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大谷の通算250本塁打など2025年シーズンに達成された大記録を紹介

 MLBの才能豊かな選手たちにとって、毎年訪れるシーズンは自身の可能性を最大限に発揮する絶好の機会だ。シーズンが始まるときに、これから始まる162試合の中でどんな記録が達成されるかを予想するのは、常に楽しいもの。しかし、シーズンが終わるときには、予想もしなかったような大記録が達成されることもある。

 ここでは2025年シーズン中にマイルストーン(節目の記録)を達成した10人の選手を順番に見ていこう。

スペンサー・ストライダー:通算500三振

 ストライダーは昨季までに通算329回2/3で495三振を記録。通算500三振の達成は目前で、MLBの公式記録を扱うエライアス・スポーツ・ビューロー社によると、全登板の50%以上に先発した投手の中では史上最少イニングで500三振を達成する見込みだった。4月16日の今季初登板、ストライダーは五回の先頭打者から三振を奪い、通算334イニングで500三振を達成。フレディ・ペラルタの372イニングを大幅に更新し、主に先発を務めた投手としては史上最速の通算500三振達成となった。

フアン・ソト:27歳未満と28歳未満の歴代最多四球

 ソトは昨季までに通算769四球を記録。これは26歳未満の選手としては歴代最多で、27歳未満の選手としてはミッキー・マントル(797四球)に次いで2番目に多かった。ソトがマントルの記録を塗り替えるまであと29四球。しかもソトは26歳になってからまだレギュラーシーズンの試合に1度も出場していない状態だった。

 5月6日、ソトは通算797個目と798個目の四球を選び、まだシーズンの大半が残っているにもかかわらず、27歳未満での歴代最多四球記録を更新した。その後、どうなったかというと、ソトは27歳の誕生日を迎える前に、28歳未満での歴代最多四球記録も塗り替えてしまった。28歳未満の記録もマントル(892四球)が保持していたが、ソトは9月23日に通算893個目の四球を選び、記録を更新。シーズン終了時点で896四球まで伸ばした。これは27歳未満の歴代最多記録であり、2026年シーズンには28歳未満の歴代最多記録をさらに伸ばしていくことになる。

大谷翔平:通算250本塁打

 大谷は昨季までにメジャー通算225本塁打を記録。6月14日、先頭打者アーチで通算249本とし、六回には通算250本塁打の節目に到達した。この時点で、大谷は通算156盗塁を記録。通算944試合目で250本塁打&150盗塁を達成したのは、アレックス・ロドリゲス(977試合)を上回って史上最速だった。なお、944試合のうち、大谷が打者として出場したのは928試合だけ。これはキャリア序盤、登板時には打席に立たなかったからである。打席に立たなかった試合を含めても、大谷の944試合は史上最速だった。

マット・オルソン:700試合連続出場

 6月26日、オルソンは2021年5月2日から続く連続試合出場を700まで伸ばした。シーズン終了時には782試合となり、これはメジャー史上12位の大記録。地区制が導入された1969年以降、オルソン以外に700試合連続出場を達成したのは、カル・リプケンJr.(2632試合:1982~98年)、スティーブ・ガービー(1207試合:1975~83年)、ミゲル・テハダ(1152試合:2000~07年)、ピート・ローズ(745試合:1978~83年)、デール・マーフィー(740試合:1981~86年)の5人だけだ。

クレイトン・カーショウ:通算3000三振

 殿堂入り確実の名左腕は、昨季までに通算2968三振を記録していた。7月2日、六回の3アウト目で通算3000三振の大記録に到達。3000三振は限られたエリートのみが到達できる領域であり、これまでに達成した20人のうち、まだ殿堂入りしていないのはロジャー・クレメンス、カート・シリング、カーショウ、マックス・シャーザー、ジャスティン・バーランダーの5人だけだ(カーショウ、シャーザー、バーランダーはまだ殿堂入りの資格がない)。1球団でキャリアを全うし、通算3000個以上の三振を奪ったのは、セネタース(現ツインズ)のウォルター・ジョンソン、カージナルスのボブ・ギブソンに続いてカーショウが3人目となった。

アーロン・ジャッジ:通算350本塁打

 ジャッジは昨季までに通算993試合で315本塁打を記録。デビューした2016年以降ではメジャー全体で最多本数だった。2024年には通算955試合目で300本塁打に到達し、これはメジャー史上最速。同じく史上最速での350本塁打達成も視野に入れていた。そして7月12日、通算1088試合目で350本塁打を達成。マーク・マグワイア(1280試合)を大幅に上回り、圧倒的なメジャー新記録を樹立した。

ピート・アロンソ:メッツの通算最多本塁打記録

 アロンソは昨季までにメッツ史上3位となる226本塁打を記録。2位のデービッド・ライト(242本)、1位のダリル・ストロベリー(252本)の記録に迫っていた。そして8月12日に通算253本目のホームランを打ち、メッツの球団記録を更新。シーズン終了後にオリオールズと契約してメッツ在籍期間を終えたため、アロンソの通算264本塁打がメッツの球団記録として残ることになった。アロンソのほかに、球団の通算最多本塁打記録を保持している現役選手は、エンゼルスのマイク・トラウト、マーリンズのジャンカルロ・スタントン(現在はヤンキースに在籍)、パドレスのマニー・マチャドの3人だけである。

ジャスティン・バーランダー:通算3500三振

 バーランダーは昨季までに歴代10位の通算3416三振を記録。8月10日、通算3500三振のマイルストーンに到達し、8月21日にウォルター・ジョンソン(歴代9位の3515三振)に並ぶと、8月26日にはジョンソンを抜いた。9月6日は通算3534三振のゲイロード・ペリーを抜き、歴代8位に浮上。シーズン終了時点で通算3553三振まで数字を伸ばした。

マイク・トラウト:通算400本塁打

 トラウトは昨季までに通算378本塁打を記録。史上59人目となる400本塁打達成が迫っていた。9月20日に通算400本塁打を達成し、400本塁打&200盗塁をクリアした史上15人目の選手に。さらに詳しく見てみると、35歳の誕生日を迎える前に400本塁打&200盗塁を達成したのは、アレックス・ロドリゲス、サミー・ソーサ、ウィリー・メイズ、ハンク・アーロン、バリー・ボンズ、レジー・ジャクソンに次いで7人目の快挙だった。

カル・ローリー:捕手とスイッチヒッターの最多本塁打記録

 これは2025年シーズン開幕前には誰も予想していなかった記録だ。捕手によるシーズン最多本塁打記録は2003年にハビー・ロペスが記録した42本だった。ローリーは捕手として49本塁打を放ち、ロペスの記録を更新。さらに指名打者として11本塁打を放ち、60本塁打の大台に到達した。主に捕手を務めた選手(出場試合の50%以上が捕手)によるシーズン最多本塁打記録は2021年にサルバドール・ペレスが記録した48本だったが、ローリーはその記録を大幅に更新。また、ローリーはスイッチヒッターであり、1961年にミッキー・マントルが記録した54本塁打のスイッチヒッター史上最多記録も塗り替えた。

2025.12.28 11:12 Sunday

メッツの有望株マクリーンが鮮烈なデビューを飾ることができた理由とは

 メッツの有望株右腕ノーラン・マクリーンは今季メジャーデビューして48イニングを投げ、数々の印象的な数字を残した。

 防御率2.06、FIP(守備の影響を除外して算出する疑似防御率)2.97を記録し、三振率と四球率の差21.8%は40イニング以上を投げた先発投手の中で17位タイの好成績だった。しかし、マクリーンの今季の成績を見る上で、注目すべき数字がほかに2つある。「60」と「30」だ。

 これは「ゴロ率60%」と「三振率30%」を意味している。先発投手がこの2つを両立するのは極めて珍しく、2024年の夏まで二刀流でプレーしていた新人投手が達成したのだから驚きだ。

 2008年以降のピッチトラッキング時代において、100打球以上の先発投手がゴロ率60%以上を記録するのはマクリーンが38人目。具体的には、マクリーンのゴロ率は60.2%だった。同じ投手が複数回記録した場合も含め、2008年以降に先発投手がゴロ率60%以上を記録したケースは66度ある。では、このうち何人が三振率30%以上を記録しているのだろうか。

 答えは「1人」だ。MLBパイプラインの有望株ランキングで全体11位・球団1位の評価を受けているマクリーンが初めてだった。

 マクリーンは三振率30.3%を記録。ゴロ率60%以上の投手で2番目に三振率が高いのは、ジャイアンツのエース右腕ローガン・ウェブで、2021年にゴロ率62.1%と三振率26.5%を記録した。マクリーン以前に「30-60」達成に最も近づいた先発投手はアストロズの右腕ランス・マカラーズJr.で、2016年にゴロ率58.7%と三振率30.1%を記録した。

