラー・ロジャース グレゴリー・ソト ライン・スタネック ジェシー・ウィンカー

フィリーズ(9人) ウォーカー・ビューラー マックス・ケプラー ティム・メイザ J・T・リアルミュート デービッド・ロバートソン ジョーダン・ロマノ カイル・シュワーバー レンジャー・スアレス ルー・トリビーノ

ナショナルズ(3人) ジョシュ・ベル ポール・デヨング デレック・ロー

カブス(10人) ライアン・ブレイジャー ウィリー・カストロ アーロン・シバーリ ブラッド・ケラー ドリュー・ポメランツ テイラー・ロジャース カルロス・サンタナ マイケル・ソロカ ケイレブ・シールバー カイル・タッカー

レッズ(5人) ミゲル・アンドゥハー ザック・リテル ニック・マルティネス ウェイド・マイリー エミリオ・パガン

ブルワーズ(2人) シェルビー・ミラー ジョーダン・モンゴメリー

パイレーツ(2人) アンドリュー・マカッチェン トミー・ファム

カージナルス(1人) マイルズ・マイコラス

ダイヤモンドバックス(3人) ジャレン・ビークス ザック・ギャレン ジェームス・マッキャン

ロッキーズ(2人) オーランド・アルシア ヘルマン・マルケス

ドジャース(7人) マイケル・コンフォート アンドリュー・ヒーニー キケ・ヘルナンデス クレイトン・カーショウ マイケル・コペック ミゲル・ロハス カービー・イェーツ

パドレス(6人) ルイス・アライズ ディラン・シース ネスター・コルテス ホセ・イグレシアス マーティン・マルドナード ライアン・オハーン

ジャイアンツ(3人) ウィルマー・フローレス ドミニク・スミス ジャスティン・バーランダー

2025.11.3 08:46 Monday

山本由伸の第6戦の好投を分析 強力打線を2度も抑えた理由

【ブルージェイズ1-3ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月31日(日本時間11月1日)

 ブルージェイズに王手をかけられて迎えたワールドシリーズ第6戦で、ドジャースは3-1で勝利。光ったのは山本由伸(27)の6回1失点の好投だった。「オプタスタッツ」によれば、ポストシーズンで3先発連続で5安打以下、1失点以下、1四球以下、5三振以上に抑え、そして勝利投手になったのは今ポストシーズンの山本が史上初だという。

 しかし、連続の完投勝利を挙げた過去2試合と比べ、第6戦では走者を背負う場面も多かった。しかし、山本は素晴らしい粘りを見せ、強力ブルージェイズ打線をわずか1失点に封じ、ドジャースをがけっぷちから救った。この日の山本の投球について、データも交えて振り返る。

 第6戦で山本は1巡目からすべての球種を満遍なく投じた。これは完投勝利を挙げた過去2戦とは全く異なる傾向だ。

 過去2戦の完投勝利では、1巡目から4巡目まで中心として組み立てる球種を変え、打順ごとに違う投手のように変貌していた。

 ブルワーズ戦では1巡目を3つのファストボール主体で組み立てた。フォーシームを全球種中最多の33%の割合で投じ、日頃は第4、5球種のカットボールとシンカーも合わせて30%に増やし、速球系だけで63%と力で押した。しかし、2巡目からは得意のスプリットを前面に押し出し、最多の37%を投じた反面、レギュラーシーズン中最も多くの割合で投げたフォーシームは1巡目から17%に半減。カットボールも17%の割合で投げた。

 打者の目が慣れてくる3巡目は再びフォーシームを復活させ、最多の34%に増やし、スプリットとカーブの3球種で攻めるレギュラーシーズン中と同様のスタイルに回帰した。そして試合を締めくくる4巡目ではフォーシームを減らし、決め球のスプリットとカーブだけで70%の割合を占めた。そしてそれまで全く投じていなかったスライダーを12%の割合で投げ始め、一転して変化球主体のスタイルになった。

 一方のブルージェイズとのワールドシリーズ第2戦では、1巡目でスプリットを52%の割合で投じる大胆な配球を見せた。そして2巡目はフォーシームを最多の36%で投じ、カットボール、スライダー、シンカーの割合も増やし、6球種すべてを投げた。

 さらに3巡目になると、投球の主体となったのはなんと33%の割合で投げたカットボールで、一方でスプリットは13%まで減らした。試合の終盤に差し掛かる4巡目では、最も頼れるスプリットを再び増やし、35%の割合で投げた。

