【前半戦レビュー】ア・リーグ西部地区
2017.7.13 18:47 Thursday

2017年のレギュラーシーズンは前半戦が終了。試合が行われない今日、明日の2日間を利用して、全30球団の前半戦を簡単に振り返っていく。第3回はア・リーグ西部地区だ。
ヒューストン・アストロズ(60勝29敗:地区1位)
防御率3.93はリーグ3位。エースのダラス・カイケル(9勝0敗、防御率1.67)の故障者リスト入りにより台所事情はやや苦しくなったが、ブルペンから先発に回ったブラッド・ピーコック(7勝1敗、防御率2.63)の活躍もあり、大きな破綻には繋がらなかった。ランス・マカラーズJr.(7勝2敗、防御率3.05)、マイク・ファイアーズ(5勝4敗、防御率3.84)、チャーリー・モートン(6勝3敗、防御率3.82)の3人が防御率3点台を記録。デービッド・ポーリーノ(2勝0敗、防御率6.52)がPED使用で80試合出場停止となったのは残念だった。ブルペン陣はロングリリーフを何度もこなし、52.2イニングで74奪三振を記録したクリス・デベンスキー(35試合、防御率2.73)の奮闘が光った。ウィル・ハリス(34試合、防御率2.86)も安定していたが、クローザーのケン・ジャイルズ(34試合、防御率3.34)、ルーク・グレガーソン(37試合、防御率3.97)、トニー・シップ(31試合、防御率4.10)らは不安定な投球も目立った。
打線は文句なし。527得点はリーグトップの数字であり、チームOPS.855という驚異の数字を叩き出した。ジョージ・スプリンガー(打率.310、27本塁打、OPS.993)を筆頭にカルロス・コレア(打率.325、20本塁打、OPS.979)、ホゼ・アルトゥーベ(打率.347、13本塁打、OPS.968)、マーウィン・ゴンザレス(打率.308、16本塁打、OPS.967)とOPS.960以上が4人。ジョシュ・レディック(打率.313、9本塁打、OPS.880)、エバン・ギャティス(打率.284、8本塁打、OPS.832)、ジェイク・マリズニック(打率.248、10本塁打、OPS.824)、ユリエスキー・グリエル(打率.297、11本塁打、OPS.813)ら中軸の脇を固める打者も軒並みOPS.800以上をマークした。心配なのは大ベテランのカルロス・ベルトラン(打率.227、11本塁打、OPS.690)。強力打線の中で一人取り残されているような印象を受けた。
打線には補強の必要がないだけに、トレード・デッドラインでは投手力のグレードアップを目指すことになりそう。ワールドシリーズ制覇に向けてカイケル、マカラーズJr.と三本柱を形成できるようなエース級のスターターとブルペンに安定感をもたらすリリーバーを少なくとも一枚ずつは補強したいところだ。
ロサンゼルス・エンゼルス(45勝47敗:地区2位)
先発・リリーフともに故障者が続出し、開幕前の構想は完全に崩壊。特に先発投手陣は人材を欠き、ブルペンからJ.C.ラミレス(8勝7敗、防御率4.46)を配置転換したり、マイナーからパーカー・ブライドウェル(3勝1敗、防御率3.24)を登用したりしてなんとかやりくりしていた。それでもチームが持ち堪えられたのはブルペン陣の頑張りのおかげ。キャム・ベドロージアン(16試合、防御率1.69)の故障離脱は痛かったが、バド・ノリス(37試合、防御率2.23)、ユスメイロ・ペティート(33試合、防御率2.84)、ブレイク・パーカー(42試合、防御率2.58)、デービッド・ヘルナンデス(32試合、防御率2.73)らロートル軍団が強力ブルペンを形成。崩壊した先発ローテーションを支えた功績は計り知れない。