 マクリーンは6つの球種を投げ分けるが、このユニークな組み合わせの成功の要因となったのは、主にシンカーとカーブの2球種だ。

 今季、この有望株右腕が90マイル台中盤のシンカーを投じた割合は27.9%に過ぎなかったが、それでも球種別の投球割合では最も多かった。インプレーの打球が40度あり、ゴロにならなかったのは8度だけ。80%という驚異的なゴロ率を記録し、全投手の25打球以上の全球種の中でメジャートップクラスの数字だった。

 マクリーンのカーブはゴロ率62.5%を記録したが、ゴロを打たせる以上に空振りを奪うボールとして見事に機能した。水平方向(横方向)の変化が大きく、50度のスイングで25度の空振り、つまり空振り率50%を記録。カーブで終わった27打席で19個の三振を奪っており、バットに当たったときもほとんど痛打されなかった。打たれたヒットは2本(いずれも単打)だけ。それ以外の打球6本はいずれも初速85マイル(約137キロ)未満だった。

 多くのゴロを打たせるのは良いことだ。多くの三振を奪うのはさらに素晴らしい。24歳の若さでその両方をこなせる投手はほかにいるだろうか。マクリーンを2026年の新人王最有力候補に挙げる者がいたとしても決して不思議ではない。

2025.12.28 09:35 Sunday

レッズがブレデイ獲得 アスレチックスからノンテンダーFAの外野手

 27日(日本時間28日)、レッズが外野手の補強に動いた。元アスレチックスのJJ・ブレデイと1年140万ドル(約2億1000万円)の契約を結ぶことで合意。すでに身体検査を済ませ、球団からの正式発表も行われている。

 28歳の左打者であるブレデイは、外野の3ポジションすべてをこなすことができる選手だ。

 レッズは昨オフにフリーエージェント(FA)の外野手オースティン・ヘイズを獲得したときと同じように、ブレデイにもバウンスバック(復調)を期待している。ヘイズは今季、3度負傷者リスト入りして期待に応えられなかったため、レッズはブレデイにより良い結果を求めるだろう。

 ブレデイは今季アスレチックスで98試合に出場し、打率.212、14本塁打、39打点、OPS.698と低調なパフォーマンスに終わった。シーズン中には2度の3A降格を経験。2024年はキャリアハイの成績を残し、159試合で打率.243、20本塁打、60打点、OPS.761をマークしたが、今季は大幅に成績を落とした。

 守備面でも低調なパフォーマンスに終始し、OAA(Outs Above Average:平均よりどれだけ多くアウトを奪ったかを表す守備指標)は外野3ポジションすべてでマイナスの数値だった。特にセンターでは-5と低迷。攻守とも精彩を欠いた結果、アスレチックスは11月18日(同19日)にブレデイをDFAとしてロースターの40人枠から外し、11月21日(同22日)にはノンテンダーFAに。ブレデイはキャリア初のFAとなった。

 バンダービルト大学から2019年ドラフト全体4位指名でマーリンズに入団したブレデイは、2022年にメジャーデビューした時点では、MLBパイプラインが選定する有望株ランキング全体トップ100にランクインしていた。デビューイヤーは238打席で打率.167、OPS.586と結果を残せず、同年オフに同じく「元ドラ1」の左腕A・J・パクとのトレードでアスレチックスへ移籍。2023年も打率.195、OPS.666と低迷したが、2024年は大きな進歩を遂げ、チーム最多の43二塁打を放つなど、大半の中堅手よりも優れた打撃成績を残した。

 今季は成績を落としたが、選球眼を含め、ポジティブな要素もいくつかあった。デビューから4年連続で四球率10%以上を記録し、今季のチェイス率(ストライクゾーン外のボールに手を出す確率)24.9%はメジャー平均より良かった。守備範囲の広さは平凡だったが、強肩の持ち主であり、肩の強さを表す指標は外野手の上位19%に位置している。

 レッズは今オフ、エリー・デラクルーズをサポートできるような強打者の獲得を目指している。FA市場の目玉の1人だった長距離砲カイル・シュワーバーの争奪戦に加わったものの、ナ・リーグ本塁打王を地元球団に連れてくることはできなかった。

 シュワーバー獲得は実現しなかったが、ブルペンの補強は着実に進んでおり、クローザーのエミリオ・パガンと2年2000万ドル(約30億円)で再契約を結んだほか、左腕ケイレブ・ファーガソンを1年450万ドル(約6億7500万円)、右腕キーガン・トンプソンを1年130万ドル(約1億9500万円)で獲得。ただし、トンプソンはブレデイ獲得に伴ってDFAが発表されている。

 レッズの来季のペイロール(年俸総額)は今季開幕時の1億1200万ドル(約168億円)から大きく変わらない見込み。よって、さらなる打線強化のための予算が残っているかは不透明だ。

2025.12.28 08:53 Sunday

カブス・ホートンが2026年のサイ・ヤング賞を狙うための3つの課題

 カブスのケイド・ホートンは後半戦の歴史的な活躍により、ナショナル・リーグの新人王投票で2位にランクインした。この勢いをメジャー2年目に持ち込むことができれば、さらなる好成績も期待できるだろう。

 もしホートンが課題を克服し、好調を維持すれば、来季はナ・リーグのサイ・ヤング賞争いに加わることも不可能ではないかもしれない。もちろん、これは高いハードルであり、ポール・スキーンズ(パイレーツ)、クリストファー・サンチェス(フィリーズ)、山本由伸(ドジャース)ら好投手が揃っている以上、競争は熾烈なものになる。しかし、ホートンは後半戦の12先発で防御率1.03をマークしており、少なくともサイ・ヤング賞を狙えるチャンスはあると言える。

 ここではホートンが2026年のサイ・ヤング賞を狙うために克服しなければならない3つの課題について見ていく。

【1】フォーシームでより多くの空振りを奪う

 一流の投手はどんな球種でも空振りを奪うことができる。ホートンはデビューイヤーの今季、ほとんどの持ち球で好成績を残したが、最も使用頻度が高い球種で空振りを奪うのに苦労した。

 ホートンは今季、フォーシームが全投球の半分以上を占めていたが、フォーシームの空振り率は14.7%にとどまった。これは今季フォーシームを500球以上投げた152人の中で138位だった。フォーシームの被打率.258、被長打率.355は決して悪い数字ではないが、スタットキャストの指標はホートンが運に恵まれていたことを示唆している。打球の質から算出される期待被打率は.286、期待被長打率は.481と実際の成績よりもかなり高かった。

 では、ホートンはどうすればフォーシームを最大限に活かせるのだろうか。水平方向(横方向)の変化量を増やすのが効果的かもしれない。ホートンのフォーシームは利き腕方向への変化量が0.1インチ(約2.5ミリ)しかなく、かなり少ない部類に入る。平均95.7マイル(約154キロ)とすでに球速は十分に出ており、変化量を増やすことで大きな効果を得られるはずだ。

 ホートンにとって、奪う三振の数を増やすことは非常に重要だ。今季は118イニングで97三振にとどまっており、サイ・ヤング賞の有力候補となるためには三振率を上げていく必要がある。短縮シーズンの2020年を除くと、200三振未満でサイ・ヤング賞を受賞したのは、ナ・リーグでは2006年のブランドン・ウェブ(178三振)が最後である。

【2】低い打球を打たせる

「引っ張り方向の非ゴロ打球」はカブスの主力3人(カイル・タッカー、ピート・クロウ=アームストロング、鈴木誠也)をはじめ、多くの打者にとって今季の成功の大きな要因となっていた。したがって、ゴロの打球を増やしたり、引っ張り方向の打球を減らしたりすることは、ホートンが取り組んでいくべき課題となる。

 ホートンが今季記録した「引っ張り方向の非ゴロ打球」の割合18.3%は決して悪い数字ではないが、メジャー平均(16.7%)より少しだけ高かった。これは引っ張り方向の打球が特に多かったわけでもなく、非ゴロ打球(=フライ、ライナー、ポップフライではない打球)が特に多かったわけでもなく、それぞれの割合が少しずつ平均を上回った結果だった。1つだけ指摘するとすれば、メジャーではフライとライナーの割合がほぼ同じになるが、ホートンはフライ(29.0%)のほうがライナー(20.7%)よりもかなり多かった。