 シーズン中は用いなかったカットボール、スライダー、シンカーを多投する打順も作る一方で、ポストシーズンから最も多く投げているスプリットでここぞの場面を乗り切る。それが山本の過去2戦の傾向だった。

 しかし、第6戦では3巡の対戦すべてで6球種をバランスよく投じた。過去2戦において、6球種すべてを用いたのは8巡の対戦のうち、わずか1巡(ブルージェイズ戦の2巡目)しかなかった。

 第6戦における各打順の投球割合を見てみよう。

 1~3巡すべての打順で、山本が最も多投したのはスプリットだった。そして2番目がフォーシーム、3番目がカーブと、主要3球種の投球割合は変わらなかった。

 つまり、山本はこの第6戦では、自分が最も得意とする球種構成で常にブルージェイズ打線に挑み続けていた。ただ、第6戦では1巡目に41球(ブルージェイズとの第2戦では33球、ブルワーズ戦では24球)を要していた。つまり、長いイニングを投げることを狙って配球にバリエーションをつける余裕がなかった可能性も考えられる。しかし、自分が最も得意とするスプリット主体の球種構成で挑む配球は、試合の随所で垣間見えた。

 「困ったらスプリット」。それが第6戦の山本の特徴であり、その狙いはまさに的中していた。山本は走者を背負った場面では51.6%の割合でスプリットを投じていた。そのうち、10度のスイングを誘って空振り5度、ファウルが2度、凡打が3度と、効果は絶大だった。

 象徴的だったのが最後の対戦だった六回2死一、二塁でのドールトン・バーショとの対戦だ。山本は4球すべてスプリットで挑み、見事に空振り三振に抑えた。 山本自身も「前回に続いての対戦だったので、相手の待ち方だったり、どういう球を狙ってくるかとか、多少探りながら投げた配球も多かったです。探りながらになったので、ちょっと迷った時はスプリットを行くことが多かったです。結果的に最少失点で抑えられたので良かったと思います」と振り返った。

 そして、スプリット主体のスタイルを貫いたこと以外で印象的だったのは、初球の入りだ。山本は初球から仕掛ける積極打法で戦局を変えてきたブルージェイズ打線に対し、語った通り「探りながら」も、大胆に初球から攻めた。

 この第6戦で山本は初球ストライク率74%を記録。これは過去2度の完投勝利を挙げた試合よりも高く(ブルワーズ戦が69%、ブルージェイズ戦が63%)、レギュラーシーズンと合わせた今季の全35先発の中でも3番目に高い割合だった。

 とはいえ、山本は第6戦でストライク先行で投げられたわけではなかった。ストライク率は66%と、70%を超えた過去2戦と比べて低下。過去2戦では3ボールまでカウントがもつれたのはわずか4打席しかなかったが、第6戦だけでも6打席も3ボールまでもつれた。特に、見逃しストライクを取る大きな武器となっていたカーブが18球投げて見逃しストライク3度、空振りもわずか1度とやや精細を欠いていたのが響いていたかもしれない。

 しかし、コマンドが過去2戦に比べて低下していたからこそ、初球のストライクがもたらした意味は大きかったと言えるだろう。

 山本は積極的なブルージェイズ打線に対し、初球ストライクを奪う上で慎重を期していた。ブルージェイズと対戦した第2、6戦では、打席の初球で6つの球種すべてを用いた。レギュラーシーズン中、打席の初球で6球種すべてを用いたのは、30先発中5先発にとどまる。ブルワーズ戦でも初球では得意のスプリットとカーブを多投し、実に75%をその2球種だけで占めていた。

 しかし、ブルージェイズとの2戦では、より読まれにくいように予想外の球種を投じる割合が増加。スプリットとカーブを初球に投じた割合は50%に、レギュラーシーズン中は最も初球に多く投じたフォーシームも18%に抑えた一方で、主要3球種以外の3球種(カットボール、シンカー、スライダー)を30%に増やした。

 このポストシーズンにおいてブルージェイズ打線と対した山本以外の先発投手の防御率は、実に9.00(53回、53自責点)に上る。一方で山本の防御率は1.20で、ブルージェイズと対戦した12人の先発投手の中でも最も低く、ブルージェイズ打線を手玉に取った唯一の投手だったと言える。