打線はマイク・トラウト(打率.337、16本塁打、OPS1.203)の長期離脱が大きく影響し、リーグ13位の377得点にとどまった。合格点と言えるのはアンドレルトン・シモンズ(打率.290、9本塁打、OPS.779)とリーグ盗塁王(25盗塁)のキャメロン・メイビン(打率.245、6本塁打、OPS.729)くらい。アルバート・プーホルス(打率.241、13本塁打、OPS.675)は衰えを隠せず、コール・カルフーン(打率.242、12本塁打、OPS.697)やC.J.クロン(打率.213、2本塁打、OPS.568)も精彩を欠いた。新加入のルイス・バルブエナ(打率.185、6本塁打、OPS.585)も期待外れで、「お買い得候補」だったはずの補強は高い買い物になってしまった。
ポストシーズン進出を狙える位置にはいるものの、とにかく故障者がある程度復帰しないことには話にならない。トラウトの復帰は大きなプラスだが、それだけではポストシーズンには届かないだろう。特に先発ローテーションの立て直しは必要不可欠だ。
オークランド・アスレチックス(39勝50敗:地区5位)
左腕ショーン・マネイア(7勝5敗、防御率3.76)が先発ローテーションの軸へと成長を遂げ、ソニー・グレイ(4勝4敗、防御率4.00)も本来のピッチングを取り戻して前半戦を終えた。開幕から好投を続けていたアンドリュー・トリッグス(5勝6敗、防御率4.27)は失速した挙句、長期離脱となってしまい、ジャーレル・コットン(5勝8敗、防御率5.17)やケンドール・グレイブマン(2勝2敗、防御率3.83)も故障者リスト入り。そんな中、ポール・ブラックバーン(1勝0敗、防御率0.66)の台頭は明るい材料だ。ブルペン陣は使える投手とそうでない投手の格差が大きすぎる。ライアン・マドソン(38試合、防御率2.17)、ショーン・ドゥーリトル(22試合、防御率3.54)らは比較的安定していたが、リアム・ヘンドリックス(38試合、防御率5.40)、ジョン・アックスフォード(20試合、防御率6.30)らはさっぱり。クローザーのサンティアゴ・カシーヤ(34試合、防御率3.82)も全幅の信頼を置ける投球ではなかった。
打線はリーグ5位の125本塁打を放ったが、リーグワーストの打率.236に終わり、382得点はリーグ12位どまり。主砲クリス・デービス(打率.244、24本塁打、OPS.847)が昨年同様に本塁打を量産し、ヨンダー・アロンゾ(打率.275、20本塁打、OPS.934)も30歳にしてブレイク。ジェッド・ラウリー(打率.279、9本塁打、OPS.805)やライオン・ヒーリー(打率.269、19本塁打、OPS.804)も好成績を残したが、打線の底上げを狙って獲得したはずのトレバー・プルーフ(打率.214、7本塁打、OPS.634)、ラジェイ・デービス(打率.210、2本塁打、OPS.579)、マット・ジョイス(打率.220、11本塁打、OPS.739)らが期待を裏切り、打線全体として機能したとは言えない状況だった。
すでに若手有望株を積極的に起用しており、今後はベテランを放出して本格的に若手主体のチーム構成に切り替えていくと見られる。ただし、放出候補のベテランが低調な成績に終わっており、大きな見返りは期待しないほうが良さそうだ。
シアトル・マリナーズ(43勝47敗:地区4位)
フェリックス・ヘルナンデス(4勝3敗、防御率4.44)、岩隈久志(0勝2敗、防御率4.35)、ジェームス・パクストン(7勝3敗、防御率3.21)、ドリュー・スマイリー(登板なし)と開幕前の構想で先発ローテーションに入っていた4投手が次々に戦線離脱。ヘルナンデスとパクストンはすでに戦列復帰を果たしているが、アリエル・ミランダ(7勝4敗、防御率4.15)らの踏ん張りがなければ、先発ローテーションが完全に崩壊してもおかしくない状況だった。ブルペン陣はクローザー2年目のエドウィン・ディアス(35試合、防御率3.53)が不安定。メジャー定着が期待されたダン・アルタビラ(29試合、防御率5.46)も期待外れに終わったが、ニック・ビンセント(37試合、防御率2.02)、ジェームズ・パゾス(35試合、防御率3.06)らの頑張りが光った。とはいえ、チーム防御率4.56はリーグ10位。ポストシーズン進出を目指すチームとしては褒められない数字である。