「引っ張り方向の非ゴロ打球」の割合が低いことは、投手が成功するための必須条件ではない。たとえば、今季のサイ・ヤング賞受賞者であるスキーンズは17.7%でホートンと大差なく、メジャー平均より高かった。しかし、ホートンには明確な改善の余地がある。主要な5球種すべての平均打球角度が8°以上となっており、特にスイーパーは24°と突出して高かった(15°を超えたのはスイーパーだけ)。もしホートンが危険なフライ打球を減らし、弱いゴロを誘発する方法を見つけ出すことができれば、より効率的にアウトを重ねていくことができるはずだ。

【3】変化球のクオリティを磨き続ける

 フォーシームやシンカー(被打率.400、被長打率.733)がよく打たれていた一方、ホートンはチェンジアップ、スイーパー、カーブで大きな成功を収めた。これらの変化球の質をさらに高めることができれば、2026年にサイ・ヤング賞争いに加わる可能性はグッと高まるだろう。

 ホートンは今季、右打者を打率.184(206打数38安打)に封じたが、これは右打者に対してスイーパーが大きな武器となっていたからだ。今季2番目に使用頻度が高かったスイーパーは、被打率.171、被長打率.343の好成績をマーク。空振り率も37.6%と高かったが、ときどき痛打を浴びた。今季の被本塁打10本のうち5本はスイーパーを打たれたものであり、球種別では最も多かった。

 左打者にはチェンジアップが有効だった。メジャーでも屈指の球種であり、ホートンの最大の武器でもある。チェンジアップの被打率はわずか.115(52打数6安打)で、許した長打は二塁打2本だけ。空振り率は驚異の47.8%を記録し、今季チェンジアップを200球以上投げた投手の中で3番目に高かった。

 カーブも左打者に有効で、被打率.205、被長打率.273を記録。ただし、空振り率は24.7%にとどまっており、スイーパーとチェンジアップには及ばない。もしホートンがカーブでより多くの空振りを奪えるようになり、スイーパーによる被本塁打を減らし、優秀なチェンジアップを維持できれば、不安の残る速球(フォーシームとシンカー)を補完する完璧な武器となるだろう。

2025.12.27 12:11 Saturday

ドジャース・ライアン トミー・ジョン手術からの完全復活を目指す

 リバー・ライアンのメジャー1年目は鮮烈なデビューとなったものの、ケガの影響により短期間で終了した。トミー・ジョン手術のリハビリに費やした1年を経て、27歳の有望株右腕は2026年のドジャースで活躍するチャンスを得ようとしている。

 ライアンが2024年にメジャーデビューした当時、ドジャースは先発投手陣の負傷者続出に悩まされていた。それは数年間で何度も繰り返されていた状況だった。ライアンは4度の先発登板という限られた出場機会の中で、20回1/3を投げてわずか4失点(自責点3・防御率1.33)と好投した。

 MLBパイプラインによるドジャースの有望株ランキングで9位にランクインしているライアンは、2024年8月に手術を受けたあと、2025年シーズンの大部分でチームに帯同せず、マイナーでリハビリ登板を行うこともなかった。しかし、1年間のリハビリを経て、いい状態で今季を終えており、「失われた時間」が今後に向けた大きなモチベーションとなる可能性も秘めている。

 ライアンとギャビン・ストーン(2024年10月に右肩を手術)は2度のポストシーズン出場を逃しただけでなく、ワールドシリーズ制覇も2度逃したことになる。この2人の右腕はリハビリを終え、ともに通常通りのオフシーズンを過ごしており、来春のスプリングトレーニングには間に合う予定だ。

 デーブ・ロバーツ監督は、ウィンターミーティングの際に「リバー(の復活)にワクワクしている。ギャビン(の復活)にもワクワクしている。我々が(ポストシーズンで)困難を乗り越えて喜び合っているのを見て、それに参加することができなかったのは、2026年により大きなインパクトを残すためのモチベーションとなるだろう。彼らの活躍に期待しているよ」と話していた。

 ドジャースの先発陣は非常に層が厚いため、ライアンとストーンがメジャー復帰を果たし、ローテーションに定着するための道のりは複雑だ。しかし、ここ数年で最も充実した先発陣となっており、これは決して悪いことではない。

 今季のドジャースは山本由伸、ブレイク・スネル、タイラー・グラスナウ、大谷翔平、クレイトン・カーショウ、エメット・シーアンの6人がローテーションを形成した状態でレギュラーシーズンを終えた。この強力なローテーションのうち、引退したカーショウ以外の5人は来季も戦力となる。また、一時的にリリーフに回っていた佐々木朗希も来季は先発に復帰する予定だ。

 つまり、ライアンとストーンを含めて8人の先発投手がいることになり、5人ローテーションなら3人、6人ローテーションなら2人が先発の枠を外れる。もちろん、ロースターの40人枠内には、この8人のほかにも必要に応じて先発できる投手がいることは言うまでもない。

 しかし、ドジャースがここ数年で痛感したように、長いシーズンを戦い抜くためには5~6人の先発投手だけでは足りない。開幕ローテーションに残れなかった投手にもシーズン中のどこかで必ずチームに貢献するチャンスが与えられる。

 先発陣の人員余剰に対処するもう1つの方法はトレードの駒として活用することだ。メジャーレベルの先発投手は価値が高い。よって、ドジャースは余った先発投手を活用してロースターのアップグレードを図ることも可能だ。

 ブランドン・ゴームスGMは、ウィンターミーティングの際に「投手陣の層が厚いのは一時的なものだとわかっている。リスクとリターンが見合っている取引があるからといって、必ずしもトレードに応じるわけではない。どんなことにも長所と短所がつきものだ」と語り、余剰人員の先発投手をトレードで放出することに慎重な姿勢を示した。

 ライアンは魅力的なポテンシャルを秘めている一方、実績に乏しく、トミー・ジョン手術明けという不安要素も抱えているため、トレード市場でどのような評価を受けるか興味深い。トレードが成立する可能性がある一方、ドジャースはライアンをトレードせず、近い将来の先発ローテーションの重要な一角として活躍することを期待するかもしれない。

 先発投手陣の人員整理は、ドジャースが今オフ中に検討しなければならない決断の1つだ。ドジャースは「今」の勝利を継続しつつ、「未来」でも勝ち続けるための方法を模索している。強力なローテーションに加え、ライアンのような選手が控えていることは、ドジャースが今後長きにわたって勝ち続けるための準備が整っていることの証とも言えるだろう。

 ロバーツ監督は「すでに実績を残している選手もいれば、これから活躍する選手もいる。繰り返しになるが、これは我々が今年だけでなく、今後に向けてどれほど万全の準備を整えているかを示していると思う」と語り、黄金期の継続への自信を示した。

2025.12.27 10:48 Saturday

グレイとコントレラスを放出したカージナルス 次のトレード候補は?

 3年連続でポストシーズン進出を逃したカージナルスは、長きにわたってフロントオフィスのトップを務めたジョン・モゼラック編成本部長が今季限りで退任。新しく就任したハイム・ブルーム編成本部長のもと、本格的なチーム再建に突入している。

 オフシーズンに入り、まずエース右腕のソニー・グレイをレッドソックスへ放出。その後、名捕手ヤディアー・モリーナの後継者として2023年シーズンから5年契約で加入し、今季から一塁手にコンバートされたウィルソン・コントレラスを契約があと2年残っている状態でまたもレッドソックスへ放出した。ブルーム編成本部長にとって、レッドソックスは2020~23年にチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)を務めた古巣。自身が獲得した有望株も多く、よく知る球団と2件のトレードを成立させることでチーム再建への第一歩を踏み出した。

 カージナルスは今後、主力選手のさらなる放出が予想されている。トレード候補として名前が挙がっているのは、オールスター二塁手のブレンダン・ドノバン、日本でもお馴染みのラーズ・ヌートバー、スター三塁手のノーラン・アレナド、セットアッパー左腕のジョジョ・ロメロといった選手たちだ。

 ジ・アスレチックの報道によると、カージナルスはドノバンのトレードについて、レッドソックスと交渉を行っているという。28歳のドノバンはメジャー4年目の今季、118試合に出場して打率.287、10本塁打、50打点、出塁率.353、OPS.775を記録。レッドソックス以外にも複数のチームから関心を寄せられているが、グレイ、コントレラスに続き、またもカージナルスの主力選手がレッドソックスへ移籍することになるかもしれない。

 ヌートバーにはドジャースやメッツ、ロメロにはヤンキースやオリオールズが興味を示していることが報じられている。また、昨オフにアストロズへのトレードを拒否したアレナドは今オフもトレードの噂が絶えず、チームが本格的な再建に突入する中、トレード拒否権を破棄することに前向きとみられる。

 カージナルスはアレナド放出に成功すれば、ノーラン・ゴーマンやトーマス・サジェシーといった若手に出場機会を与えることが可能になる。また、2024年ドラフト1巡目(全体7位)指名の有望株JJ・ウェザーホルトのメジャー昇格も迫っており、年俸の一部を負担してでもアレナド放出を実現したいはずだ。

 ブルーム編成本部長の「カージナルス再建計画」はまだ始まったばかりだ。誰を放出し、どのように再建を進めていくのか、今後の動向が注目される。

2025.12.27 09:54 Saturday

アロンソら複数の主力選手が抜けたメッツ 今後の補強プランは?