 山本の好投に救われたドジャースが第7戦を制して連覇を成し遂げれば、ワールドシリーズMVPが誰かという議論はそう長くかからないはずだ。山本はこのポストシーズンでの活躍で、タリック・スクーバル(タイガース)やポール・スキーンズ(パイレーツ)といった球界トップクラスの投手に引けを取らない実力の持ち主であることを完全に証明したように映る。

2025.11.1 19:06 Saturday

第6戦を決着させたダブルプレー 数字で見るキケのスーパープレー

【ブルージェイズ1-3ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月31日(日本時間11月1日)

 ドジャースは九回、2点のリードを保っていた。1死二、三塁で打席にはワールドシリーズ制覇を決める決勝点の走者となるヒメネスが入った。ヒメネスはグラスナウの直球を逆方向に飛ばすと、二塁走者バージャーはハーフウェイで待機し、もしボールが落ちれば同点打を狙えると踏んだ。

 「落ちるな」ドジャースのデーブ・ロバーツ監督がそのとき考えていたのは、それだけだったと記憶している。「落ちるな」

 ボールは落ちなかった。そしてバージャーは二塁に戻れなかった。そしてドジャースはワールドシリーズ第6戦に3-1で勝利し、フォールクラシックは第7戦へと突入する。

 キケ・ヘルナンデスはポストシーズンで最高の瞬間を演出することで名声を博してきた。そして第6戦でも最も記憶に残る瞬間の一つを演出した。

 ヘルナンデスはヒメネスのライナーをジャンプして捕球し、そのままワンモーションで二塁へ送球。ショートバウンドになった送球を二塁手ミゲル・ロハスが巧みに捕球した。

 そしてバージャーはアウトになり、ドジャースが勝利。送球の勢いのまま内野に到着したヘルナンデスは、遊撃手のムーキー・ベッツに飛びつかれた。 「かなり壮大な結末だ」と、ロハスは言った。

 冗談ではなく、これはまさにヘルナンデスの活躍による史上最高のエンディングだった。まずは完ぺきなポジショニングから見ていこう。

・ヘルナンデスはヒメネスと272フィートの深さで対戦したが、これは今季左打者に対してレフトが守る平均よりもなんと26フィートも浅い。 ・これはある程度、パワーが脅威ではないヒメネスのせいだ。ヒメネスに対するレフトの守備位置は平均で285フィートで(158人中151位の浅さ) ・ヘルナンデス自信は浅く守ることを好む。平均の左打者に対する守備位置は285フィート(119人中107位の浅さ)。 ・それでもヘルナンデスは平均よりさらに浅く守った。ヘルナンデスはワールドシリーズでヒメネスに対して平均273フィートの位置で守っている。ドジャースの他のレフトに比べると、24フィートも浅い。

 「グラスナウの持ち球からすると、左側に打球が飛んでくると予想していた。二塁に同点の走者がいたから、浅めに守っていた。ショートを抜けるヒットを打たれたら、二塁の同点の走者を三塁にとどめられるくらいに浅く守っていたかった」と、ヘルナンデスは振り返る。

 ヘルナンデスのポジショニングは完ぺきだった。プレーそのものも完ぺきだった。ヘルナンデスはそれでもかなりの距離を、正確には3.4秒で52フィートを走破する必要があった。バットを振った瞬間の読みは絶妙だった。ヘルナンデスは想像を絶する最高のスタートを切り、バージャーが予想だにしなかったキャッチを決めた。

 「彼(ヘルナンデス)がボールにたどり着いたことには本当に驚いた。最初はショートの頭上を越えるだろうと思った。まさかあんなに飛ぶとは思わなかった。読みが悪かったんだ。明らかにベースから離れすぎていた。・・・攻めすぎていた」と、バージャーは語る。

 スタットキャストによれば、ヘルナンデスの「ジャンプ」はリーグ平均より7.3フィート優れていた(「ジャンプ」とは、ボールが打たれてから最初の3フィート以内に正しい方向に足を踏み出した距離と定義)。もしヘルナンデスの「ジャンプ」がこれより劣っていても捕球自体は成功していたかもしれないが、それではバージャーを間一髪でダブルプレーにすることはできなかっただろう。