リーグ4位の431得点と打線はまずまず。新加入のジーン・セグーラ(打率.349、6本塁打、OPS.872)がリードオフマンとしてしっかり機能し、ロビンソン・カノー(打率.275、17本塁打、OPS.813)とネルソン・クルーズ(打率.292、17本塁打、OPS.892)で返す形が出来上がった。ミッチ・ハニガー(打率.273、7本塁打、OPS.847)やベン・ギャメル(打率.323、4本塁打、OPS.828)も期待以上の働き。マイク・ズニーノ(打率.223、12本塁打、OPS.744)も下位打線でポイントゲッターとなった。物足りないパフォーマンスに終わったカイル・シーガー(打率.248、10本塁打、OPS.723)が復調すれば、さらに強力な打線となるだろう。
打線はある程度形になっているだけに、先発ローテーションの立て直しがポストシーズン進出に向けての最優先課題。同時に、ブルペンにも安定感のあるリリーバーを加えたいところ。本気でポストシーズン進出を狙うかどうかはオールスター・ブレイク明けの2週間の戦いぶり次第だろう。
テキサス・レンジャーズ(43勝45敗:地区3位)
ダルビッシュ有(6勝8敗、防御率3.49)と左右のダブル・エースを形成するはずのコール・ハメルズ(4勝0敗、防御率3.51)が故障離脱。6月下旬に戻ってきたが、チームはエース左腕の穴を埋めるのに四苦八苦した。ダルビッシュ、マーティン・ペレス(4勝6敗、防御率4.60)、アンドリュー・キャッシュナー(4勝7敗、防御率3.54)とイニング数上位3人はまずまずの成績を残しながらも、打線との巡り合わせが悪く揃って黒星先行。期待を裏切る投手が多い中、遅咲きの新人オースティン・ビベンス・ダークス(3勝0敗、防御率4.04)の頑張りが光った。ブルペン陣はサム・ダイソン(17試合、防御率10.80)の大乱調が大誤算。結局1つもセーブを記録できず、ジャイアンツへ放出された。マット・ブッシュ(34試合、防御率3.55)はクローザー昇格後に調子を落とし、ジェレミー・ジェフレス(33試合、防御率5.34)やトニー・バーネット(25試合、防御率6.58)も不振。チーム防御率4.31はリーグ8位だが、数字以上に台所事情は苦しかった。
打線は打率.240こそリーグ14位だったが、リーグ2位の135本塁打を放ち、リーグ3位の444得点を叩き出した。ジョーイ・ギャロ(打率.194、21本塁打、OPS.821)を筆頭に、2桁本塁打がすでに8人。低打率に喘ぐ選手が多い中、エルビス・アンドルース(打率.300、11本塁打、OPS.816)の急成長は嬉しい誤算だった。秋信守(打率.250、12本塁打、OPS.773)もここまで大きな故障なくシーズンを過ごし、出遅れたエイドリアン・ベルトレイ(打率.283、7本塁打、OPS.912)も実力を発揮。攻守に精彩を欠くジョナサン・ルクロイ(打率.256、4本塁打、OPS.666)の状態が心配だ。
トレード・デッドラインでどのように立ち回るかは難しいところ。ポストシーズン進出を狙える位置にはいるものの、来季以降のチーム設計を考えていく必要もある。ポストシーズンを勝ち抜ける戦力が整っているようには見えず、来季以降を見据えて売り手に回るのが得策かもしれない。
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