 ジェフ・マクニールをアスレチックスへ放出したトレードは、メッツのデービッド・スターンズ編成本部長にとって、チームの行方を左右する重要な転換点となったようだ。今オフ、メッツは主力選手が次々に退団。その穴をどのようにカバーするかが、2026年シーズンの成功を大きく左右する重要な鍵となるだろう。

 オフシーズンの残りでメッツが戦力アップするための方法はまだたくさんある。ここでは、いくつかの特定の分野について見ていこう。

打線の補強は派手なものではないかもしれない

 メッツがカイル・タッカーやコディ・ベリンジャーと契約することを期待している人もいるはずだ。その願いは叶うかもしれない。しかし、それは彼らの価格が予想以上に下落した場合に限られるだろう。メッツは外野手の補強が急務であり、開幕までに獲得するつもりだ。球団2位の有望株であるカーソン・ベンジの実力が未知数のため、保険として実績のある外野手を獲得しておくのが望ましい。ただし、メッツはベンジの出場機会をブロックしたくないと考えている。よって、よほどのことがない限り、長期契約で外野手を迎え入れることはしないだろう。

 そして今、メッツの関係者は外野手との長期契約が必須だとは考えていない。ピート・アロンソとの再契約を見送るという難しい決断を下したばかりのメッツは、30代中盤から後半まで続くような長期契約を結ぶことに対して積極的ではない。スターンズ編成本部長は必ずしも長期契約について否定的に考えているわけではないものの、長期契約に値するフリーエージェント(FA)選手が残っていないことなども含め、メッツが今オフ、大型補強に動かない理由はいくつもある。

 昨オフ、メッツはフアン・ソトと15年契約を結んだ。これは将来の殿堂入り選手が26歳という異例の若さでFA市場に出てきたからこそ実現した契約だ。しかし、今オフはソトに匹敵する選手がいない。そのため、FA市場のトップ選手が短期契約に応じない限り、メッツが大物選手を獲得することはないだろう。複数の有望株がメジャーでの出場機会をうかがっており、メッツは攻撃力が多少落ちた状態で2026年シーズンを迎えることになっても構わないと考えている。

 もしメッツがタッカーやベリンジャーを獲得しなかったとしても、その代わりに獲得できる外野手はまだ市場に残っている。ハリソン・ベイダーを呼び戻すことも1つの選択肢となるだろう。もちろん、トレードによる外野手補強に動く可能性もある。

ローテーションは依然として懸念事項

 オフシーズン開始以来、先発投手陣の補強がメッツにとって最優先事項であり、それは今も変わっていない。ポストシーズンでチームにインパクトを与えてくれるような一流の先発投手を獲得できるのが理想だ。しかし、外野手のケースと同様に、メッツは将来性のない長期契約には消極的だ。また、トレードで一流の先発投手を獲得するためには極めて大きな対価が必要であり、メッツは慎重な姿勢を崩していない。

 メッツにとって朗報なのは、ディラン・シースがブルージェイズと7年2億1000万ドル(約315億円)の大型契約を結んだあと、それに連動してFA市場の先発投手の価格が急騰するという現象が発生しなかったことだ。フランバー・バルデス、レンジャー・スアレス、ザック・ギャレンらがまだ市場に残っており、メッツが希望する水準まで価格が下落する可能性も残されている。また、今季は成功しなかったものの、メッツの関係者は市場に残る選手の中から「掘り出し物」を見つけ出すことに自信を持っている。

 メッツが求めているのは、ローテーションに安定感をもたらすことができる投手、つまりイニングを稼ぐことができる投手だ。千賀滉大やショーン・マナイアにその役割を期待するのは難しく、それ以外の先発投手には若手が多いため、多くのイニングを投げてもらうことを計算することはできないからだ。

新たな野手のコアが形成されつつある

 メッツはロースターの大幅な入れ替えをオフシーズン当初から予定していたわけではない。放出が難しいと思われていた選手もいたからだ。アロンソが退団する可能性は常にあったが、ブランドン・ニモは大型契約を抱えていたため、トレード相手が見つかる保証はなかった。マクニールも同様で、成績が下落している中、トレードが成立しない可能性もあった。

 しかし、最終的にメッツはニモとマクニールの放出に成功した。アロンソも含め、3人の主力選手がチームを去り、新たな野手のコアが形成されつつある。もちろん、その中にはソトとフランシスコ・リンドーアが含まれている。また、彼らに続く存在は、2026年以降の戦いの中で台頭してくるはずだ。

 ベンジは2026年シーズン中のメジャー昇格が確実視されており、期待通りの活躍を見せれば、長期にわたってメッツを牽引する存在となるだろう。ブレット・ベイティはレギュラーとしての出場機会を与えられる予定であり、マーク・ビエントス、ロニー・マウリシオ、ルイスアンヘル・アクーニャといった若手もいる。さらに重要なのは、ベンジ以外にもジェット・ウィリアムス、A・J・ユーイング、ニック・モラビトといった有望株が次々にメジャーへ昇格する見込みであることだ。彼ら全員が次代のコアになるわけではないだろうが、こうした若手や有望株の中からソト、リンドーアとともに今後のメッツを牽引する存在が現れることが期待されている。

2025.12.27 09:16 Saturday

資金力に乏しい球団が若手と高額な延長契約を結ぶ理由

 アメリカではクリスマス休暇真っ只中の25日(日本時間26日)、アスレチックスが外野手タイラー・ソダーストロムと契約延長に合意したとの報道が出た。契約額は7年8600万ドル(約133億3000万円)で、8年目の球団オプション(球団に契約延長権)が行使されれば最大で1億3100万ドル(約203億1000万円)となる大型契約だ。

 アスレチックスはベストセラーとなった「マネー・ボール」でも知られるように、決して資金が潤沢な球団ではない。2025年のチーム総年俸も30球団の中で26位。ソダーストロムとの契約は球団史上最高額で、30球団の中で未だに1億ドル以上を保証する契約を結んだことがない2球団の内の一つだ(もう1球団はホワイトソックス)。大谷翔平やフアン・ソトが7億ドル(約1093億円)を超える契約を結ぶなど、選手の年俸が右肩上がりのMLBでは時代に取り残されている球団とも言える。

 しかし、アスレチックスは球界の中でも最も固かったその財布の紐を徐々に緩めている。昨オフは先発投手ルイス・セベリーノと3年6700万ドル(約109億円)の当時の球団史上最高額契約を結び、指名打者ブレント・ルーカーとは5年6000万ドル(約93億円)、外野手ローレンス・バトラーとは7年6550万ドル(約102億円)で契約を延長。

 これは、アスレチックスが2028年に控えるラスベガス移転を見据えた動きと考えられている。2025年から2027年まではサクラメントの仮本拠地でプレーすることになるが、その間に成長著しい若手野手を長期契約で固め、優勝を争えるチームとして新天地へと乗り込む計画だ。

 ただ、こうしたFA前の選手との延長契約は、特殊な事情を抱えるアスレチックスだけが行っていることではない。今や多くの球団がFA前に選手との契約延長を目指している。

 2023年以降、選手が年俸調停権を獲得する前に結ばれた延長契約は実に27例を数える。

主な調停期間前の延長契約(2023年以降)

◯ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)、11年2億8777万ドル(約449億円) ◯フリオ・ロドリゲス(マリナーズ)、12年2億930万ドル(約327億円) ◯ジャクソン・メリル(パドレス)、9年1億3500万ドル(約210億円) ◯ローマン・アンソニー(レッドソックス)、8年1億3000万ドル(約203億円) ◯コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)、8年1億1100万ドル(約173億円) ◯アンドレス・ヒメネス(当時ガーディアンズ)、7年1億650万ドル(約166億円) ◯タイラー・ソダーストロム(アスレチックス)、7年8600万ドル(約133億円) ◯ジャクソン・チョーリオ(ブルワーズ)、8年8200万ドル(約128億円)