 そして、このプレーの最後の場面に移ろう。これは決して見逃せない部分だ。ヘルナンデスはできるだけ早くボールを持ち替えようとした。送球は正確だったが、途中でバウンドしてしまった。 「全速力で走っていたから、あまり強く投げたくなかった。おそらく頭上に投げてしまうと思ったから」、とヘルナンデスは振り返る。

 しかし、送球を受けたロハスはこう言った。 「ヘルナンデスがボールを二塁に投げたとき、私は『このボールは絶対に逸らさない』と言ったんだ」

 実際、ロハスの巧みな捕球が第6戦の勝利を決定づけた。左足でベースを踏み、グラブを出すのを我慢したことで、ボールの跳ね方を読む時間を稼いだ。バージャーの左手がベースに触れるほんの一瞬前に、ロハスはグラブの中でボールを握りしめた。

 ロジャースセンターが静まり返る中、ドジャースの選手たちがダグアウトから続々と出てきた。審判団がリプレイ確認中を告げると、球場のファンに一瞬の希望が蘇った。間もなく、バックスクリーンに決定的な映像が映し出された。球場から観客が減り始めると、ドジャースの選手たちは次々と抱擁と握手を交わした。

 「素晴らしいワールドシリーズだ。第7戦までもつれ込むのは当然だ」と、ヘルナンデスは言う。それは主にヘルナンデス自身のおかげだ。

 「すごい選手だ。すごいプレーだった」と、ロバーツ監督。勝負はあすの第7戦に持ち込まれた。

2025.11.1 17:13 Saturday

ドジャースがWS第6戦を取る 山本が6回1失点、劇的な幕切れで逆王手

【ブルージェイズ1-3ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月31日(日本時間11月1日)

 ブルージェイズが3勝2敗と王手をかけて迎えたワールドシリーズ第6戦は、山本由伸(27)が粘りの好投でドジャースを勝利に導いた。山本は走者を背負いながらも要所を締め、6回1失点をマーク。その後もドジャースのブルペン陣はピンチを招きながらも決定打を許さず、最後は佐々木朗希(23)が6アウトセーブを挙げた。ドジャースとブルージェイズは3勝3敗に並び、あす運命の第7戦を迎える。

 ブルージェイズ先発のケビン・ゴーズマンは序盤から絶好調で、二回までに6三振。三回も先頭を三振に仕留めたが、続くエドマンに二塁打を浴び、2死二塁で大谷を迎えた。ゴーズマンは大谷翔平を申告敬遠したが、続くスミスにタイムリー二塁打を浴びて1点を失った。そして二、三塁からフリーマンを歩かせると、不振のベッツにも2点タイムリーを打たれ、0-3とリードされた。

 一方のブルージェイズ打線も、直後の三回の攻撃でスプリンガーがタイムリーを放ち、ドジャース先発の山本由伸から1点を返した。

 ドジャースが3-1とリードした三回以降は、山本とゴーズマンが好投。ゴーズマンは3点を失った三回以外はすべて三者凡退に抑え、6回3失点、8三振、2四球とクオリティスタート。三回までに奪った8三振は、ワールドシリーズ記録タイに並ぶなど、大一番で実力を発揮した。

 しかし、山本が粘りの投球でまたしてもゴーズマンを上回った。三回から毎回走者を背負ったが、ピンチの場面ではスプリットを多投して失点を1にとどめた。最後のイニングとなった六回には、2死からゲレーロJr.に二塁打を浴び、四球で一、二塁のピンチを背負ったが、バーショを全球スプリットで空振り三振に仕留めた。山本は6回1失点、6三振、1四球で降板。がけっぷちのチームを救う好投を見せた。

 試合は3-1のまま終盤に突入し、ドジャースは2番手ロブレスキーが七回を抑えたあと、八回から佐々木朗希を投入。佐々木は先頭のスプリンガーに不運な安打を許し、1死からゲレーロJr.に四球を与えて、一、二塁のピンチを招いた。しかし、後続のビシェットとバーショを打ち取って無失点。

 しかし九回は先頭から死球と二塁打を与え、無死二、三塁のピンチを背負ったところで佐々木は交代となり、第7戦先発予定だったタイラー・グラスナウが4番手として登場した。グラスナウはクレメントをファーストフライ、続くヒメネスもレフトライナーも打ち取った。ここで二塁走者バージャーが飛び出したのを見逃さず、レフトのキケ・ヘルナンデスが素早い送球でダブルプレーを奪い、ゲームセット。劇的な幕切れでドジャースは逃げ切り、連覇に望みをつないだ。

2025.11.1 14:04 Saturday

エンゼルスがマダックス投手コーチをレンジャーズから引き抜き

 新監督カート・スズキを迎えたエンゼルスが、新たな投手コーチを見つけた。エンゼルスは31日(日本時間11月1日)、バリー・エンライト前投手コーチの後任として、マイク・マダックス氏がレンジャーズから就任すると発表した。

 マダックス氏はレンジャーズに3シーズン在籍し、2023年に球団初のワールドシリーズ制覇に貢献。64歳のマダックス氏は、ブルワーズ(2003~2008年)、レンジャーズ(2009~2015年、2023~2025年)、ナショナルズ(2016~2017年)、カージナルス(2018~2022年)で投手コーチを務めており、豊富な経験を持つ。また、殿堂入り投手グレッグ・マダックスの兄である本人も、MLBで投手として15年のキャリアを誇る。

 名伯楽として知られ、今季指導したレンジャーズの先発投手陣はMLBトップの防御率3.41を記録。ブルペン陣も短期契約の投手が大半を占めながら、MLB5位の防御率を残した。

 マダックス氏の新たな課題は、MLBワースト3位の防御率4.89を記録したエンゼルス投手陣の再建だ。K/BB(三振率と四球率の比率)も10.6%と、ロッキーズしか下がいないMLBワースト2位を記録している。

 右腕のホセ・ソリアーノ、左腕の菊地雄星、リード・デトマーズだけが先発ローテーションの確実なメンバーであり、ベテランクローザーのケンリー・ジャンセンもフリーエージェント(FA)で流出することが予想され、その陣容は固まっていない。マダックス氏は、チームに多くいる若手投手のケイデン・デイナ、ジョージ・クラッセン、サム・アルデゲリ、ライアン・ジョンソン、クリス・コルテス、そして今季のドラフト全体2位指名のタイラー・ブレムナーらの育成を担う。

 しかし、マダックス氏のこれまでの実績を考えれば、特にブルース・ボウチー監督の下で3年間の成功を収めたあと、ライバルチームから引き抜いたのはエンゼルスにとっては大きな採用だ。

2025.11.1 11:08 Saturday

ナショナルズ新監督に33歳ブテラ氏が就任か 53年ぶりの最年少監督に

 ナショナルズが次期監督を決定し、33歳のブレイク・ブテラ氏を任命すると見られている。球団はまだこの報道を認めていない。分寺は1992年8月7日生まれで、MLBでは1972年以来、最も若い監督となる。

 ブテラ氏はレイズで2023年10月に選手育成担当シニアディレクターに昇進。レイズのファーム組織のディレクターを務め、選手育成にかかわっていた。

 それ以前はレイズでアシスタントフィールドコーディネーターを1年間、マイナーリーグのコーチを1年間務めたあと、1Aのチャールストンと1A-ハドソンバレーでマイナーの監督を歴任。2018年には25歳でマイナーリーグ史上最年少の監督となった。

 ブテラは選手時代、ボストン大学から2015年ドラフト35巡目でレイズに入団。ブランドン・ラウやジェイク・クロネンワースと同期で入団し、マイナーで2シーズンプレーした経験がある。

 ナショナルズは10月、ポール・トボニを新たに球団編成部長に任命し、長年続いたマイク・リゾーGM体制から新時代へ移行した。

 トボニ編成部長は新監督にMLBでの監督経験が求められるかどうかについて「考慮すべき要素の一つではあるが、すべてではないのは確かだ。様々なスポーツで、初めての就任で成功を収めた監督やヘッドコーチは数多くいる。また、一度は失敗しても、二度目のチャンスを得て大成功を収めた監督やヘッドコーチもいる。だから、考慮すべき要素ではあるが、決してすべてではない」と、必ずしも経験にこだわるわけではないと明かしていた。

 ブテラ氏はボストン大でコミュニケーション学の学位を取得している。また、野球家系の出身で、父と兄もドラフト指名を受けている。

 そして、2023年ワールドベースボールクラシック(WBC)では、マイク・ピアッツァ監督の下、イタリア代表のベンチコーチを務めた。

 ピアッツァ氏は「素晴らしい採用だと思うし、本当に嬉しい。ブテラ氏は非常に忠実で、勤勉で、効率的で、献身的な野球人だ。その知識と物腰は尊敬を集めている。常に選手たちが成功できるよう尽力して​​くれるだろう。彼と一緒に仕事ができて光栄だった」と、ブテラ氏に太鼓判を押す。