 同期間に結ばれた大型の延長契約を契約総額順に並べた。ここで注目すべきは、高額な延長契約を結んだ球団が必ずしも資金力潤沢な球団ではないということだ。ロイヤルズ、ガーディアンズ、アスレチックス、ブルワーズはMLBの総年俸ランキングの下位常連で、マリナーズとダイヤモンドバックスも決してビッグマーケット(いわゆる金満球団)に数えられるチームではない。

 同期間に起きた27例の延長契約のうち、その期間にぜいたく税を超過したことのある球団による契約は9例に過ぎない。残りの18例は資金力が潤沢でない球団が結んだ契約であり、14例はその期間に総年俸が球界下位10位に入ったことがある球団によるものだ。

 なぜ資金力が潤沢ではない球団が、若手選手との調停期間前に決して安くはない延長契約を結ぼうと躍起なのだろうか。

 そもそも、現行のMLBのルールでは球団側はデビューから6年間まで、選手を安価で保有できる。基本的に、選手はデビューからサービスタイム(26人のアクティブロースターまたは負傷者リストに172日間登録されることで1シーズン分にカウントされる)が3年分に達するまで、100万ドル(約1億5600万円)に満たない最低保証年俸で雇用される。そしてようやくサービスタイムが3年分に達すると、今度は実績に応じて年俸が上がる調停期間が始まる。調停権を得ることで年俸は上昇するとはいえ、その昇給幅は抑制されたものだ。2年連続でサイ・ヤング賞に輝いたタリック・スクーバル(タイガース)も、調停1年目の2024年は265万ドル(約4億円)、サイ・ヤング賞受賞後の今季も1015万ドル(約15億円)しか年俸が伸びていない。スクーバルが来季終了後にFAになれば、調停期間中の年俸を合計した額を1年で得られるような契約を結ぶだろう。

 つまり、球団は黙っていても優秀な選手を6年にわたって安価に保有できる。上記のような調停期間前の延長契約は、わざわざ安価で雇える期間を割高で買い取る形式の契約だ。

 また、ウィットJr.やフリオのように明らかな成功を収めている契約がある一方で、若手との契約はハイリスクだ。選手が思うように成長しない、あるいはケガのリスクもあって、調停期間前の1、2年間の実績だけで延長契約を結ぶのはリスクが伴う。

 例えば、ナショナルズは、2023年から当時23歳の捕手キーバート・ルイーズと8年5000万ドル(約78億円)の契約を結んだが、この契約は失敗に終わった。ルイーズは契約延長後、331試合に出場してOPS.656、また捕手守備も成長の兆しが見られず、総合指標fWARでは3シーズン合計で-1.8を記録している。また、ガーディアンズは救援右腕トレバー・ステファンと4年1000万ドル(約15億円)で契約延長したが、ステファンは契約1年目に71登板で防御率4.09と成績を落とし、それ以降はケガもあって1登板もしていない。

 実績に乏しく、リスキーな若手選手に対し、予算に限りのある球団があえて大金を保証する理由は、「ハイリスク」な調停期間前の延長契約に球団が賭けるだけの「ハイリターン」があるためだ。そのリターンとは、本来であれば選手がFAとなる期間を安く買い取れることだ。

 その格好の例と言えるのが、2018年のナ・リーグ新人王を争ったロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)とフアン・ソト(当時ナショナルズ)の対比だろう。共に20歳以下で鮮烈なデビューを飾り、若くして多くの個人タイトルを獲得した2人だが、その年俸の差は歴然だ。

 アクーニャJr.は、2018年にソトを差し置いて新人王を獲得し、2年目の2019年4月に8年1億ドル(約156億円)の契約を結んだ。本来であれば2024年オフにフリーエージェント(FA)となる予定だったが、FAの期間を2年買い取られ、さらに2027-28年も1700万ドル(約26億円)の格安の球団オプションが控えている。本来であればFAとなっていた2025年からの契約は、行使確実な球団オプションも含めれば、実質4年6800万ドル(約106億円)に過ぎない。

 一方のソトはナショナルズとの契約延長交渉が頓挫し、2024年終了後にFAとなった。FA市場に出たソトは、15年7億6500万ドル(約1195億円)の史上最高額契約を締結。契約初年度の2025年だけで、アクーニャJr.の4年分に匹敵する6227万5000ドル(約97億円)の年俸を得た。実績は遜色ない2人だが、稼ぎの面では今のところ明暗が分かれている。

 ここに資金力が潤沢ではない球団でも、スター候補の若手に対してリスクを冒してでも、大型契約をオファーする理由がある。

 ソトの例から明らかなように、一度FA市場に出てしまえば、メッツのような資金力で上回る球団たちとのオークションに参加せざるを得ない。資金力が潤沢ではない球団にとっては、そのオークションは到底勝ち目がない。また、仮に全てを投げ売ってスター選手を競り落としても、その選手の年俸に圧迫されて他に補強の手が回らないようでは本末転倒だ。

 そして、調停期間前に結ぶ延長契約では、その選手の「美味しい部分」だけを得られる可能性も高い。FA市場ではスター選手は終身雇用に近い長期契約を要求する。30代後半まで及ぶ契約は、選手の加齢によるパフォーマンス低下の可能性が拭えず、不良債権化するリスクが大きい。しかし、調停期間前に延長契約を結べば、アクーニャJr.のように衰えのリスクが低く、選手として最も脂の乗った時期と言えるFA後、30歳前後の数年間を確保できる。

 もちろん、選手はただ球団にとってメリットがあるだけの契約に応じるわけではない。FAまでの6年間は長く、その間に値崩れする可能性は大いにある。選手として伸び悩むリスク、ケガに苦しむリスクを回避して大金を保証されることは、FA後の数年間を差し出すだけの価値がある。実際、アクーニャJr.は2021年と2024年に両膝の前十字靭帯(ACL)を断裂する大ケガに見舞われた。アクーニャJr.は2度とも復帰後に大活躍しており、結果的に契約は割安に映るが、大ケガに苦しむ中でも安定した契約が保証されていたのはプラスに働いたと言える。

 だからこそ、FA市場では金満球団に敵わないような球団にとっては、調停前はスター選手を球団に長く留めるラストチャンスと言える。選手が値崩れするリスクを負うことで、FAになってからでは手が届かない格の選手のFA後の数年間を手に入れられる。

 また、球団側が負う金銭的なリスクは、決して致命的なものではない。調停期間前に結ぶ延長契約のAAV(ぜいたく税計算に用いられる契約額の年平均)はせいぜい1000万ドル前後。もちろんその選手が値崩れを起こし、そのまま6年後にFAとなる(あるいは調停期間中にノンテンダーする)場合と比べれば割高なのは間違いない。しかし、FA市場で大型契約を結び、AAVが2000万から3000万ドルに上るスター選手と契約して失敗するより、はるかに金銭的リスクは小さい。

 よって、調停期間前の延長契約は、資金力が潤沢ではない球団にとっては大きなチャンスなのだ。球団は若手選手が値崩れするリスクを負い、大金を保証することでFA後の数年間という大きなリターンを得ることができる。その“賭け”に勝利したロイヤルズがウィットJr.を中心に、ダイヤモンドバックスがキャロルを中心に競争力のあるチームを維持しているのは、まさにその好例だ。今回、ソダーストロムと延長契約を結び、ルーカーやバトラーも固めたアスレチックスも、そうした球団に続けるだろうか。

2025.12.26 16:48 Friday

大谷翔平はいかに最強打者になったのか? 成長をデータで分析

 大谷翔平は球場でこれまで誰も見たことのないようなことをやっている。

 読者の皆さんにとっては当たり前のことかもしれないが、近年の大谷の活躍を振り返るのに悪い時期というのはない。この二刀流の天才は3年連続でMVPに輝き、そのうち2回はドジャース時代に受賞。また、大谷はロサンゼルス・ドジャースのワールドシリーズ連覇にも貢献した。  ドジャースに入団1年目、大谷は「50-50(50本塁打50盗塁)」の新記録を打ち立てた。そして今季、リーグ優勝を決めたポストシーズンの試合では、打っては3本塁打を放ち、投げては6回無失点、10三振の前人未到のパフォーマンスを見せた。ワールドシリーズでは1試合に4長打、そして9度の出塁を記録した。  大谷の成功の明白な理由は誰もが知っている。2024年以降、大谷はどの打者よりも多くのボールをバレルゾーン(理想的な打球速度と打球角度の組み合わせ)に打ち込み、同期間における盗塁数(79)はMLB4位であり、2025年にはかつてないほどの好調ぶりでマウンドに復帰した。しかし、もし可能なら、大谷に関してあまり報道されていないのは、過去の弱点をどのように克服し、真のスーパースターへと成長したかということだろう。  大谷の成功の秘訣のうち、特に打者としての活躍に注目して、過小評価されている点をいくつか見てみよう。