 ナショナルズは新時代への転換期にあり、2019年の優勝監督デーブ・マルティネスを7月に解任。暫定監督を務めたミゲル・カイロとも契約を更新せず、新監督を探していた。

 ナショナルズは2025シーズンを66勝96敗で終え、過去6シーズンで5度目の最下位と辛酸を嘗めた。得点力はリーグワースト3位、防御率はMLBワースト2位と、投打ともに実力不足が否めない。

 一方で、将来性豊かなチームでもある。選手の平均年齢はMLBで2番目に若く、スター候補も多い。この数年間は世代交代を進めており、ブテラ新監督より年上の選手は右腕トレバー・ウィリアムズ(1992年4月生まれ)のみ。先日は小笠原慎之介(28)を40人枠から外すなど(アウトライト)、未来へ向けた舵取りを行っている。

 ブテラ新監督は、外野手ジェームズ・ウッド(23歳)、遊撃手CJ・エイブラムス(25歳)、左腕マッケンジー・ゴア(26歳)といった若い選手の才能を最大限に引き出し、再建を進めることが期待される。

 また、このニュースを受けてオリオールズの新監督に就任したクレイグ・アルバーナス氏もエールを送った。マイナーリーグではコーチとして同僚だったブテラ氏に対し、アルバーナス氏は「私の相棒!素晴らしい人間であり、友人であり、夫であり、そして師。リーグの他のメンバーもこの衝撃に備えてくれているといいな。兄弟、誇りに思うよ」と、Xに綴った。

2025.10.31 14:31 Friday

山本由伸、2試合連続完投の要因とは 多彩な武器とコントロールを活用

 先発投手がポストシーズンで完投するのは、現代では非常に珍しい。2試合連続となるとなおさらだ。

 しかし、完投から中1日で登板可能だったゴムのような右腕を持つ山本由伸は、それを成し遂げた。そしてワールドシリーズ敗退の瀬戸際に立つドジャースは、第6戦でも山本に3度目の快投を期待している。

 3試合連続完投の偉業を成し遂げられるとすれば、それは山本だ。山本が最後にこのような状況に置かれたとき、2023年の日本シリーズの第6戦では14三振、138球の完投劇を見せた。

 ここでは山本のポストシーズンの投球を分析。快投の要因は何だろうか。

山本は2つの決め球を完ぺきにコントロールしている

 山本の得意の変化球、スプリットとカーブはポストシーズンで最高のパフォーマンスを見せている。山本はまさに狙った場所にこの2球種を投げ込んでくる。

 山本のスプリットはストライクゾーンの端(左打者には外角、右打者には内角)に綺麗に集められている。ストライクゾーンの端に投げ込まれると、打者は思わず振りたくなるが、正確に投げ込まれると空振りかゴロに終わる。

 この2試合で、山本が投げたスプリットの56%はエッジゾーン(ストライクゾーンの境界線から野球ボール1球分の幅以内の位置)に投げられた。スプリットはストライクゾーンよりかなり下にボール球を追いかけさせるために投げられることが多いため、この割合は非常に高い。ポール・スキーンズ(パイレーツ)のスプリンカーのように、これほど頻繁にエッジにスプリットを投げる投手はごくわずかだ。山本でさえ、レギュラーシーズン中はエッジにスプリットを投げたのは「わずか」43%だった。

 山本のカーブはそれと少し変わっている。彼のカーブは、カウント序盤にゾーンに投じてストライクを取り、カウントが整うとコーナーからボールゾーンに追いかけさせるために投げられている。

 山本が2試合で投げたカーブの半分以上、58%はストライクゾーンに入っていた。スプリットがエッジゾーンへの投球率が異例に高かったのと同様に、ゾーン内投球率もカーブとしては非常に高い(対照的な例として、山本のチームメイトであるブレイク・スネルを見てみよう。スネルのカーブは打者にボールの上を振らせるため、ほとんどの場合、ゾーン外の低めのカーブを投げている)。

 山本のカーブは鋭い変化ゆえにゾーン内で機能している。カーブの変化量は、横変化が12インチ(30センチ)、縦変化が16インチ(41センチ)あり、平均より横変化が3インチ(8センチ)、縦変化が6インチ(15センチ)も大きい。

 山本のカーブはスプリットと同様に三振とゴロの両方を狙える。三振はブルージェイズのような危険な打線をローリスクに抑える手段であり、ゴロは少ない球数で試合を進める手段となる。

 山本は2度の完投で15三振のうち8三振をカーブとスプリットで奪った。ゴロによるアウトも16度を数えた。山本は今季、ゴロで2桁のアウトを記録した試合が3度あり、そのうち2試合は直近2試合の完投だった。これは主にスプリットとカーブのおかげだった。

山本は配球パターンを変えられる

 ただ、完投するためには、相手打線と少なくとも3巡、場合によっては4巡打ち取らなければならない。そして同じ球種を何度も投げ続けていれば、それは不可能だ。

 現代野球では、対戦回数が増えるほどに投手が不利になっていくことが分かっている。対戦回数が増えるほど、打者は目を慣らし、投手を打てるように鳴っていく。昨今のポストシーズンでは先発投手が早く降板することが当たり前になっている。

 山本はスプリットとカーブに頼り切りにならず、バリエーションを増やしている。ブルワーズとの試合では、

・序盤はフォーシーム、カーブ、スプリット、カットボール、シンカーをバランスよく組み合わせた。 ・3巡目は序盤に多用しなかったフォーシーム、スプリット、カーブに頼った。 ・試合終盤にはこれまで使っていなかったスライダーを織り交ぜた。 ・相手の打順ごとに最も多く投げた球種を変えた。フォーシーム、スプリットをそれぞれ交互に多用。

 一方で、ブルージェイズとの試合では、

・危険なブルージェイズ打線に対し、序盤は最も得意なスプリットを多用。 ・2巡目はフォーシーム主体だったが、唯一6球種すべて織り交ぜた。 ・3巡目はそれまでほとんど投げなかったカッターを用い、ブルージェイズ打線を驚かせた。 ・中盤でスプリットを減らしたあと、終盤でスプリットを復活させた。ただ多用した序盤よりバランスよく投じた。

 山本は打順ごとにレパートリーを組み替えた。第6戦でも同様の戦略で挑むだろう。

予測不可能なストライクとアウトを奪う

 山本の6球種を織り交ぜるスタイルは、多くの球種を織り交ぜる昨今のトレンドと一致しており、有利に働いている。

 6球種をバランスよく織り交ぜれば、試合が進むにつれて打者の目が慣れるという弊害を軽減できる。

 しかし、山本はどんなカウントでもすべての球種を投げられることで、打者をより効果的に攻められている。

 ポストシーズンでは浅いカウントで幅広い球種を投じ、ストライクやアウトを奪うことができている。

 山本は最初から最後まで最高の球種だけで打席を乗り切っているわけではない。カウント序盤からすべての球種を投げ込んでいる。

 例えば、カッターを投げることで、山本は左打者を寄せ付けず、あるいは右打者をカウント序盤に弱い打球をゴロに仕留めることができた。山本は2度の完投でカットボールで6度のゴロアウトを誘った。そのうち5度は打席の最初の2球以内に生まれたものだった。

 山本はカウント序盤から多彩な球を投げるため、フォーシームばかり投げているわけではない。ブルワーズとブルージェイズに対して初球でフォーシームを投じたのは合計9度のみで、打席開始から2球目までのフォーシーム投球率はわずか18%だった。打者はカウント序盤から山本のカッター、カーブ、スプリットといっ​​た球種にも備えなければならないため、フォーシームに狙いを定めることができなくなる。そのため、山本はカウント後半でもフォーシームで相手を仕留めることができるのだ。

 山本はすべての球種をストライクとして投げることができるため、カウントを有利にすることも、素早く打者を打ち取ることもできる。直近2試合では、初球のストライク率は66%、打席の40%以上はカウントが有利な状況で決しており、対戦した64打者のうち、3ボールまでもつれたのはわずか4打者のみだ。

 つまり、山本の勝利の公式とは、9イニング連続で投げても相手に有利に立てる多彩な武器と、それを操るコントロールにある。第6戦でも同様にブルージェイズ打線を抑えられるだろうか。

2025.10.31 14:08 Friday

MLB選手名鑑2025

MLB選手名鑑2025

MLB公式オンラインストア

菅野智之 オリオールズグッズ