どの球種も大谷に対して安全ではない

 大谷はエンゼルスでプレーした最初の3シーズン、直球に強い打者だった。直球に対しては長打率.586を記録し、556打席で36本塁打を放った。しかし、変化球(ブレーキングボールやオフスピードボール)に対しては弱く、長打率.396、本塁打は11本にとどまった。大谷はエンゼルスで2021年にブレイクし、自身初のMVP受賞という快挙を成し遂げた。このシーズンを境に、あらゆる球種を力強く打ち分ける打者として成熟の兆しが見え始めた。直球、変化球、そして緩急を問わず、その強さはエンゼルスでの最終シーズンとなった2023年以降、さらに強烈なものとなっている。

大谷の球種別長打率(2021年以降)

2021年:対直球.630 / 直球以外.557 2022年:対直球.582 / 直球以外.460 2023年:対直球.783 / 直球以外.558 2024年:対直球.577 / 直球以外.714 2025年:対直球.648 / t

ジャイアンツ:ボー・ビシェット

 ジャイアンツは過去4シーズン、毎年79-81勝を挙げているが、勝率5割を超えた(プレーオフに出場した)シーズンはわずか1度しかない。三塁手マット・チャップマン、遊撃手ウィリー・アダメス、一塁手ラファエル・デバースを獲得したにもかかわらず、ジャイアンツはスター選手の獲得を切望している。タッカーやFA市場でトップの先発投手も選択肢に入るだろうが、ビシェットはジャイアンツの弱点である二塁を埋め、スター揃いの内野陣を完成させるだろう。ビシェットのコンタクト・ラインドライブ重視の打撃スタイルは、広大なオラクルパークでは本塁打が減るかもしれないが、多くの安打を生み出すだろう。

メッツ:コディ・ベリンジャー

 ベリンジャーがヤンキース、あるいはドジャースに復帰する可能性は十分に考えられる。しかし、ベリンジャーの持つ強みは、ピート・アロンソ、ジェフ・マクニール、ブランドン・ニモという3人の柱を失ったメッツのロースター(出場選手登録)にとって理想的な組み合わせと言えるだろう。ベリンジャーは、メッツが現在空席となっている3つのポジション、つまりセンター、レフト、そして一塁をカバーしてくれるだろう。また、打線に強打者が加わるだけでなく、2025年には明らかに平均以下の守備を強化するというメッツの目標達成にも貢献するだろう。ヤンキースからもう一人のキーマンを獲得することも、悪くないボーナスとなるだろう。

オリオールズ:レンジャー・スアレス

 オリオールズは今オフ、どの球団よりも積極補強を行っており、2025年の惨敗を過去のものにしようと躍起になている。ピート・アロンソとテイラー・ウォードを打線に加え、ライアン・ヘルスリーを守護神に迎え、大型トレードでシェーン・バズを獲得して、ウォードの対価として放出したグレイソン・ロドリゲスからのアップグレードを図った。しかし、先発ローテはケガに苦しんだ投手たちに依存しており、依然として手薄だ。スアレスはイニングを消化するタイプではなく(フルタイムの先発として4シーズンで平均147イニング)、そして典型的なエースのような投球をする投手でもない。しかし、スアレスは仕事をこなし、失点を抑えられる。ポストシーズンでも輝かしい実績を残した。

ヤンキース:今井達也

 2020年シーズン後に田中将大が退団してから、ヤンキースは日本人投手がプレーしていないが、今そのブランクにピリオドを打つ良い機会だ。ヤンキースは先発投手の補強が切実に必要というわけではないかもしれないが、肘の手術から復帰した3人の投手(カルロス・ロドン、ゲリット・コール、クラーク・シュミット)に頼っているのも事実。さらにコールとシュミットはトミー・ジョン手術からのリハビリ中だ。キャム・シュリトラーとウィル・ウォーレンは2025年には共に新人で経験が浅く、ルイス・ギルは防御率は堅調だったものの、11回の先発登板で不安定なパフォーマンスだった。NPBから移籍してくる選手にはリスクがないわけではないが、NPBでコンスタントに素晴らしい成績を残している27歳の今井は、マックス・フリードの次の2番手として、ローテーション崩壊を防ぐ保険となる。

カブス:フランバー・バルデス

 カブスがタッカーの引き止めや穴埋めをしないのならば、先発1・2番手級を補強する必要があるのは明らかだ。マシュー・ボイドは今季素晴らしい投球だったが、もうすぐ35歳になり、これまでもケガがちのキャリアを送ってきた。ケイド・ホートンはまだMLBで22先発の経験しかない。今永昇太は今季後半に痛恨の不振に陥った。ナ・リーグ中地区首位のブルワーズの牙城を崩すことができていないカブスにとって、この布陣は十分ではない。バルデスはFAの先発投手の中で、最も洗練された経歴(2022年から年間平均30先発、防御率3.21)を持ち、ダンズビー・スワンソンとニコ・ホーナーを筆頭に内野守備が強力なカブスと相性が良い、ゴロを打たせる投球スタイルが真骨頂だ。

マリナーズ:エウヘニオ・スアレス

 マリナーズに最初に在籍した2022-23年ではファンとクラブハウスに愛されたスアレスだが、今夏にトレードで復帰してからは目立たないパフォーマンスに終わった(53試合でOPS.682)。それでも、マリナーズにはスアレスを引き留める感情以上の理由がある。現在、マリナーズの正三塁手と予想されているのはベン・ウィリアムソン(1年目の今季はOPS.604)であり、トッププロスペクトのコルト・エマーソンがシーズン途中から定位置争いに加わると見られている。マリナーズは左腕キラーのロブ・レフスナイダーと1年契約を結んだばかりだが、それでもスアレスを指名打者に回す余裕がある(マリナーズは来季の三塁手の成績予測がMLB22位、指名打者で同15位)。スアレスにはまだ強烈な打力が残されており、マリナーズの優勝の野望に貢献できるだろう。

パイレーツ:岡本和真

 パイレーツはここ1週間、ブランドン・ラウとのトレードを成立させ、FAのライアン・オハーンとの契約に合意するなど、攻撃面の弱点を補うのに忙しくしてきた。だが、パイレーツがさらに多額の出費をいとわない限り、2025年にMLBで5番目に少ない失点数ながら最も得点数が低かったチームがそこで止まる理由はない。もしパイレーツがポール・スキーンズ率いる投手陣にチームを10月まで導く最高のチャンスを与えたいのであれば、2023年には41本塁打を放つなど、NPBで安定した打撃力を発揮した29歳の岡本を獲得するのは全く理にかなっている。岡本がもし打線の層を厚くしながら三塁を守ることができれば、ジャレッド・トリオロを便利屋として起用し続けられるだろう。また、オハーンとスペンサー・ホーウィッツの左打者コンビが担う一塁・指名打者の保険にもなる。

ロッキーズ:ルイス・アライズ

 誰もが目にしたい光景だろう。クアーズフィールドは、単打を打つには断然最高の球場だ(二塁打でもほぼ最高だ)。そして、アライズは単打の達人だ。81試合を通して、その実力がどのように発揮されるかを見るのは、きっと面白いだろう。2025年、ロッキーズはエンゼルスに次ぐどのチームよりも三振を喫し、バットでボールを捉えられる選手を必要としている。そして、アライズは誰よりもその能力に優れている。コロラドの新しいフロントは、次世代の強力なロッキーズを築くことに注力する必要があるが(アライズはおそらくその時にはチームにいないでしょう)、アライズを短期契約で獲得し、うまくいけば将来有望株と交換するチャンスを与えても、それほど問題にはならないだろう。

ブレーブス:ザック・ギャレン

 ブレーブスの先発ローテは健康面の問題から2025年に崩壊し、優勝候補だったチームが89勝から76勝に転落する大きな要因となった。ブレーブスは未だに強力なチームだが、先発ローテの面々は健康状態に問題を抱えていたり、MLBでの実績が限られていたり、不安定だ。2019年途中にMLBに定着し、高い安定感を発揮してきたギャレンは、魅力的な候補だ。ギャレンは今季、防御率が4.83に急上昇し、懸念材料を残したものの、終盤は比較的好調だった。近年、投手育成で成果を残しているブレーブスへの移籍は、双方にとってプラスに働くかもしれない。

フィリーズ:JT・リアルミュート

 3月に35歳になり、衰えの兆候が顕著な捕手との契約にフィリーズが慎重な理由はいくつかある。しかし、リアルミュートをフィラデルフィアで8年目のシーズンに復帰させるには、さらに明確な理由がある。このチームは優勝のチャンスを活かすため、明らかに焦りを感じている。そして、リアルミュートがいない現状のフィリーズ捕手陣はリーグ最下位レベルと見込まれている。FA市場にはリアルミュート以上の選択肢はなく、トレードによる解決策は獲得が困難で、才能の面でもかなりの費用がかかるだろう。球界、そしてFA市場にも確実なことは何もないが、フィラデルフィアがリアルミュートを引き留めるのは時間の問題だろう。

パドレス:クリス・バシット

 マイケル・キングを復帰させた後も、パドレスは2026年シーズンを乗り切るためのイニングを組み立てるだけでなく、プレーオフを争う方法を見つけ出さなければならない。シースがブルージェイズに流出し、昨夏にスティーブン・コレクとライアン・バーガートがロイヤルズにトレードされ、ダルビッシュ有も全休が決まっているため、2025年の先発した投手の約半分がいなくなってしまった。ジョー・マスグローブはトミー・ジョン手術から復帰に向けて準備を進めているが、高額のフリーエージェント獲得による解決策は考えにくいだろう。AJ・プレラーが大型トレードを成立させる可能性も否定できないが、バシットとの契約は代替案として非常に理にかなっている。 36歳の右腕は現時点では高額な契約を要求することはないだろうが、4年連続で170イニングの記録を達成し、 2018年以降は毎年ERA+でリーグ平均かそれ以上の成績を残している。バシットとの契約は良い保険になりそうだ。

レイズ:ルーカス・ジオリト

 ジオリトは2021年に3年連続となるサイ・ヤング賞レースでの投票を得てから、波乱の4シーズンを送ってきた。右肘の手術のため2024年シーズンを全休したが、今季はレッドソックスでやや復活を遂げた。しかし、スタットキャストのデータによると防御率3.41はxERA(打球の質も加味して算出される期待防御率)5.00と、水面下で懸念される多くの数字を覆すものだった。とはいえ、レイズでキャリアを再生させたベテラン投手はジオリトが初めてではないだろうし、レイズはバズをトレードに出したことで先発ローテーションの補強が必要になる。頼みの綱のシェーン・マクラナハンも長く続いたケガの離脱期間からの復帰を目指す段階にある。レイズが今夏優勝争いに加われなくても、復活したジオリトはトレードデッドラインで注目される物件になるだろう。

その他

ガーディアンズ:ハリソン・ベイダー

 ガーディアンズは常に外野手不足に喘いでいる。さらに今季のガーディアンズは歴史的水準で右打者がおらず、右打ちのベイダーは理想的な補強だ。

カージナルス:ザック・エフリン

 再建に舵を切ったカージナルスだが、人手不足かつ若手が多い先発ローテに指南役・保険となり得るベテランは必要だ。

アスレチックス:タイラー・マーリー

 マーリーは健康維持に苦労しているが、健康ならば戦力になる。アスレチックスが強力打線を誇る一方、先発ローテには疑問が残る。

タイガース:ジャスティン・バーランダー

 キャリアの終盤における選手とチームの再会にわれわれは弱いが、バーランダーはまだ実力を維持している。タイガースの先発ローテにとって良い補強となるだろう。

2025.12.26 13:52 Friday

14人の有力FA選手にフィットする球団 岡本&今井の行き先は

 クリスマスを迎えたこの日、ドジャースがワールドシリーズ第7戦でブルージェイズを破ってからほぼ2ヵ月が経った。そして、投手と捕手が2月にスプリングトレーニングを開始するまでも残り2ヵ月で、オフシーズンはちょうど折り返しに差し掛かっている。

 多くのチームが既に大型補強を行っているが、ストーブリーグ閉幕までにまだ多くの動きが起こるだろう。MLB.comのマーク・フェインサンドが選んだオフシーズンのフリーエージェント(FA)トップ30のうち、約半数の14人が未だ契約していない。

ブルージェイズ:カイル・タッカー

 ブルージェイズは、2025年の優勝にあと一歩のところまで迫った後、このオフシーズンにその目標達成に向けて全力を尽くしていることを隠そうとはしていない。ブルージェイズは迅速にディラン・シースとコディ・ポンセを先発ローテーションに、タイラー・ロジャースをブルペン陣に加えた。しかし、FAでボー・ビシェットを失い、外野陣を強化することはまだできていない。ブルージェイズは、ビシェットが二塁手への転向に前向きであることを考えれば、ビシェットを単純に復帰させるという選択肢もあるだろう。しかし、ブラディミール・ゲレーロJr.とコンビを組むためにタッカーのような左打者を獲得することは、さらに大きなインパクトを与える可能性がある。タッカーの稀有なスキルの組み合わせは、ブルージェイズの優勝への希望を後押しするものであり、彼の加入は、ブルージェイズがエリート選手を引きつけ(そして獲得し)ることができるフランチャイズとしての地位を間違いなく確立するだろう。

レッドソックス:アレックス・ブレグマン

 レッドソックスのクレイグ・ブレスロー編成部長は、月曜日に一塁手ウィルソン・コントレラスを獲得した後も、レッドソックスが打者の補強を模索していると明かした。それはほぼ確実に内野手を意味し、それはビシェットのような別のFA選手の獲得、あるいはケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)やブレンダン・ドノバン(カージナルス)のような選手のトレード獲得だろう。しかし、今季クラブハウスのリーダーとしての地位を確立し、すでに適任であることが分かっている選手をなぜ選ばないのか?ブレグマンの全体的な成績は好調で、レッドソックスは5月下旬に右大腿四頭筋を負傷するまで打率.299、出塁率.385、長打率.553を記録した際にブレグマンの最高の状態を見ることができた。ブレグマンをホットコーナーに留めることで、ボストンはマルセロ・マイヤーを二塁に留め、センターラインの守備も強化できる。

ジャイアンツ:ボー・ビシェット

 ジャイアンツは過去4シーズン、毎年79-81勝を挙げているが、勝率5割を超えた(プレーオフに出場した)シーズンはわずか1度しかない。三塁手マット・チャップマン、遊撃手ウィリー・アダメス、一塁手ラファエル・デバースを獲得したにもかかわらず、ジャイアンツはスター選手の獲得を切望している。タッカーやFA市場でトップの先発投手も選択肢に入るだろうが、ビシェットはジャイアンツの弱点である二塁を埋め、スター揃いの内野陣を完成させるだろう。ビシェットのコンタクト・ラインドライブ重視の打撃スタイルは、広大なオラクルパークでは本塁打が減るかもしれないが、多くの安打を生み出すだろう。

メッツ:コディ・ベリンジャー

 ベリンジャーがヤンキース、あるいはドジャースに復帰する可能性は十分に考えられる。しかし、ベリンジャーの持つ強みは、ピート・アロンソ、ジェフ・マクニール、ブランドン・ニモという3人の柱を失ったメッツのロースター(出場選手登録)にとって理想的な組み合わせと言えるだろう。ベリンジャーは、メッツが現在空席となっている3つのポジション、つまりセンター、レフト、そして一塁をカバーしてくれるだろう。また、打線に強打者が加わるだけでなく、2025年には明らかに平均以下の守備を強化するというメッツの目標達成にも貢献するだろう。ヤンキースからもう一人のキーマンを獲得することも、悪くないボーナスとなるだろう。

オリオールズ:レンジャー・スアレス

 オリオールズは今オフ、どの球団よりも積極補強を行っており、2025年の惨敗を過去のものにしようと躍起になている。ピート・アロンソとテイラー・ウォードを打線に加え、ライアン・ヘルスリーを守護神に迎え、大型トレードでシェーン・バズを獲得して、ウォードの対価として放出したグレイソン・ロドリゲスからのアップグレードを図った。しかし、先発ローテはケガに苦しんだ投手たちに依存しており、依然として手薄だ。スアレスはイニングを消化するタイプではなく(フルタイムの先発として4シーズンで平均147イニング)、そして典型的なエースのような投球をする投手でもない。しかし、スアレスは仕事をこなし、失点を抑えられる。ポストシーズンでも輝かしい実績を残した。

ヤンキース:今井達也

 2020年シーズン後に田中将大が退団してから、ヤンキースは日本人投手がプレーしていないが、今そのブランクにピリオドを打つ良い機会だ。ヤンキースは先発投手の補強が切実に必要というわけではないかもしれないが、肘の手術から復帰した3人の投手(カルロス・ロドン、ゲリット・コール、クラーク・シュミット)に頼っているのも事実。さらにコールとシュミットはトミー・ジョン手術からのリハビリ中だ。キャム・シュリトラーとウィル・ウォーレンは2025年には共に新人で経験が浅く、ルイス・ギルは防御率は堅調だったものの、11回の先発登板で不安定なパフォーマンスだった。NPBから移籍してくる選手にはリスクがないわけではないが、NPBでコンスタントに素晴らしい成績を残している27歳の今井は、マックス・フリードの次の2番手として、ローテーション崩壊を防ぐ保険となる。

カブス:フランバー・バルデス

 カブスがタッカーの引き止めや穴埋めをしないのならば、先発1・2番手級を補強する必要があるのは明らかだ。マシュー・ボイドは今季素晴らしい投球だったが、もうすぐ35歳になり、これまでもケガがちのキャリアを送ってきた。ケイド・ホートンはまだMLBで22先発の経験しかない。今永昇太は今季後半に痛恨の不振に陥った。ナ・リーグ中地区首位のブルワーズの牙城を崩すことができていないカブスにとって、この布陣は十分ではない。バルデスはFAの先発投手の中で、最も洗練された経歴(2022年から年間平均30先発、防御率3.21)を持ち、ダンズビー・スワンソンとニコ・ホーナーを筆頭に内野守備が強力なカブスと相性が良い、ゴロを打たせる投球スタイルが真骨頂だ。

マリナーズ:エウヘニオ・スアレス

 マリナーズに最初に在籍した2022-23年ではファンとクラブハウスに愛されたスアレスだが、今夏にトレードで復帰してからは目立たないパフォーマンスに終わった(53試合でOPS.682)。それでも、マリナーズにはスアレスを引き留める感情以上の理由がある。現在、マリナーズの正三塁手と予想されているのはベン・ウィリアムソン(1年目の今季はOPS.604)であり、トッププロスペクトのコルト・エマーソンがシーズン途中から定位置争いに加わると見られている。マリナーズは左腕キラーのロブ・レフスナイダーと1年契約を結んだばかりだが、それでもスアレスを指名打者に回す余裕がある(マリナーズは来季の三塁手の成績予測がMLB22位、指名打者で同15位)。スアレスにはまだ強烈な打力が残されており、マリナーズの優勝の野望に貢献できるだろう。

パイレーツ:岡本和真

 パイレーツはここ1週間、ブランドン・ラウとのトレードを成立させ、FAのライアン・オハーンとの契約に合意するなど、攻撃面の弱点を補うのに忙しくしてきた。だが、パイレーツがさらに多額の出費をいとわない限り、2025年にMLBで5番目に少ない失点数ながら最も得点数が低かったチームがそこで止まる理由はない。もしパイレーツがポール・スキーンズ率いる投手陣にチームを10月まで導く最高のチャンスを与えたいのであれば、2023年には41本塁打を放つなど、NPBで安定した打撃力を発揮した29歳の岡本を獲得するのは全く理にかなっている。岡本がもし打線の層を厚くしながら三塁を守ることができれば、ジャレッド・トリオロを便利屋として起用し続けられるだろう。また、オハーンとスペンサー・ホーウィッツの左打者コンビが担う一塁・指名打者の保険にもなる。

ロッキーズ:ルイス・アライズ

 誰もが目にしたい光景だろう。クアーズフィールドは、単打を打つには断然最高の球場だ(二塁打でもほぼ最高だ)。そして、アライズは単打の達人だ。81試合を通して、その実力がどのように発揮されるかを見るのは、きっと面白いだろう。2025年、ロッキーズはエンゼルスに次ぐどのチームよりも三振を喫し、バットでボールを捉えられる選手を必要としている。そして、アライズは誰よりもその能力に優れている。コロラドの新しいフロントは、次世代の強力なロッキーズを築くことに注力する必要があるが(アライズはおそらくその時にはチームにいないでしょう)、アライズを短期契約で獲得し、うまくいけば将来有望株と交換するチャンスを与えても、それほど問題にはならないだろう。

ブレーブス:ザック・ギャレン

 ブレーブスの先発ローテは健康面の問題から2025年に崩壊し、優勝候補だったチームが89勝から76勝に転落する大きな要因となった。ブレーブスは未だに強力なチームだが、先発ローテの面々は健康状態に問題を抱えていたり、MLBでの実績が限られていたり、不安定だ。2019年途中にMLBに定着し、高い安定感を発揮してきたギャレンは、魅力的な候補だ。ギャレンは今季、防御率が4.83に急上昇し、懸念材料を残したものの、終盤は比較的好調だった。近年、投手育成で成果を残しているブレーブスへの移籍は、双方にとってプラスに働くかもしれない。

フィリーズ:JT・リアルミュート

 3月に35歳になり、衰えの兆候が顕著な捕手との契約にフィリーズが慎重な理由はいくつかある。しかし、リアルミュートをフィラデルフィアで8年目のシーズンに復帰させるには、さらに明確な理由がある。このチームは優勝のチャンスを活かすため、明らかに焦りを感じている。そして、リアルミュートがいない現状のフィリーズ捕手陣はリーグ最下位レベルと見込まれている。FA市場にはリアルミュート以上の選択肢はなく、トレードによる解決策は獲得が困難で、才能の面でもかなりの費用がかかるだろう。球界、そしてFA市場にも確実なことは何もないが、フィラデルフィアがリアルミュートを引き留めるのは時間の問題だろう。

パドレス:クリス・バシット

 マイケル・キングを復帰させた後も、パドレスは2026年シーズンを乗り切るためのイニングを組み立てるだけでなく、プレーオフを争う方法を見つけ出さなければならない。シースがブルージェイズに流出し、昨夏にスティーブン・コレクとライアン・バーガートがロイヤルズにトレードされ、ダルビッシュ有も全休が決まっているため、2025年の先発した投手の約半分がいなくなってしまった。ジョー・マスグローブはトミー・ジョン手術から復帰に向けて準備を進めているが、高額のフリーエージェント獲得による解決策は考えにくいだろう。AJ・プレラーが大型トレードを成立させる可能性も否定できないが、バシットとの契約は代替案として非常に理にかなっている。 36歳の右腕は現時点では高額な契約を要求することはないだろうが、4年連続で170イニングの記録を達成し、 2018年以降は毎年ERA+でリーグ平均かそれ以上の成績を残している。バシットとの契約は良い保険になりそうだ。

レイズ:ルーカス・ジオリト

 ジオリトは2021年に3年連続となるサイ・ヤング賞レースでの投票を得てから、波乱の4シーズンを送ってきた。右肘の手術のため2024年シーズンを全休したが、今季はレッドソックスでやや復活を遂げた。しかし、スタットキャストのデータによると防御率3.41はxERA(打球の質も加味して算出される期待防御率)5.00と、水面下で懸念される多くの数字を覆すものだった。とはいえ、レイズでキャリアを再生させたベテラン投手はジオリトが初めてではないだろうし、レイズはバズをトレードに出したことで先発ローテーションの補強が必要になる。頼みの綱のシェーン・マクラナハンも長く続いたケガの離脱期間からの復帰を目指す段階にある。レイズが今夏優勝争いに加われなくても、復活したジオリトはトレードデッドラインで注目される物件になるだろう。

その他

ガーディアンズ:ハリソン・ベイダー

 ガーディアンズは常に外野手不足に喘いでいる。さらに今季のガーディアンズは歴史的水準で右打者がおらず、右打ちのベイダーは理想的な補強だ。

カージナルス:ザック・エフリン

 再建に舵を切ったカージナルスだが、人手不足かつ若手が多い先発ローテに指南役・保険となり得るベテランは必要だ。

アスレチックス:タイラー・マーリー

 マーリーは健康維持に苦労しているが、健康ならば戦力になる。アスレチックスが強力打線を誇る一方、先発ローテには疑問が残る。

タイガース:ジャスティン・バーランダー

 キャリアの終盤における選手とチームの再会にわれわれは弱いが、バーランダーはまだ実力を維持している。タイガースの先発ローテにとって良い補強となるだろう。

2025.12.26 12:53 Friday

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